チームプレイ
決闘から2時間ほど経過した。
王田とアレーナは昼食を取り組合に向かう。パーティとして初の依頼を受けるためだ。
依頼はレベルによって受けられるものが決まっている。80以上で金、70以上で銀、60以上で銅、50以上で赤、40以上で青、30以上で黄、20以上で緑、それ以下は白だ。
通常の冒険者は初心者のパーティが多いので、慣れるまではレベル差がないように白ランクの幅は広い。アレーナは現在緑ランクまでを受けられるが、王田とパーティを組むことでもう少しランクの高い依頼を受けられる。
とはいっても、いきなり高ランク帯を受けるわけにもいかないので、アレーナの実力を知るためにも緑ランクの依頼を受けることにした。
受ける依頼は小規模なスライムの群れの討伐。スライムには2つの種類がいて、肉食の捕食系と草食系のスライムだ。今回は、貴重な薬草を主に食べてしまうスライムを討伐する。
「これが私の初戦闘になるわけですね……」
どこか緊張した面持ちでアレーナがつぶやく。
「まあ、あんだけの力があれば問題ないだろ。いざというときは俺が何とかする」
「あまりお手数をおかけしないようにしますね……」
組合で依頼を受注し、街の外へ1時間ほど歩く。道中はそれぞれの戦い方を言い合った。基本は王田とジャバウォックが前衛として、アレーナが後援として戦うことになる。
今回の場合はアレーナの対魔物戦を確認するため、王田は護衛に徹する。
やがて小規模な森に当たった。ここからは質の高い薬草が取れるらしいが、最近スライムの増加で収穫量が減っているらしい。そのためまずは、薬草の密集地を探す。
薬草は独特のにおいを発しているためすぐに見つかった。この分だと、そう時間もかからないうちにスライムが寄ってきそうだ。
茂みに身を潜めて待つ。その間に作戦会議をした。
「スライムっていうからには粘液体なんだろ。どうやって倒すんだ」
「スライムには体を維持するための核があります。その核を壊せば溶けて消滅します」
「なるほど、わかった。作戦だがまず、スライムが現れたら魔法で奇襲を掛けろ。敵が混乱している間に魔法で的確に核を狙え。俺が前衛をする限り一撃も攻撃させないから、確実に当てることだけを考えろ」
「は、はい!」
「来た」
ほどなくして、丸い粘体に2本の触手を伸ばしたスライムが薬草を求めてやってきた。その数は5匹ほど。透明な体の中心に核が透けて見える。
「よし、やれ」
「はい! ”バーニングローズ”!」
魔法の詠唱とともに群れの中心から炎が花びらのように広がった。奇襲を受け混乱するスライムに向け魔法を次々と放つ。
「”アイスランス”!」
氷の槍が次々と射出され、3体の核に命中した。
「やった!」
初めて討伐できたことに喜ぶアレーナ。だが王田の叱咤が飛んでくる。
「油断するな。敵を完全に倒してから喜べ」
「は、はい!」
攻撃してきた敵を見つけた残りのスライムは近づきながら触手を伸ばしてくる。それを王田は触手の途中からちぎるように撲殺丸を振り下ろす。
すかさずアレーナの魔法が飛んでくる。
残った2体も沈黙した。初の討伐任務にしては連携が良く、成功を喜ぶアレーナだが王田にジャバウォックからの思念が入る。ジャバウォックは後衛のさらに後ろで全体の警戒をしていた。
「アレーナ、後ろだ!」
「へ?」
突然アレーナの後ろから6本の触手が伸びてきた。
「きゃっ!」
急激な事態の変化に頭が追いついていないアレーナ。捕まった衝撃で杖を落としてしまう。
「い、いやぁ……。ねばねばぁあ……!」
触手には謎の粘液が付着していた。振りほどこうにも触手が絡みつき、なおかつ粘液で滑りつかむことすらできない。王田が触手の後方を見ると、通常のスライムの青ではなく赤いスライムを見つけた。
どうやら、最近のスライム増加にはあいつがかかわっていそうだな。今までこの森で存在が確認されていなかった赤いスライムが姿を現した。通常種もこいつに引き寄せられたのか。
そうやって推測しているとアレーナから助けを求める声が聞こえた。
「オウダ様ぁ、たすけてくださいぃ……」
見れば服が溶けている。体に害はないようだが、このまま放っておけば衣服がすべて溶かされるのも時間の問題だろう。
「まったく」
下着まで溶かされ始めたころ、ようやく王田は撲殺丸を担ぎ赤いスライムへ突撃した。すると本体から4本の触手が出てきて王田を刺し貫こうとした。
「遅い」
跳躍し、体を回転させ遠心力の力で触手をちぎっていく。本体ががら空きになったところを、容赦なく叩き潰す。最初は水にたたきつけたような、次に核に当たる弾力性のある風船のような手ごたえ。水風船を潰した時のような音とともに、赤スライムは溶けだしていった。
「ふぇえ~……」
ボスらしき相手を倒し切り、ようやく一息ついたところでアレーナを見た。服が下着が完全に溶かされる寸前というところまでなくなっており、実にあられもない格好だ。そんな彼女に王田は一言。
「俺の学ランは貸さんぞ。溶けたら直せないからな」
この世界では唯一無二の服だ。直せなくなる事態は避けたい。アレーナは学ランが何か知らないが、何も貸してくれないことだけはわかった。
「そんなぁ……」
「油断したお前が悪い」
こうして無事(?)にパーティ戦兼アレーナの初依頼は終了した。討伐証拠の核をすべて拾い上げていく。これも組合に提出だそうだ。こんなものを集めて何になるんだか。
結局アレーナは粘液が完全に乾いたので、王田が渋々学ランを貸してあげた。次からは戦闘装備も整えよう、そう決めた二人だった。




