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第30景

 あえて悪く言えば、怠惰と飽食の街『エヴァン』。

 正直旅人にとっては困った街としか言いようが無い。


『これで三軒目だな』

「ああ、また閉店だったな。まあいい、隣に入って見よう」


 住人たちは本質的に働く必要が無い。彼らは、いろんなとこにある食べ物を何でもかんでも好きなときに持っていくことができるし、自分で持っていかなくても酔狂な……彼らから見ると酔狂な人間が収穫して定期的に配って回ったりしている。いや、ほんと酔狂な人だよね。

 本当にやる気がある人は街を出て行くか、自警団になるか、衛兵になるか、あとは消防団とかやってる。開くまで彼らは酔狂な人なのだ。

 そして同じように酔狂な人が商売をしていたりもするのだけど……所詮ただの酔狂。やる気は微妙。いざ行ってみると開店休業とかもざらだし、目の前で店が閉じることもある。


「ごめんください」

「はーい。お客さんだね? ……あぁー? 君、男? 女?」

「男ですが」

「じゃあ今日は休み。野郎に出す飯は無いよ」

「そうですか」


 こんな風に。ちなみに料理は面倒くさいものというイメージが強いのか、食堂はそれなりの数がある。ただし開いている店を探すのは至難の技だ。結局その手間が面倒で家に帰る人が多く、需要はあるはずなのに客が入らないから店の主人はますますめんどくさがり……まあ、悪循環だ。店に入ったらどんなもんが食えるかって、家で食えるものと変わるわけでも無いしね。

 でも店がやっていてくれ無いと困るのが、オレたち個人の旅人だ。わりとしょっちゅうこの街にきているのに、未だにどこになにが実ってるのかが全く把握できないし、一部の実りは収穫するのがとても面倒くさいのでどうしても専門の人の力が必要になる。生活に根ざすものが違うから、彼らが良く食べるものとオレたちが食べるものも違う。オレたちが本来常食し食べたいと思うものはまさにその収穫が面倒なものなのだけど、そうやって収穫してくれる人は個人の家に配って回るから宿に入る旅人のところには届かない。というか宿なんて言っても基本名ばかりで、ただの木の洞に誰かが酔狂で寝具を並べているだけだし。いやぁ、本当に酔狂。それに助けられてんだけどな。

 隊商の連中は自分たちの専用の休憩所を確保しているけど、オレたちはそうはいかないし。


「昨日はたまたま店が開いてたけど、連日開いてる店を見つけるのは至難の技だな、ほんとに」

『難儀でけったいな街だな。お前らが来る意味ってなんかあんのか?』

「真っ当な行商人にはねーよ。オレの商品はいいんだ。ここでもちゃんと売れるからな」

『売り込みしてる気配が無いんだが』

「いんだよ。店回ったり寝床使ったりしてればそのうち買いに来る奴らが現れるから」


 もっとも、ここでのオレの商品は邪道というか亜流というか、本職に比べると微妙なんだけどな。とりあえず多少食べ物が手に入りさえすればいいし。


『わけわからんな』

「まあ成るように成るさ」

『それで、これからどうするんだ?』

「んー……元々は店を回りながら昼飯を調達するつもりだったんだけど、こうまで当たらないとちょっと面倒になってくるな」

『でも、そもそも食べ物が手に入らないだろ。食わないで済ますのはなしとして』

「うん、適当な畑にでも取りに行くかな。今それほど口寂しいわけでも無いし、とりあえず腹さえ満たせればいいかなって」

『畑ねぇ』

「なんか提案あるの?」

『とっととこの街でるってのは?』

「ねーよ」


 飯食えないくらいで街でてってどうする。今商品を売る準備段階なんだぞ。

 

「いいか、オレはここで情報収集するの。そのために売買しなきゃいけいないの」

『俺この街嫌いだ。あとライゴとかってのも嫌いだな』

「時々お前つれまわすの後悔するわ。まあ手放なさねーけど」

『そうかい』


 聞き分けいいのか悪いのか。

 とりあえず剣の言葉は忘れることにして、新たな店を探して歩き回る。

 ええと、次が5軒目か? なんかあるといいなぁ。


「ごめんくださーい」

「あい? おきゃくさん? おねえちゃーんおきゃくさーん」


 対応に出てきたのは16〜7のお嬢さんだ。可愛らしいもんだな。お姉さんを呼んだということは姉妹で店をやってるのかな?


「わたしいないからー、あんたでてー」

「……」

「……」


 ちょ、ちょっと気まずい。声思いっきり聞こえてるよお姉さん。妹ちゃん黙っちゃったけど……


「……いらっしゃいませおにいさん」


 あ、持ち直した。


「あ、どうも」

「なんのごようですか」

「ここって、お店やさんですよね」

「あい」


 しかしこれ、親がいないってことだろうか、この街にしては珍し……くも無いか。衛兵やってる人もいるし、配達人やってる人もいる。案外普通に足を踏み外して死んでしまった……なんてこともあるかもしれない。姉と妹の間の気力の差を考えると、一番ありそうなのは両親が死んでしまった場合 ケースか。

 いや、やめよう。妹ちゃんの方はやる気があるみたいだし、結構いい店を見つけたかもしれない。場所を覚えておこう。思うことはそれだけでいい。

いつも読んでくださってありがとうございます。

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