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第32景

「つまりね、客から商品の有無がわかる仕組みが必要なんだよ」

「ふむふむ」

「極端な話、商品をこう、客の手に取れるように置いて、それを持ってきたらお金と交換するみたいな」

「ほへー……おねえさんもそんなかんじのおみせやさんしてるの?」

「お兄さんな。オレは行商人だから、そういうんじゃ無いよ」


 いや、まあ品物を客の前に並べて買い取ってもらうわけだし、そうじゃ無いことも無いのか。無いのかな? いや、無いな。どちらかというと需要に応じて仕入れて供給する感じだし。

 っていうかなんだろう? 気がついたらお店屋さん講座になっていた。


「まああれだね、本気でお店を開く気なら、一度よその町に行ってそこでどんなお店だか見てみるべきだね」

「むりむり。このまちからでられないもん」

「そんなもん? いや、そんなもんだよな」


 うーん、やる気がある子がしてるお店がたくさんあると、それだけオレたちは過ごしやすくなるんだけどな。いや、そんなに贅沢は言わないからせめてこの店一軒だけでもちゃんと使い物になると良いんだけど。

 そっと少女の顔をうかがってみるけど、まああんまりやる気があるって顔じゃ無いよね。いや、やる気はともかく覇気というか、向上心? 楽しそうにはしてるんだけど、面白がってるというだけでそれをものにできそうな雰囲気は無いというかね。いいや、分析とかめんどくさいし。

 いやいや、ちょっと待てよ。


「ねえ、もしよかったらだけどさ、しばらくオレがこの店で働こうか?」

「……どういうこと? おねえさん」

「お兄さん、な。いいか? 一流の街にある一流の店ではな、奉公人 アルバイターというのがいるんだよ」

奉公人 アルバイター? はたらくひとってこと?」

「そう、駄賃をもらって働く人ってことさ」

「だちん?」

「つまり報酬だね。お金とものを交換したり、ものとものを交換するみたいに、仕事と交換するお金のことさ」

「ふうん?」


 いや、この概念無いとか、ほんと終わってるわよねこの都市。あのサヴァジーさんが見つけて使えるようにした都市なのにね。しかもライゴだってその弟子と言えないことは無いはずなのに……ってまあ要するにあれだよな。上が優秀すぎて下が腐るみたいな。あいつもとっとと見切りつければ良いのに。きっともっとでかい仕事があいつにはふさわしいと思うんだけどなぁ。ほんと。


「じゃあむりだね。うちにはおだちんないもん」

「そこは三食のご飯で手を打とうじゃ無いか」

「えー」

「なに、君は普段より多めに食べ物をもらってくる。オレはその分店で働く。それだけのことさ」


 だからさ、この都市を崩してみようかと、ふと思いついた。

 今までのようにライゴに働きかけて上から崩すのではなくて、その辺の人間に適当に働きかけて下から崩す。どうせこのまま放っておけばこの都市は完全に外との関わりを絶たれ、宙に浮くことになる。そして、きっとその前に盗賊の塒か何かになってしまうだろう。それじゃ面白く無い。全くもって面白く無いのだ。

 あまりにも恵まれ過ぎたこの場所を、ただ恵まれた場所にしておくには勿体なさすぎる。その辺の池や湖が完結した場所でありながら、さらに魚を吊り上げることで周囲に富をもたらすことができるように、ここからも外に富をすいだせてしかるべきなのだ。

 多分。


「わたしはいいけどー……おねえちゃんなんていうかなー」

「じゃあそのお姉ちゃんに聞いてみてよ」

「うーん……わかったー」


 あと単純に滞在期間中の食べ物を確保したいんで。よろしくお願いします。

いつも読んでくださってありがとうございます。

今週も遅刻ですねすいません。

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