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第26景

 さて、しつこいようだが、エヴァンはあまり隊商に人気がない。というか、二本の橋しかないので荷渡にやたらと時間がかかるし、しかも閉鎖的なせいで物は買ってくれないし売ってくれない。定価の倍で買うって言っても渋るからな……めんどくさいことこの上ない。あくまで個人単位程度の取引にしか応じてくれない。

 じゃあ、盗賊の首を預かってくれる駐在商人とは何者かといえば、この都市を中継基地として活動している商人のことだ。

 エヴァンよりさらに先、ガーンジエッタの街はエヴァンとは違いそれなりに交易が盛んだ。

 というより、エヴァンが極めて特殊な例であって、基本的にどの都市も完全な自給自足ができていない。例えば燃料だったり、陶器だったり、薬草などの医薬品であったり、あるいは嗜好品である酒であったり、穀物であったり、肉や卵などを提供する家畜であったり、衣服になる綿や麻などの繊維であったり。

 ぶっちゃけイドゥシヤンに至ってはそのほとんどがない。交易ができなければ滅ぶ、交易都市と呼んでもいいくらいだ。だからこそサヴァジーさんは自分の拠点をそこに定めたわけだけど。

 そんななかガージエッタは主に燃料と油の産出に力を入れており、同時に嗜好品や建材を必要としている。建材にせよ燃料にせよ、腐ったりする危険の少ないものだが、重くて量を運ぶのに時間がかかる。結果的にガーンジエッタとイドゥシヤンの間には中継基地が数多く作られることになり、比較的に安全な道程 ルートが確保されるわけだが……嗜好品を運ぶ人間たちはむしろ少数でも回数を多く運ぶことを手法とすることが多い。

 そのため資材とは違い、それほど安全ではなくても速い道として、エヴァンを中継基地にした道程 ルートが出来上がり、その管理人がエヴァンの駐在商人である、と。


「はい、これ最近噂になってた盗賊どもの首です」


 そんなわけで、エヴァンとイドゥシヤンの間の間の街道で盗賊を成敗したにもかかわらず、その懸賞金を出すのはエヴァンの自警団ではなく駐在商人と呼ばれる人間たちになるのであった。彼らは隊商を組んではいるものの、馬車など使わず騾馬などに荷物を載せたりする程度で、かろうじてエヴァンの内部に拠点を構えることができる。

 現在の駐在商人は、同年代の女性だった。あるいはもう行商はやめて、残りの人生を管理人としてまっとうするのかもしれない。


「どうもお疲れ様です。証拠とかあります?」

「この蛮刀ですかね。詳しい塒の場所とかはさすがに一人では調べられないので」

「わかりました。報酬はこちらになります」


 あっさりと出てきた。普通もう少し値切るとか、何かしらあってもいいようなものだが。それに、


「……少し多くないですか?」

「衛兵の件の分も入ってますから」

「あれは都市の問題でしょう?」

「ええ。ですが我々にとっても問題ですから、今後もご贔屓に」


 ふむふむ。つまり最近ここらが何かと不穏だから、何かあれば積極的に手を貸して欲しいってことか。

 しかしこの人の態度、そつがないけどその分機械的だ。というか淡白。もしかしたら彼女は単に受け付け係というだけで、上に別の人間がいるのかもしれない……いや、その考えは穿ち過ぎかな。もしかしたら相手が女性だと思って少し下に見てたかもしれない。

 少なくとも今日オレがくることを相手が知っているわけではないんだから。


「それにしても……」

「はい?」

「女性で赤札持ちの個人行商人……あまり話に聞きませんね」

「ああ、これ変装です。普段はちゃんと男らしいかっこしてますからね。アンテカルナ・カルテルナって聞いたことないですか?」

「え……ええと……え?」


 ふむ。その反応は知ってるってことか。それで、こんな格好してるからびっくりしてると。まあ、着替えてこなかった私が迂闊だったのは確かだけど、そんなにジロジロ上から下まで見直さないで欲しい。見て損をするような仕上がりじゃないつもりだけど、さすがにちょっと恥ずかしい気もする。

 でもなあ、変に恥ずかしがったりするのもなぁ。堂々としてないと変に思われるかもしれないし、ここでの商売を考えている以上この駐在商人に悪印象を持たれるのは悪手だ。

 今更このかっこをしてることをごまかすことはできないんだから、それでも問題ないと思わせるしかない。


「盗賊どもを吊るための餌ですよ。ひ弱そうな格好をしてる方が相手も油断するでしょう?」


 そしてこっちにとって有利な地形に引き込みやすくなる。


「あ、ああ、そういうことでしたか。まさか趣味なのかと」

「そんなわけないじゃないですか……」


 うん、この人やっぱり後ろか上に誰かついてるな。冷静に考えればわかるだろう。この格好をしていないオレが噂になってるはずだという言葉の意味と合わせれば、普段からこの格好をしてるわけじゃないってことがさ。

 ってことはあんまりこの人と仲良くなってもしょうがないな。今この街道の管理を担ってるのは誰なんだろう。二、三日止まってその人物に会えるように努力してみるべきかな。

 べきだろうなぁ。

いつも読んでくださってありがとうございます。

遅くなって申し訳ありません。

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