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第39景

『それで、ぶっちゃけどんくらい本気なんだよ?』

「何が?」

『店』


 そんな短い言葉で会話ができると思ってるのかこいつは。

 いやまあ言いたいことはわかるんだけどな。せめて『店をやるって話』くらいにしてくれないものだろうか、あるいは『お店やさんごっこに付き合う話』とか? それによって本気度合いが大分違うんだけど……まあいいか。


「1割くらいかな」

『少なっ!?』

「本気って言葉の意味がわからないからなぁ。一番高く見積もったところでそんなもんってところだ」

『なるほどなるほ……高く? 今高くって言ったか?』

「言ったけど……どうかしたか?」

『いや、え……ええぇ……?』


 何やら魔剣 サーシスは悩ましげに唸っている。別にそんな難しい話はしてないと思うんだけど。

 オレがここでこの店を手伝うのはあくまで暇つぶしの一環だ。そもそもこの街にとどまること自体が成り行きに近いわけで、逆にその成り行きに関心があるからとどまるのだと考えれば、本気を注ぐ場所がどこになるかなど言うまでもないことだろうと思う。

 確かに使い物になる店があってくれれば助かる。足がかりにはなる。だけど、しっかりしてオレにとって使いやすい店というものが、この街での需要を満たし儲けを出す店になる。店として本気でやっていけるものになるかどうかというのはまた別問題なわけで、そこまで気を使って手をまわす気があるかと言えば当然そんなものはまるっきりないわけである。だからまあ、一割。そんなもんだろう。


『結構楽しそうに見えたんだけどな』

「オレが? あの子が?」

『どっちも』

「少なくともオレは楽しんでるぞ。楽しくないことをする気はないしな」

『そういう問題か? はぐらかそうとしてるだろ』


 鋭いな。まさしくその通りだ。だって会話の内容がめんどくさくなりそうだしさ。オレはあくまで趣味の範囲でこの店を手伝ってる。仕事を絡めて思うところはいろいろあるけれど、その考えを進めるとここでお店を続けることとはまた違う方向に進むしな。

 いや、そういう意味も踏まえてお店をやる気が一割程度ってことはあるかもしれない。正直にそんなことを話す気はないけどな。


「まあ、へんに堅苦しい会話にならないように気は使ってるな。いいだろ?」

『俺は真面目な話がしたいんだけどな』

「オレは真面目な話はしたくない」

『俺がいなきゃ会話もできないくせに』

「オレがいなきゃどこにも行けないくせに」

『別の持ち主見つければ問題ないし』

「んで、しゃべれなくなって寂しさに怯えるんだろ」

『むぐっ』


 『魔剣』なんて偉そうに名乗ってる割には結構持ち主に依存してるところあるんだよな。こいつ。

 実はその時の持ち主によっては、全く言葉が通じないこともあるんだとか。例えばアンテなんかそのいい例だ。もともとこいつはアンテと一緒に見つけたのにな。アンテに渡しても全く喋らないというから、三日経ってから返してもらったら酷い鬱状態になってた。恐ろしいことに完全に相性が悪いわけじゃなかったから思考は制限されなかったらしい。

 もしどんなに声を出しても誰も答えてくれないまま三日経ったら……それも自分は喋っているつもりだし、自分以外の存在同士のやりとりはある状況だ。ただひたすら自分だけが無視される。

 絶対考えたくない状態だな。一生に一度だってそんな体験はしたくない。


「次の持ち主は小煩い上に半端に折れた剣の言葉を全面的に受け入れてくれる人間だといいね」

『そんな奴がいるわけないだろ』

「自分で言うのか……エルフとかなら結構いるんじゃない? お前の愚痴とか聞き流してくれて誠実に対応してくれる人」

『えー……エルフ?』


 ちなみに持ち主がいない時や、本当に相性が悪い時はものを考えることもできなくなるらしい。でも、再び持ち主が現れた時にどれくらいの時間が経過したかどうかはなんとなくわかるそうだ。記憶も劣化しないとか。便利なことで。


「エルフの何が不満なんだ?」

『そら、あいつら精霊と喋れるからな。俺のこと剣じゃなくて剣にひっついてる精霊だろって扱いするんだよ』

「それってなんかやなの?」

『お前、死体に宿った幽霊扱いされて嬉しいか?』


 言わんとすることはわかったけど、それはそいつの頭がおかしいだけなんじゃないだろうか?


「それはそいつの頭がおかしいだけだと思う」

『とにかく! あいつら感覚ちょっとおかしいんだよ』

「じゃあちなみにドワーフは?」

『……すげー勢い込んで俺を作った職人のことを聞いてくるな。あと時々分解されそうになる。俺ドワーフの魔法で作られたわけじゃないのに』

「そこに関しては疑わしく思ってるけどな。オレも」

『俺を作ったのはダークワン……っていうか魔王だから!』

「勇者がお前を使ってたって情報と矛盾しないか?」

『勇者が俺を魔王から奪ったの! なんども言っただろうが!』

「ああはいはい……っと、あの子が帰ってきたみたいだな」


 まあ、真面目な話からは随分と引き離せたから正直詳細はどうでもいいんだよな。それにこの会話もそろそろ終わりの時間がきたみたいだし。

 そう、女の子が帰ってきたのだ。その手にはたっぷり食べ物が積まれている……他にもよくわかんない木材とか繊維の塊とかなんかいろいろあるみたいだけどな。この際それは大事じゃない。物事には優先順位というものがあるのだ。


『おい! 話は終わってないぞ! この件に関してはまた夜続きをするからな!』

「はいはい……やあ、よく帰ってきたね。無事なようで何よりだよ」

「ただいまー」


 さて、晩御飯を頂くとしよう。

いつも読んでくださってありがとうございます。

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