第23景
『てれれれってれー
てるな は 〔めいさいのぬの〕 を てにいれた
!じゅうりょうおーばー!
みのこなし が 2 さがった
みつかりにくさ が 4 あがった
〔とらわれのもんぺい〕 を たすけた
「あぶないところをありがとうございます」
「ふっ いつものことさ」
もんぺい に かんしゃされた
かるま が 3 あがった
めのまえには 2ほん の つりばし が ある
えゔぁん に はいりますか?
⇒はい →いえす 』
「……なにぼそぼそ独り言言ってるのさ魔剣 。結構不気味なんだけど」
『様式美と文字数稼ぎ?』
しばらくその場で待つと、日が暮れた頃に交代の衛兵がやってきた。赤札……『王定領主ドンクラス認定赤色通商証』を見せた上で事情を説明するとすぐに話が通り、応援を呼んでくれた。
数人で木に登り確認すると、囚われの衛兵たちはぐっすり寝こけており、やはり強力な薬のようなものが使われたことらしいとわかる。彼らはこの場で待機するというので、オレが街に入って医者や自警団、市長たちに話を通して来ることになった。市長? 都長? よくわからないけど……いや、領主か。
あと迷彩とやらの布はもらった。以外とかさばるし重たい。
「……理解できない。とりあえあず『オーバー』と『カルマ』ってなに? それとも『ジュウリョウオーバー』で一言なのか?」
『オーバーは超えるって意味、カルマは……あいつもノリで喋ってたから意味わかってなかったっぽいけど、罪かなぁ』
「なんで人助けたのにあがってるんだよ。おかしいだろ!」
『勇者の言うことを信じなさい』
「まずお前が勇者の持ち物なのが信じられないんだっての……あとオレ『ふっ』とか言ってない」
『格好つけたのを認めるんだ?』
「認めねえよ!?」
『……』
「……」
『なあ』
「なに?」
『この橋長くね?』
「オレも毎回その不安は感じる。だけどそんな気がするだけで実際は長くもなんとも無いんだ。不思議なことに」
『不思議なことに?』
「不思議なことに」
珍しく滑らかに会話が進行している。すごいな。珍しいこともあるもんだ。
「……」
寒い。
やっぱりこの都市は昼間に入るに限る。この50 ハード 以上ある橋を、手元の角灯の明かりだけで一人で歩くのは正直辛い。人が一人通る幅の橋には、当然燭台なんかついてるわけも無い。かつてこの都市を使っていた住人はよっぽど夜目が効いたのか、そもそも夜は一切出歩かなかったのか。
あるいはそれこそエルフたちが、光精霊か火精霊の灯でも頼りに歩いていたんだろうか。
今は橋の終点あたりに見える街の灯りだけが心の癒しというか。この寒々しさを緩和してくれる。ああ、早く酒場に入って葡萄酒 をいっぱいやりたい。生姜や肉桂を入れてあったかくしたやつもいいな。あれなら酒精 も飛んでいるし、この時間でも出してくれるかもしれない。
『黙るなよ』
「お前が喋れば喋るよ」
強くも無い風が時折吹き付けるだけで、この場所はただ寒い。ボルダナはこれを、衣嚢 から手を出して誰かと繋ぐまでの寒さ……なんて言っていたっけ。それにクーバンが、手を繋いでも風が吹けば寒いものは寒いだろう? とか返してひどくボルダナの顰蹙を買っていた。どうでもいいことがこうも懐かしくなるのが寒さというものか。
そういう点では、オレは結構魔剣 に世話になってるんだよな。どんな場所であってもこいつを手放して一人になる心配はしなくていいし、何かに怯えて静かになるような可愛げも無いし。どこにでも連れて行ける話し相手ってすごく貴重だと思う。
本人……いや、本剣には絶対言わないけどなぁ。
『ただの剣に無茶振りするよな』
「自称勇者の剣だろうが」
『自称じゃないって』
「今自分でただの剣だって言ったじゃねえか」
『フィーリングだ!』
「もう何言ってるかわからん……っと、もうそろそろ橋も終わるな」
巨大樹が角灯のあかりにうっすらと浮かび上がり、間も無く橋は森の中に入っていく。すぐに星や月の明かりが遮る巨大樹の影に妙な威圧感を感じるようになってきた。あと10 ハード くらいか。橋の終点には入り口と同じように衛兵がいて、松明の明かりが見える。
『……俺ただの剣だけどさ』
「おう」
『なんかほっとしたわ』
「気持ちはわかるけどわからないな」
むしろちょっと分かってみたいぞ。どういうことなんだろうか。
「お前って怖いことあるの?」
『そりゃまあな、おま……あ……ああ、あああああぁああぁあ……あー、あああー。あー』
「うん?」
『いや。ない。ないない。全くないとは言わないこともないけど、あんまりない。いや、ほとんどない。ぜんぜん全くこれっぽっちもない。安心しろ。怖くない』
「どうしたいきなり」
『怖くない。安心しろ』
「そ、そうか」
やはり人間には剣の気持ちはわからない。
まあ、多少はお互いの気持ちが理解できない方がうまくやってくるってこともあるよな。オレがこいつに頼みたいことは、人が人に頼むこととしては普通かもしれないけど、もしかして剣に頼むには悪いことかもしれない。だけど、だからと言って頼むのをやめるつもりはない。だったらそれが相手に辛いことかどうかなんて知らない方がいいに決まってる。
臆病者と笑わば笑え。鬼畜野郎と罵りたきゃ罵れ。死んだ後に魔剣に呪われたってかまやしない。所詮道具と持ち主の付き合いなんだ。多少雑でも構うまい。
『今なんか酷いこと考えなかったか?』
「わりといつも考えてるけど」
『それもそうだな……っと、これがエヴァンか』
「そ、これがエヴァンだ」
あちこちに散らばる明かりと、それに照らされて浮かび上がる橋や家。この土地は森の中にあれど、夜大地に立って見上げれば星空が見えるという。
これが、エヴァンだ。
いつも読んでくださってありがとうございます。
クリスマスツリーのイルミネーションの隙間を、小人になって歩いてみたいと思ったことはありませんか? そんな感じを、もっと綺麗に描きたかった……orz




