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第19景

「いやぁ、しかしお前とこんなに長い付き合いになるとはなぁ」


 4つの首をと彼らが使っていた蛮刀4つを抱えて、崖の壁面に打ち付けられた杭の足場を渡りながら、ついそんな言葉をつぶやく。

 魔剣サーシスを拾った時、こんな長い付き合いになるとは思っていなかった。

 いや、付き合いと呼べるようなものになるとも思っていなかったというべきか。


 金目になりそうなものを拾ったら売る。


 それがこの世の習いであり、オレのような人間が生きる道のうち最も基本的なものである。


『一応言っとくけど、絶対違うからな。それ』

「それはお前側の意見だろうが」


 腰元からわめいてくる魔剣を一言で切り捨てる。

 実際、剣だと思えば折れた刀身はあまりに短く、握り拳一個と半分程度の長さの柄と同じくらいしかなかった。短剣だと思えば納得できない長さでもなかったけれど、明らかに先端は折れ砕けた形をしていたし、無駄に宝石などで飾られていたしで、第一印象は完全に「あー、いい拾い物したわー。売るかー」だ。はっきり言ってなんら使い道が無い。その上こいつ、拾った瞬間は寝てたとかなんとかで全く喋らなかったのだ。もう、ただの壊れた剣以外の何物なにものでもなかった。

 しかしそれも今では囮兼相棒である。月日の流れは早い。


『俺としてはもう手放して放り出してくれたら嬉しいんだけどなぁ』

「そこに関してオレたちの意見は一致しないってことは知ってるだろ。お前が望まない最悪の瞬間まで、どうあったって付き合ってもらうよ。そのために連れ歩いてんだから」

『それいつだよ。とっとと過ぎて欲しいんだけど』

「さあね。明日か明後日か、10年後か20年後か。まあ多分5年以内だろうな」

『曖昧だな』

「そういうもんだろ。ところでお前素に戻ってるぞ」

『な、え、そ、そういうもんか』

「そこは『素に戻るってなんだよ』だろうに」

『なんのことかわからないな』


 まあいいけどね。

 っと、崖の終わりが見えてきたな……いや、始まりか? どっちにしろ、入り口だな。

 さっさと帰って金を準備したら改めて旅に……


「……?」

『どうした』


 あれ、なんか違和感が……ああ、縄が無いんだな。もともと足場にしている杭の上に乗っけて、両端を地面に固定していただけだから、風かなんかで吹き飛んだんだろうと思ってたけど……根本からひっこぬけたってことか。もうここ使って人を罠にかけるなっていう啓示なのかな。


「いや、ちょっと待てよ……なんでそうなったんだ」

『ええと、どうした?』

「確かに縄の重みってのはあるけど、たかが15、6 (27〜9)ハード メートル分くらいの重みで抜けるならそもそも人が乗れなかっただろ」


 麻縄の重さは、(1.8)ハード メートルあたりで0.4 (1.26)ディコン キロくらいだ。つまりこの橋代わりに使われていた縄の重さは多く見積もってもだいたい……いや細かい話はおいとこう。

 とにかく、人間の体重一人分と縄の自重を2箇所で支えてたわけだ。しかも盗賊やってるような体格のいい男でも問題無い。つまり、その縄の重さが人間の体重以上に無いと、止められてた縄が自重で落ちるなんてことはありえない……ということは、縄がすっぽ抜けたのはそれ以上の重さが掛かったってこと。もちろん、振り下ろされた勢いみたいなものがあるかもしれないから、多少軽かったりするかもしれないけれど……この環境でそんな重さ1つしか無い。


「あいつ……結構根性あったんだな」

『あいつって』

「盗賊どもの頭目だよ。あいつ、縄が切れるときに必死に縄をつかんだんだろ。この崖の三分の一程度の長さだけど、下には森がある。もしかしたらかろうじて生きてるかもな」

『かろうじて』


 縄がちぎれる瞬間の減速と、それから森の木に頭から突っ込んだときの減速。合わせればかろうじて生きている可能性はある。まあたとえ生きてたとしても、虫みたいに這いつくばって動くのがせいぜいだろう。当分まともな身動きも出来ないだろうし、森に住む獣に食われてしまいだろう。

 あんまり人を食った獣が増えると治安的にはよく無いんだけど、今は繁殖期じゃ無いし一人くらい大丈夫だろう。


「そんなわけでほっておくけどな」

『そうかよ』

「……縄にくくりつけたお前ここから下ろして、見てこーいってのも考えたんだけどな」

『いっそ投げ捨ててもいいぞ』

「見て来い ・・って言ってるだろ。お前あんまり離れると機能しなくなるんだろ?」

『おう』


 おう。じゃねえよ。

 もうなんでもいいけど。


「……あ、なんかもう無性に帰りたくなくなってきた」

『は』

「このまま隣の街まで行っちまおうか」

『いやいやいや、金どうするんだよ。準備もいるんだろ!?』

「いやさぁ、どうせこの盗賊団……団? 他の場所でも討伐依頼でてるだろうし、そっちに持ってってもいいよね」

『依頼受けたんだろうがよぉ!?』


 確かに自警団のところでで依頼は受けた。受けたけど別に絶対完遂して帰りますと誓ったわけでもなし、そういう拘束力がある契約を交わしたわけでも無い。むしろ、他の街でオレが報酬をもらったほうが街の自警団的には都合がいいんじゃ無いだろうか。金払わなくていいわけだし。


女装 のまま行く気か!?』

「別にいいだろ。見たやつが損するわけじゃなし」

『する! 絶対するから!』


 オレのかっこくらいでなんでこいつこんな必死になってるの? まあ何言われようと帰る気無いけど。着替え荷物に入ってるし。

読んでくださってありがとうございます。

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