出口へ
ゴーレムとの戦闘から半日ほど経過した。洞窟内なので実際の時間はわからないがそれぐらいは経過したように思う。あの後俺たちは1時間ほど休息をとり、再び歩き出した。幸い、一本道だったので迷うことはなかった。
「カップ麺食いたい」
なんとなくそうぼやいた。ここに来る前は昼を持ってきていたのだが、洞窟に入ってからはクマウサギの肉しか食べていない。そうしなければ餓死していた。
「なんですか、それ」
アリィが尋ねてくる。知らないのも当然か。
「お湯を注ぐだけでうまいもんが食える便利な食い物だ。ご当地麺とかあってうまいんだぞ」
「へー、それは便利そうですね」
「……便利」
さすがに娯楽も何もない洞窟では会話の種も尽きる。それ以来黙ったまま歩き続けた。黙々と歩き続けて3時間ほどが経過した。洞窟に入ってから1日は経ったんじゃないだろうか。そういえば寝てないな。そんなことを考えていると、ちょうどいい窪みを見つけた。
「しばらく休憩だ。さすがに体力が持たない。あそこで休め」
そう言って窪みの中に入る。
「コロさん、しばらく寝かせてもらいます……」
「ああ、見張りは任せろ」
「ふぁい……」
そういうやいなや、アリィは一瞬で眠りに落ちた。警戒も何もあったものではない。まあ、仕方がないか。
「シャルも寝ていいんだぞ」
「……いい。鬼人族は、ニンゲンよりも活動できる」
「そうか」
再びの沈黙。見張りをするといっても時々影がうごめくだけでこちらへ魔物が襲ってきたりはしない。しばらくは気を抜いても大丈夫だろう。ふーっと長い溜息を吐く。さすがに疲れたようだ。
「……大丈夫?」
珍しいことに、シャルが気を遣っている。
「ああ。問題ない」
そういえば、こいつとはまだ会って一日経っていないんだったな。しかも最初は敵対状態だった。それが今ではここまで打ち解けた。きっとこいつも、頼りたい相手が欲しかったんだろうな。
それからはゆったりとした時間が流れた。俺はいつでも起きられるよう浅い眠りにつき、アリィが起きるのを待った。そういえばどことなく風の流れを感じる。出口が近いのかもしれない。
まどろんでいると、はっとしたことを思い出す。ジャバウォックだ。あいつはここに来る前、いや森に来る前に放し飼いにしてやってたんだ。人は殺すなと命じてあるから問題はなさそうだが、どうなんだろうか。まあ、戻ってから考えればいいか。
しばらくしてからアリィが起きた。以外にも短く、5時間程度の睡眠だった。
「どうだ、よく眠れたか」
「……ええ、はい」
いかにも寝起きといった感じで大あくびをする。俺がいることに今さら気づきはっと口元を隠す。もう遅え。今度は気付けのためか顔を叩いた。乾いた音が響く。
「はい、もう目が覚めました。いつでも出発できます」
「そうか。シャルは?」
「……いける」
「わかった。出発だ」
そう言ってまた歩き始める。何匹目かのクマウサギを倒した時、ふと確実に風を感じた。
「風が吹いてる。出口が近い」
「本当ですか!」
喜びの表情を見せるアリィ。どことなくシャルもソワソワしている。長い間太陽のもとに出られなかったせいか緊張しているようだ。たしかに、引きこもりが外に出るときはソワソワしてしまうものだろうな。話の次元が違うか。
そしてついに、光石の光ではない、本物の明りが見えた。
「コロさん! 出口ですよ!」
「……コロ」
シャルが俺の学ランの袖をつかむ。俺はその手を取ってやり歩き出す。先に走り出したアリィはもう出口へと出ているようだ。俺たちもついに外へと出られた。
「やりました! でられましたよ!」
「……眩しい」
どうやら昼頃だったらしく、太陽がてっぺんで輝いていた。俺たちは、あの洞窟を出られたのだ。




