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巨大イノシシ

 広大な山岳地帯に入ってからはや1時間。イノシシを探している間に大蛇やスライム、@#$%などと出会ったが本来の目的ではないので無視する。襲ってきた奴を最低限屠る程度だ。


 再び歩き始めて10分。今度はイノシシがいた。とはいっても討伐対象の巨大なイノシシではなく、その辺にいそうな普通のイノシシだった。ジビエならこいつでもいいんだが、そもそもは腕試しに来たんだったな。異世界に来る前は都会暮らしだったから、こういう野性味ある食事というのに少しあこがれていた。


 今さらながらに無駄な殺生はしない、などとのたまいそのイノシシを放置する。そういえばイノシシって群れで行動するんだっけか? 一匹見たらなんとやら、か? だが近くに他の動物の気配はない。ただのはぐれか。


 再び移動する。すると今度は、ビンゴ。足跡だ。大きさからして体長は3メートルくらいか。こいつで間違いないだろう。まばらに生えた木の間の足跡を追っていく。途中、木に何かでひっかいたような跡があった。これもおそらく巨大イノシシの痕跡だろう。縄張りか、ただの牙砥ぎか。とにかく近いことだけは確かだ。


 痕跡を見つけては追いかけを繰り返し、ようやく見つけた。木の生えていない岩場になっている場所。そこに巨大イノシシはいた。予想通りの体長、長い牙。間違いない。討伐対象だ。


 まずは先手必勝でスキルを使い、イノシシに特攻する。後ろから足めがけて素早く撲殺丸を叩き込む。プギャーという豚に近い鳴き声を上げる。奇襲に驚くイノシシにかまわず、左側から振り向こうとするイノシシの死角にまわりこむ。


「らァ!」


 再び死角から、今度は牙をめがけて攻撃する。さすがに金ランク対象だけあって、一撃では折れなかった。


 今度はイノシシからの反撃。巨体を生かして体重をかけた体当たりを仕掛ける。体が大きいため、全力で回避しなければ、足に当たっても致命傷となる。どう避けるか一瞬のうちに思案したのち、ギリギリのところで真上に飛びあがりイノシシの背に乗る。


 背中に不快感を覚えたイノシシは鼻から荒い息を吐き出して暴れまわる。しかし体の構造上、イノシシは背中への攻撃ができない。なんとしても振り落したいイノシシは、背中に乗る俺を押し潰すように倒れこんだ。さすがにまずい。倒れこむ方とは逆に飛び降り、回避する。すぐに戦闘態勢を取りイノシシを見る。


 イノシシは倒れこんだ勢いを殺さず一回転し、起き上がった。獣のくせに頭を使うな。ならこっちだって。


「”ファイアボール”」


 魔法を使う。動物が嫌いそうな火の魔法だ。速さを重視した拳大の大きさの火球を放つ。火を見て恐れたイノシシは避けようとしたが、その巨体があだとなり直撃した。初撃の時よりも大きな鳴き声で叫ぶ。やはり火は効く。立て続けに火属性の魔法を放ち、逃げ惑うだけになったイノシシを追撃し続ける。


 内臓が傷ついたのか、ついに断末魔を上げてイノシシが倒れこんだ。表面は黒焦げになっている。しまった。ジビエが! 焼き過ぎた。倒したはいいが食べられなかった。いや、本来の目的は腕試しだったはずだ。ジビエはまた今度にしよう。


 イノシシの牙を折り、討伐の証として持ち帰る。魔法も慣れてきた。腕はむしろ上がったな。それが確認できればまあ、今日の成果としては十分だろう。ジビエ、食べたかった。

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