第31景
「ええと、じゃあ干した果物は……?」
「ものによりますー」
「干した肉は?」
「とりだけですー」
「卵を運ぶための籠は」
「ないですー」
さて、お店屋さんといって、どんな情景が一般的なのか……実はあんまりよく知らない。オレの旅装の類は、あらかじめ書き出した簡 を作って商人と直接交渉し注文するのが普段のやり方だ。
もちろんそれはイドゥシヤンにいる時で、普段は往復分まとめて用意して出かけるのだが、当然そうはいかない場合も多々あって帰りの道具はその町で調達することも少なくはない。だけど、それにしたって荷下しした商人経由で信頼できる人を紹介してもらい、直に購入することが多い。市場調査? そういうのはそれこそ市場 でやるものであって店舗を訪ねて回るもんじゃない。行商人が運んできたものってのは、個人の店に並ぶ前に市場に降りることの方が多いからな。
でも1つだけわかる。この店は店として間違ってる。
「商品の一覧とかは」
「ないですー」
商品の確認が一問一答性なんて絶対間違ってる。
ある商品全部並べて見えるようにしろとは言わないけど、せめて一部を並べてだいたい何があるか把握できるようにしようよ。簡を見せても字が読めませんて……それじゃ買い物にならないんだってば。
……って、こんなちっちゃい女の子に言っても仕方ないよね。
「ええと、あとは薬草、水を腐らせないようにする奴」
「うえー、お姉ちゃんあんなの欲しいの? うちには置いてないよー」
「旅をするには必要なの。あとオレ一応男」
「……? へえー?」
「とにかく買い物の続きな。布の帯」
「あー……どれくらい?」
「どれくらいあるの?」
「わかんない」
「おいおい。それじゃオレがどれくらい要るのか言っても意味ないだろ。まあ、両足に巻く量の3倍くらいだから……」
「ふーん?」
「っていうかわかんないなら見てきてよ」
「うん」
少女はぴょんと椅子から飛び降り、後ろにあった扉を開けて奥へと引っ込んでいった。まあ、奥と言っても、ここがそもそも椅子の置いてある玄関としか言いようのない空間なんだけどな。
一応向こうとこっちを遮るように机のようなものもあるけど、逆に言えば空間を二分する机と、その向こうとこっちに1つずつの椅子以外何もない。扉の向こうには、居住空間とか商品の倉庫とかがあるのかもしれないけど、実際どうなってるかは……あれ?
いや、ちょっとまった、本当に机以外何もないぞ? 試しに机の向こう側を覗き込んでみたけど、何か書いてあるものとかもない。数えるための道具の類もない。
もしかしてこの店、あの子の記憶力だけでやってるわけじゃないよな? だったら、結構とんでもない広いものなんだが。
いつも読んでくださってありがとうございます。
今月ちょっと時間的にピンチなんです。




