第36景
まず、玄関の隣にある部屋との間の壁をぶちこわす。そしてその壁の部品の1つを閂にして、扉に差し込めるように設置する。うん。この街の安全性 、あるいはそれに対する関心は最低だ。多分食い逃げや万引き、泥棒をするやつだっていないし、されて困るわけでも無いだろう。それなりにいいものを揃えてるはずの、あのライゴの家にだって閂なんてものは無い。だけどお店の標準というものを作り上げようと思えば、これくらいはしないわけにはいかないはずだ。これで泥棒対策はバッチリである。
まあ、泥棒を見切って閉じ込めた上で、それをこの子がやっつけることができるのであれば、だが。
とまれ、次は会計台 だ。今まで玄関から中に入るのを食い止めるように設置してあった机を脇によけ、閂を押し込める位置に配置する。足元を隠すように布 を敷いてたらす。そして机に据え付けた箱の中に金庫を配置。あとは金を数えるために木皿を配置して、一応完成。
これで入り口だけならどっからどう見ても普通のお店やさんである。やったね。
「これでいいの」
「おう。これなら外に出しても通用するぞ」
とはいえそれは入り口の見た目だけのこと。まだまだ商品の用意、商品棚の配置など、やるべきことはいろいろある。まあ、最初にやったことが壁の取り壊しだしね。簡単に済むとは思ってなかったけど。
「まあ、商品並べるのは明日からだな……しかし本当に良かったのか?」
「なにが?」
「壁だよ。勝手に壊しちまったけど」
「いいの。おねえちゃん、ぜんぶまかせるっていってたもん」
お姉ちゃん相変わらずやる気無いんだね。うん。っていうか、家の壁を一部壊すって言ってるのに無反応って、そういう段階じゃ無いよな、もしかして体調悪くて寝てるんだったりして……いや、まさかね。だったらそういうだろうし、こっちに聞こえるほどの大声で喋れないでしょ。っていうかそもそも店を開かないだろうし。
「まあいいや、好きにしていいなら好きにしよう……でも今日はとりあえずここで終わろうか」
「そうなの?」
「いやだって、次は商品を用意したり並べたりするんだよ? そのための棚が無いじゃ無いか」
まあ、必ずしも棚である必要は無いんだけど、何かしらそれっぽいものは必要だ。たくさんの箱とか、袋とか。そんなものが一般家庭にあるはずが無い。商品だって、多分使ってないものがあるくらいで積極的に集めているわけじゃ無いだろう。
明日は食べ物をちょっと多めに取ってきてもらって、燻製でも一夜干しにするんでもなんでも、商品としての価値を持たせるようにする方法を考えなきゃ……相談しなきゃいけない。そんなわけで今日はもうここおしまいなのです。
さあ、そんなわけでそろそろ晩御飯食べたいんだよ。
「じゃあたべものとってくるー」
「オレも一緒に行こうか?」
「いや」
なんかきっぱり拒絶された。え、こっそり食べ物を取ってこられる場所を確認する作戦がバレたとでもいうのだろうか? まさか、まさかだろう?
「な、なんで?」
「だって、わたしがおだちんはらうんだもん」
「お、おう」
「それがしょうばいでしょ」
「そうだけど……」
なんだろう、この子思ったよりしっかり商売人しようとしてる。すごいな。これはちょっと将来が楽しみだ。
「いってきまーす」
そして今日の晩御飯が楽しみだ。
目利きに……はまあ、さすがに期待しないほうがいいかな? 年齢的に。
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