報酬と次の目的
夕方。依頼を終えた王田とアレーナは街に戻っていた。
組合に赴きスライムの核と引き換えに報酬をもらった。初めての報酬は銀貨3枚。スライムにしては割高だったのは、あの赤いスライムの功績が大きい。本来の1.5倍の価格に増えた。
「やりましたね、オウダ様! 報酬ですよ!」
「そうだな。初めてにしちゃ上出来じゃねぇか」
強さを数値化できるレベルという概念はやはり使える。元の世界では力量差も解らず突っ込んでくる輩が多かったが、この世界ではそういったことがない。もっとも、命がかかっているからだろうか。とにかく、自分の強さに見合った仕事ができる。
「それで、オウダ様。報酬の分配はどうします?」
「そうだな。元の報酬は2銀貨。そこにボーナスでプラス1銀貨だ。本来の取り分でいいだろう。アレーナが2銀貨だ」
「ええ! いいんですか!?」
「いいもなにもそれが妥当だろう」
事実、青スライムを倒したのはアレーナで、赤スライムを倒したのは王田だ。結果だけ見ればそうなる。
「でも、本当にいいんですか? 私の方が多くて……」
「いやなら全部俺に渡せ」
「嫌じゃないです嫌じゃないです! ありがとうございます!」
とりあえず納得はしてもらいこの配分で決まった。
「で、お前はいつになったら俺の学ラン返してくれんの?」
「あうぅ……。すみません、着替えは寝間着しかないんです……」
「なら買ってこい。足りなくなるかもしれないから俺の銀貨も渡しておく。余ったら返せ。俺は先に宿に戻る」
「わっ、わかりました。すぐ買ってきます」
そういってアレーナは店の立ち並ぶ方へ走っていった。ちなみに二人には身長差が割とあるので、学ランを羽織るだけでも問題はなかった。
宿に戻った王田は明日からの方針を考えた。今日手に入れたのは銀貨3枚。この調子だと、宿代はアレーナに工面してもらえるが、それ以外の物が買えない。食事は細々とやっていくだろうが、そういうのも王田の好みではない。どうせなら豪遊できるだけの金が欲しい。
しばらく考えたが、やがてある結論に達する。レベル上げだ。自分のではなくアレーナの。
組合の決まり事ではパーティを組んでいる冒険者の場合、基準となるのは最もレベルが高い冒険者と低い冒険者だ。パーティ内最低レベルの冒険者の2倍以上のレベルの冒険者がいれば、高いランクの依頼を受けられることになる。
王田とアレーナのパーティでいえば、アレーナは24レベルなので王田が48レベル以上であれば青ランクの依頼を受けられることになる。
だがここで、アレーナのレベルが25になれば2倍は50。つまり赤ランクの依頼を受けられることが可能になる。王田はアレーナが帰ってきたら、レベル上げについて話すつもりでいた。
しかし、アレーナの帰りは遅かった。夜。すでに夕飯の支度が出されている。王田が食堂兼エントランスで異世界料理を食べていると、ようやく帰ってきた。いったい何をやっていたのだか。
「オウダ様、遅くなりました」
「まったくだ。どうしてこんなに遅くなるんだ?」
「それが、その、服選びに夢中になってしまって……。店員さんとも話が弾んでしまい……。」
女性の服選びは長いというが、異世界でも共通だったようだ。
アレーナが夕飯を食べ終わるまで待ち、一緒に部屋へ向かう。作戦会議だ。
「私のレベル上げ、ですか?」
さっきまで考えていたことをアレーナに告げる。
「お前のレベルは24だったな。1レベルだけ上げろ。そうすれば効率が良くなる」
「……あ。そういうことですか」
どうやら王田の考えを理解したようだ。
「私のレベルが上がれば、高ランクの依頼が受けられるようになる、と……」
「そういうことだ。ところで、レベルってのはどうやって上げるんだ?」
「基本的には戦ったり修練を積んだりすると上がります。私のレベルも魔法の特訓によって上がったんですよ」
「なるほど」
ようは戦っていればいいということらしい。そこで王田は突然考えが思いついた。
「明日は別行動だ」
「え? 急にどうしたんですか?」
突然の発言に思わず聞き返すアレーナ。だが王田は流して話し続ける。
「明日は、たしか西にある岩石地帯にいってゴーレムかなんかを倒して来い。それでレベルを上げろ」
「ええぇ……。まあ、かまいませんがなぜそこで? 東の草原や森でもいいじゃないですか」
「考えがある。とにかく、明日に備えてもう寝ろ」
「ううぅん……」
あまり納得がいっていないようだったが、しぶしぶ部屋へ戻っていった。
このときの王田の顔は、作戦通り、といった満足げな顔だった。




