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野営

 荒野に入ってしばらくすると、日が暮れてきた。日のあるうちに距離を稼いでおきたかったようだが、やはり魔物が連続して襲ってきたためそのたびに足止めを食らった。結果的に順調とはいえなかった。原因は魔物だけでなく、内輪の問題もあった。ハルトとアグヌスの二人だ。ハルトはゴルドやサーシとのパーティとはある程度うまく連携していたが、アグヌスはゴルドのパーティだけがサポートする形で何とかやっていた。


 そんなこんなで日暮れには野営を始めようということになった。どうやら隊長のガルベは人選を間違えたようだ。商人は本来見抜く力が必要だが、荒野での魔物の多発から安全を優先した結果こうなったようだ。力があっても呉越同舟では意味がないな。まったく。


 野営は複数の火を起こして商隊やパーティごとに食事をすることになった。揉め事を回避するためにこうしたらしい。複数の光源による狙われやすさも考慮したが、夜の魔物はあまり活発ではないらしい。夜行性の魔物は出ないと考えていいってことか。


 商隊の一員から支給品のパンと干し肉を渡された。事前に聞いていた通り硬いパンだった。釘でも打てるんじゃねえのか。そして干し肉もやはりというかしょっぱかった。料理なんてしたことないが、このときは調理器具があってよかったと思う。干し肉は刻んで熱湯に入れ、シチューにする。パンは串に刺して炙る。これだけでも十分料理として成り立つだろう。


「コロさん、シチュー出来ました」

「パン、あぶった」


 作業は二人に任せていた。パンを炙るくらいなら俺でもできるが、シャルがやってみたいというのでやらせてみた。とにかくこれで他のパーティより質の高い食事ができるだろう。


「オウダ殿、それは?」


 食事をしてしばらくすると、ゴルドが寄ってきた。それ、とはシチューを指しているのだろう。


「シチューだ。飯が不味いってのはあんたからの情報だろ。なら当然うまいものに作り替えるさ」

「そうか。いや、俺のパーティでは何度も調味料を使うなどできないからな。貧乏パーティは節約節約」


 確かに調味料は高かったとアリィに聞いている。塩などはまだ安いが、シチューを作るための調味料は高ランク依頼を何度も受けて大金を手にした奴しか買えないだろうからな。


「それは面倒なことだな。分けてはやらんぞ」

「あ、ああ。それは別にいいんだが。それで、本題だ。パーティのリーダーに招集が掛かった。オウダ殿も来てくれ」

「わかった。アリィ、シチューはすぐに朝食にできるようにしてくれ。シャル、食器の後片付けを頼む」

「はーい」

「んー」


 二人に後の作業を任せ、俺は商隊が張ったテントに向かう。そういえば今日は何もしていないな、飯の準備と片付けも含めて。


 テントの中では簡易的な机があり、その周りに各パーティリーダーと商隊の何人かがいた。最奥にはガルベがいる。


「全員そろったみたいだな。話は今夜の見張りについてだ」


 全員を見渡したガルベが口を開く。なるほど。確かに野営には見張りが必要だな。夜が危険ではないかと言ったら全くそうではない。夜行性ではないといっても動いている魔物はいるだろう。


「各リーダーを招集したのは見張りの順番などについて決めてもらいたいからだ。護衛として雇った以上こちらも状況の把握をしておきたい。チーム分けなどはあるか?」


 そういえば見張りについては事前に何も聞かされていない。また揉め事が起きないとも限らないし、早いうちに名乗り出ておくべきだろう。


「俺のパーティが最初にやろう」


 だから手を上げた。信頼の低い俺のパーティでは反感があるかもしれないが、そこはうまく丸め込もう。


「ちょっと。なんであんたが最初なのよ」

「サーシさん、落ち着いて。オウダさん、どうして一番最初なんだい?」


 案の定突っかかってきた奴がいたがハルトが抑え込んだ。その隙に反論する。


「俺のパーティは、いや、俺はあまり信頼されていないようだからな。最も襲撃されやすい深夜帯よりは早いうちに終わらせてやった方が安心だろ? それにうちのアリィはレベル80代だ。エイヒレ程度に後れは取らない」


 相手にとって最も合理的な回答を出してやった。アリィのレベルについては、すごいと思わせる程度に適当な数字を言った。よく覚えてねーし。ちなみにエイヒレというのは最初に倒していた魔物だ。おつまみか。


「あの子、そんなにレベル高いの!?」

「そうは見えなかったけれど」

「いや、オウダ殿のパーティだ。それぐらいのレベルであってもおかしくない」


 驚くサーシとハルトにゴルドが庇い立てする。その後はゴルドの話に乗っかりながら、一番最初という役割をもぎ取った。これで面倒は最初に片づけ、起こされることなく安眠できる。本当の目的はそれだったり。


 その後は各パーティのリーダーが順番を決めあった。それにしても静かな会議だと思ったのは、アグヌスが騒ぎ立てなかったからか。怒ったようにだんまりで、結局最後に見張りをすることになった。先に学習したのはアグヌスだったか。ハルトが命令しないようにだんまりを決め込んでいた。えらい。笑。


 その後は解散し、俺たちが見張りとしてしばらく起きていた。ハルトが見張りの交換に来るまで特に異常はなかった。異常があったのは、その後である。

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