第4話
そんなこんなで特にチート能力を授かったわけでもない俺は、可愛い幼馴染と遭遇することも、腐れ縁となりそうな親友を作ることもなく、ぼっちの寂しい日々を過ごしていったのだった。若干哀愁の漂う背中を見せながら・・・。
それはそれとして、毎日欠かさず魔術の訓練と魔力操作訓練をしていた成果のおかげだろう。初級魔法は一通り網羅して詠唱破棄で発動できるようにはなっている。魔力操作に関しては、体の全体強化や、一部強化なんて瞬きをするほど簡単に可能になり、少し意識をしていれば攻撃を受けるタイミングで攻撃された部位のみに魔力を集中させて身体強化で防御、なんてことまでできるくらい器用になってしまった。
正直、自分以外の魔術師はメルカさんくらいしか見たことがないが恐らくここまで魔力操作が器用なのはかなり珍しいんじゃないだろうか。
あまり調子に乗って鼻を伸ばしていると冒険者学校に入った時、自分が実は全然大したことない、なんていう悲しい現実を突きつけられそうで怖いが。
そして遂に10歳の誕生日、父上が最後の剣技の訓練として卒業試験を設けてくれたのだった。
この卒業試験をクリアすることができれば冒険者学校に入学する許可をくれるらしい。もちろんクリアと言っても元王国騎士団の団長である父を倒すことなんて20年早いので、父が俺の動きを見て冒険者として最低限やっていけそうだと思うかどうかというアバウトな判定をして、試験の合否を決定するというものらしい。テキトーだな。
「レント!いつでも大丈夫いいぞ!かかってこい!」
「行きます!」
こうして家族に見守られながら訓練をするのは少し恥ずかしいが、特に現役の王国騎士団員であるタルク兄さんから見たらお遊びのようなものだろう。だが今日の俺には秘策がある。まだ一度も実戦で使ったことがないが、多分大丈夫だろう。
「レントォー!怪我すんなよー!」
タルク兄さんがわっはっはと笑いながら応援してくれている。いや、応援なのか?よく分からないがタルク兄さんはこういうお祭りごとが大好きだからな。見てるだけでも楽しいんだろう。ペント兄さんは全く興味が無いようで、一応中庭に来てくれてはいるものの本を読んでいる。その横でメルカさんがニコニコしながらこちらに手を振って、
「レント君!上級魔術を使ってクロード様を倒しちゃえー!」
とかなんとか少々アホっぽいことを叫んでいる。そもそも上級魔術なんてまだ俺には使えないし、それから剣士相手に魔術なんて使ったら殺してしまうに決まっている。基本的に魔術師と剣士の戦いというものは、より戦いにならないのだ。初級魔術ならば無詠唱で使える魔術師は多く、普通に考えて生身の人間に初級炎魔術の"ファイアボール"でも当たろうものなら全身を火傷してお陀仏だ。当たり前である。
王宮近衛騎士団の団長ともなれば魔術の"核"と言われる弱点を適切に攻撃することで、魔術を無効化できなくもない。と聞いたことがあるが、父上は残念ながら元王国騎士団の部隊長レベルだ、そんなことなんてできるわけがない。
その為俺の使える魔術は身体強化のみ。かなり単純な魔法ではあるが、俺は魔力操作が大の得意だ。それに魔力量もかなり多い。踏み込みの際に体全体に強化をかけ、足腰と腕に多めに追加で強化をかけることによって一撃を重い斬撃にすることができる。そして1戦程度で尽きるような魔力量ではない為、ずっとそれを維持できるのである。
体全体に超強化をかける方が火力は出そうな気もするが、これが非常に魔力を使うのだ。いくら魔力が尽きた経験が今までないとはいえ、普段から魔力操作で燃費を良くしておかないといざ冒険者としてダンジョンに潜り、長期戦になった際に痛い目を見るのは自分だ。
とりあえずうだうだ考えていても仕方ないので、正面に剣を持って立っている父上をしっかりと見据えて剣を構える。まずは一合。
「やぁぁぁああ!!」
威勢のいい掛け声と共にまずは軽く身体強化をかけつつ父上に上段から切りつける。
「悪くない剣撃だが、隙だらけだ!」
上段切りを軽々と跳ね返され、続けざまに下段からの切り上げが迫ってくる。俺は足に多めの身体強化を振りながら一気に飛び退いてそれを避けた。下がりすぎなようにも見えるが俺は魔術師だ、剣技はそれなりに使える。だがそれ以前に魔術師なのだ。本当の闘いならこの間合い、そう、下がりすぎだと思われるくらいの間合いで戦い、そしてこの間合いを体に染み込ませなければならない。
「へいへいへい!レントがビビってる!下がりすぎじゃねーのか!」
そんなことは知る由もないやかましい煽りをしてくるタルク兄さんに若干イラっとしながらも、次は7割くらいの身体強化をしながら父上に迫る。父上は先ほどとの速度と大きく差異があることに若干目を見開いたようだが、すぐに剣を合わせてきた。
剣が交わる瞬間だけ最大出力で身体強化をし、重い一撃に変える。父上は熟練の剣技で軽々と、とまではいかないようだが俺の剣を防ぎ、切り返しをしてくる。
身体強化のおかげでほとんど肉体的な疲れがない俺と、歴戦の戦士である父上。これでは埒が明かないなと思っていたところ。
「レント、もういいだろう。合格だ」
「え?」
「魔術師でここまで剣が使えれば十分だろう。冒険者学校に入学することを認めよう!」
合格はもらったものの、俺はまだ"アレ"を試していない。せっかく今日の為に訓練してきたのに使えないとあっては自分の中でスッキリしないではないか。
「いえ、父上。もう少しだけお願いします」
俺が何かしようとしている雰囲気を掴んだのか、はたまた自分の息子が根性を見せたことに喜びを感じたのか定かではないが、父上はニヤリとして、
「・・・よし、じゃあもう少しだけ相手してやるか」
少し嬉しそうにそう言って、父上は剣を構えなおしてから俺に対峙する。
さあ、これからが身体強化の神髄をお披露目する時間だ。




