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王の鈴(旧)  作者: うず
断章 廻る歯車
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05

シェイラがジークヴァルトの婚約者となって半年後、秋に入るとジークヴァルトは学術院の生徒となった。

前半の3年は王宮から通い、後半の3年は寮生活となる。貴族を中心とした学園生活だったが、王族であろうとも特別扱いはない。

7歳年下のシェイラにとって、入学はまだまだ先の話だ。

ジークヴァルトと会う機会は徐々に少なくなっていった。

最初の3年は、週に一度ほどになり、後半の3年は、会えない時には月に一度ほどとなった。寮生活の学生達には月に二度帰宅が許可されていたが、帰るたびに会うというわけにはいかない。

それでも週に二度、シェイラは王宮に通い続けていた。

行儀見習いという目的もあったし、その行儀見習いに隠れて、未来の公爵夫人としての教育も行われていたからである。

王宮にあがってもジークヴァルトと会える機会は少なかったが、会えば兄妹のような仲むつまじさで、カテリーナもテレーゼも微笑ましく見守っていた。

今、学園生活を送るジークヴァルトが卒業し、代わってシェイラが入学し、彼女もまた卒業をし。その頃には新公爵家を興しているジークヴァルトの元にシェイラが嫁ぐ。そんな将来を思い浮かべる。

幸福な未来を願う。

が、ただ、親として子供の幸せを願うだけならばこの婚約はなく、懸念していたものは、より厳しい現実として子供達の前に突きつけられることとなった。



ジークヴァルトとシェイラが婚約して3年後、ティトゥーリア国王ゲオルグ三世は崩御し、王太子だった第1王子が新国王ルドルフ二世として即位した。

未だ子のいないルドルフは自身の弟である第2王子ツェーレを王太弟と定めた。

彼らの弟である第3王子アーデルベルトは、父王の崩御の前に臣下としての姓と領地を賜り、ローゼンミュラー公爵家を興した。

そして、第4王子のジークヴァルトもまた、未だ成人していないため王子の地位のままだったが、成人すればアーデルベルトと同様、臣下に降りることが予定されていた。

国民からの人気も高かったゲオルグ三世の死は、多くの者に悲しまれ喪に服されることとなったが、既に60を超えていたこともあり、ルドルフ二世への継承はつつがなく進んで。

ルドルフには後継がいなかったものの、世継ぎとなったツェーレがようやく妃を迎えたこともあり、どちらかから次代が生まれるだろうとまださほど深刻なものとはなっていなかった。

が、2年後、思いもよらぬことが起こる。

頭脳明晰な人物で国王としての職務にも忠実であった新国王ルドルフ二世が、病により崩御したのである。

結局ルドルフ二世と彼の王妃、側妃との間に新たな子は生まれなかった。

また、王太弟となったツェーレも妃こそ迎えたものの、自身は兄王とその子供との間のつなぎと立場を律し、先に子が出来ぬようにと薬を使っていた。

ルドルフ二世の早すぎる死とツェーレの謙虚さが、皮肉にも王位継承に警笛を鳴らすことになる。

ツェーレがツェーレ一世として即位した時、母の身分から、次の王位継承者はジークヴァルトとなり、その次がローゼンミュラー公爵、アーデルベルトとなった。

まず回ってこないと思われていた第3王子と第4王子に王位が回ってくる可能性が出てきたのである。



王ルドルフ二世の死は始まりに過ぎなかった。

ルドルフからツェーレへの突然の王位継承の空白を狙い、セドナとは逆側、東の隣国であるライドゥルがティトゥーリアとの国境に突如として攻め込んできたのである。



戦いは一年に渡って続くことになる。

王位継承の過渡期を狙っての侵攻に防戦一方となったティトゥーリアは、国王ツェーレ一世自らが軍を率いることになったのだが、この戦いの際に受けた流れ矢により、彼は戦死した。

更なる王の死、そして戦時という緊迫した状況が、王位継承を更に捻じ曲げることになる。

王位継承権を持つジークヴァルトはこの時17歳、18歳で成人となるこの国で彼はまだ未成年であり、学生の身分である。そんな若者をこの戦時の王とすることはあまりに心もとない。

であれば次だと、ジークヴァルトを差し置いてローゼンミュラー公爵を王家に戻すと話が進む中、当の公爵は最後まで王位を固辞しようとした。

自身は摂政となりジークヴァルトを支えると主張したものの、そのような平時の理論が通用するはすもない。王位に就けばすぐさま軍を率いなければならない状況に、最後の駒として正妃の子であるジークヴァルトの命をここで危険に晒すわけには行かないとの意向も働き、貴族達はアーデルベルトを王位へと押し上げた。

そして、彼もまた、前王同様、戦場に向かうことになる。

結局、ライドゥル王の死が戦争を終結させた。

長引く戦いは両国を疲弊させていたが、先に根を上げたのはライドゥルの方だった。

そもそも先に侵攻したのはライドゥルの方だったが、ツェーレの死後、アーデルベルト率いるティトゥーリア軍の抵抗に苦戦し、さらなる兵力を国境へ投入した。

しかしながら侵攻の年は不作だった。そもそも不作による食料不足を補うために始められた戦争の長期化は、ライドゥルの国力を疲弊させ、ティトゥーリア優位へと形勢を変えていった。

そんな中、ライドゥルでは主戦派と停戦派に分かれ、停戦派である王弟をリーダーとするクーデターが発生したのである。

クーデターにより王は殺され、新たな王が立った。そしてライドゥルがティトゥーリアにシレジア地方を割譲するという、ライドゥル側には屈辱的な内容により停戦条約が締結されたのである。



ライドゥルとの戦いは終わった。

が、それは内なる戦いの始まりを意味していた。

終戦の年、ジークヴァルトは18となり成人を迎えた。

続いた王の死、そして戦時という緊急事態がアーデルベルトを王位に祭り上げたものの、取り戻した平和に貴族達は最初は密やかに、段々と声高に騒ぎ始めた。

国王アーデルベルト一世とその王妃マルグリッドには間には、エルンストという名の王子がいた。

このマルグリッドが子爵家出身であったことがさらに状況を厄介にした。

アーデルベルトの王位はやむを得ないにしても、その世嗣ぎについては元のジークヴァルトに戻すべきと言う者と、勝利により圧倒的に民衆の支持を得たアーデルベルトの王子であるエルンストこそが相応しいと言う者と、真っ二つに分かれたのである。

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