第74話 全てを焼き尽くせ
蒼真サイドは、近づかれないよう堀を作る。そしてその下にトンネルを堀り、スライム側からは攻撃できるようになっている。
対して敵サイドは武器を変更し、刀から片方薙刀、片方は弓矢(端で殴ると当たり判定)と閃光手榴弾を腰に巻いた。
そして、オリハルコン対策として固定ダメージを付与されている。敵と対等なら500回程度当てれば倒せる・・・対等ではないが。
目線を合わせると、秘匿されていない付与が出た。この場合敵の困惑の隙をつくためであろう。
「固定ダメージか……」
そう呟き蒼真は嗤う。
なぜなら固定ダメージは──────スライムにしかいかないのだから。
そんなことはオリハルコンがスライムだと知らない敵には知る由もなく、蒼真のスライムに与えるダメージを蒼真自身に当てていると錯覚する。ダメージの減り方から違和感を感じるまでに、蒼真はどれだけ敵を削れるか・・・
それが勝負を分ける1つであることは間違いない
「〈トンネルはどれくらい掘れた?〉」
〈ん~……今ちょうど上に敵がいるくらいかな。〉
「〈はやっ!?ん~じゃっ、敵を落とし穴に入れて、集中砲火で。〉」
〈ラジャッ〉
スライムたちは数と固さにものを言わせ、とんでもない速度で掘り進めていく。そして数十秒後、敵は落とし穴に落ちスライムの弾丸による集中砲火を食らう……一撃は小さくとも量が多い……どころかスライムは動くので半永久的に攻撃される。
今は2方向からの攻撃だが、今に全方位に変わるだろう。薙刀にしていたのが間違いだった。
更に蒼真はスライムにある命令をしていた。それは──────閃光手榴弾の破壊。スライムに視覚も聴覚もない。蒼真が聞きたいと感覚共有をしなければ目が眩む閃光も、鼓膜が破れる爆音も、全て無意味と化する。
だから今のうちに起爆させておきたかったのだ。
その狙いは半分うまくいき、半分失敗だった。その手榴弾は───爆発もしたのだ。
そのため、手榴弾が起爆したタイミングで攻撃したスライムは核を破壊された。
敵に大ダメージを与えた代償は仲間の永久の死───蒼真が命令を出しにくくなったのは当然の結果だ。
その隙を敵が見逃すはずもなく、スライムが飛んでこなくなった穴から一瞬のためのあと、大跳躍で抜ける。
一転して急にピンチが訪れる。
だが、蒼真は命令することを躊躇ってしまう。弾丸にすると、どうしても防御力は落ちるし、矢にしてしまうと重すぎて飛ばない。
なぜ、弾丸にすると防御力が落ちるのか・・・それは発射時、小さい弾を数珠繋ぎのように繋げ、放つため、核を覆うスライムが減ってしまうのだ。矢にすれば、1つ1つが多きいので、それほど問題にはならないのだが。
───蒼真は肉弾戦を挑むことにした。
○
視える!!
走る依奈は、ようやく戦いの場をスキルで視られるようになった。
とはいえ、視えるのが良いこととは限らない。なぜなら、スライムが殺られたところも視えるから。
(水無月・・・)
依奈は、ある決断する。
「由比!ごめんね。……本当に」
「やっとかな?もう、早くいってきな?」
「……由比……ありがとう!」
なにも言わずに分かってくれる友達……親友を置いていき、全力ダッシュ───!!!
○
「さぁてと。蒼真は劣勢かなぁ?」
神代がいるのは、すぐ近くの陰だ。
気配を出さずに監視をしている。なぜか……
(それはピンチの時に駆けつけた方がかっこよく見えるから!)
とことん恋を患う乙女である。
だが、スライムを殺られた時の蒼真の顔が悲しみ、哀しみ、怒り、絶望。負の感情に溢れている。そんな顔を見た時、神代は怒り・・・?いや違う、苛立ちを覚えた。それは水無月に対してではなく、自分に対してだ。
当たり前だ、ただのかっこよく登場したいがために蒼真の大切なテイムモンスターを永久に失わせてしまったのだ。
彼女は幽鬼のように彼の前に立つ。
新スキル獲得:〈憤怒の焔〉
なぜ、獲得したか。───システムが設定した怒りの大きさを越えたからである。
それは、蒼真の前にいる憤怒の具現化
それは、焔を纏った鬼が後ろに立つ圧倒的なプレッシャーを放つ化物
それは、自分に対し怒り狂う死神
それは、全てを焼き尽くす悪魔の炎。
「特殊スキル《憤怒の焔・悪魔之焔風》」




