緋影まさかのモテ期到来!?
時は少し遡り、昼休みに入ると同時に、一年一組の生徒たちは一斉に教室から逃げ出した。
呪いの人形が転校してくるという前代未聞の事件から約一週間が経ち、一組の生徒たちもこの異様な学校生活に少しは慣れてきていた。だが、本日は初日並みに――いや、それ以上に、ホラー映画さながらの不気味な雰囲気が教室内に漂っていた。
その理由はただひとつ。今朝の出来事のせいで、呪いの人形であるりんねちゃんが、ものすごく不機嫌だからであった。
朝から終始、呪いの人形から怒りの呪いオーラが溢れ出ており、クラスメイトたちは恐怖に支配されながら授業を受けるはめになった。
まさにSAN値ピンチで発狂寸前のところで、昼休みを迎えみんな教室から逃げ出したというわけである。
そんな、クラスメイトのことなど知らぬ存ぜぬと、机の上に鎮座しているりんねちゃんはというと、今だにちょっとお腹が痛いようで、たまにお腹をいつの間にか手で抑えていた。
あからさまに雰囲気がおかしい教室内とクラスメイトたち――そして、呪いの人形の異変に対して、気がつく緋影でもなかった。
さてとと昨夜、いつものコンビニであらかじめ買っておいた惣菜パンをカバンから取り出す緋影は、誰もいなくなった教室で一人寂しく昼食を食べ始めるのであった。
呪いの人形りんねちゃんは、そんなマイペースな緋影を、じーっと眺めていたが、なにか気配を感じたのか、ハッとした無表情を浮かべた。
緋影が早くも惣菜パンを食べ終え、あらかじめ買っておいたミネラルウォーターで喉を潤していると教室の扉が開かれた。
りんねちゃんは、教室の扉が開くことを事前に知っていたか如く、じーっと教室の扉の方を見ていた。
教室の扉を開いたのは緊張で顔が強張っている歩であった。陽子に背中を押され教室内に入ってくる歩に、出たな自称幼馴染(自称ではない)といった視線を歩に向けるりんねちゃん。
しかし、歩と陽子の後から教室内に入ってきた人物にりんねちゃんの視線がいつの間にか向けられ固定される。
そう、憎き相手――天ノ川 天子がそこにいたのである。
りんねちゃんは天子を睨んでいる。それは、それは、めっちゃ怖い顔(無表情)で睨んでいる。しかし、当の睨まれている本人はというと自分の方を向いてるりんねちゃんに気がつき、にっこり微笑んだ。
どうやら、天子は緋影の人形であるりんねちゃんと目が合って嬉しいようである。
イライライライラ、怒りゲージマックスのりんねちゃんは、怒りに任せてコマンド『攻撃』を選択。いつの間にか緋影の方を見ている天子に向けて、黒板に置かれている白いチョークを飛ばす。
しかし、チョークはなぜか急に角度を変え、りんねちゃん自身に向かって飛んできた。
りんねちゃんの顔面にクリティカルヒィィィッッット。射的の景品の如く、コテッと後ろに倒れるりんねちゃんなのであった。
天井を見つめる呪いの人形りんねちゃんは学習した。こいつには、やっはり攻撃が効かないということを――。
時間にしてわずか数秒の出来事だったため、陽子からすれば、呪いの人形が突然倒れたように感じられた。
倒れたまま、どす黒い呪いのオーラを垂れ流すりんねちゃんに恐怖を覚えた陽子は、連れの二人にヤバくないかと目配せする。だが、歩と天子は緋影に見惚れていて、まったくりんねちゃんの異変に気づいていないようだった。
一方、緋影はというと、倒れているりんねちゃんには目もくれず、教室に入ってきた幼馴染の歩がぼーっと自分を見ているのを気にしていた。
それに対し、りんねちゃんは非常に不満そうな無表情を浮かべている。
心配してほしかったりんねちゃんは、緋影に抱っこを所望するかのようなポーズを、いつの間にか取っていた。
しかし、そんなりんねちゃんに気がつくほど、緋影は気が利くタイプではない。
むすーっとした無表情のまま倒れ込んでいるりんねちゃんに全く気づくことなく、緋影は、歩は誰かに用があるのだろうかと考えながら周囲を見回す。今更ながらに、教室には自分しかいないことに気づいたようだ。
これは、さすがに自分に用事があるのかもしれない。
そう考えた緋影は、意を決して立ち上がり、幼馴染の歩に話しかけに行った。
抱っこを所望するりんねちゃんに気がつくことなく。
「あゆみちゃんと……え~……」
幼馴染の歩に話しかけた緋影は、その隣にいるギャルの陽子に今さら気がついた。
しかし、彼女のことが記憶の片隅にもない緋影は、『誰?』となり言葉が出てこなくなる。そんな緋影に対して、歩がハッと何かを察したようである。
「……ようちゃ…んだ…よ」
「あ……あぁ……よう…ちゃん?さんか……」
さすが幼馴染というべきか、歩は緋影が陽子のことを忘れているだろうと考え、ドヤ顔で緋影に名前を教えてあげた。しかし、名前を言われただけで思い出せていたら苦労はしない緋影なのである。
気まずそうな無表情で誤魔化す緋影に対して、ジト目になる陽子なのである。
(おい……ヒトカタ……てめぇー絶対にウチのこと覚えてないだろッ!!)
かなり仏頂面で不機嫌そうなギャル美少女の陽子に対して、先程から気まずそうな緋影は脳内CPUをフル稼働させ必死に思い出す。
数秒の気まずい沈黙の後に、緋影は、思い……だした、という無表情を浮かべた。そう、轟 陽子という名前のちょい(かなり)怖いギャルを幼馴染の歩から紹介されたのを思い出したのである。
「あっ……あぁ、大丈夫……轟さんだろ?」
「緋影…く…ん……ようちゃ…んの…こと…忘れ…てた…よ…ね?」
「わ、忘れてはいないぞ……思い出すのに時間がかかっただけで……」
(それを忘れてるって言うだろーがッ!!)
「相変わらず…だ…ね……まったく……ダメ…だ…よ……ようちゃ…んの…ことは…覚えて…あげて…ね」
「いや……だから忘れていないぞ……思い出すのに時間がかかっただけだから」
誤魔化そうとする緋影を嗜める歩。そんな、なんとも幼馴染らしいやり取りを交わす二人。
そんな二人を、いつの間にか起き上がってじーっと見つめるりんねちゃん。その様子はまさにヤンデレ人形そのものだった。
気まずそうな無表情を浮かべ、後頭部を右手で擦りながら誤魔化す緋影。ふと視線を向けると、ひっそりと清楚よろしく二人の後ろに佇み、気まずそうな様子を見せる天子の存在にも気がついた。
「……天ノ川……さん……もいるのか?」
(おい……天ノ川は覚えていて……ウチは覚えてないのか!? いや、別にいいけどさ)
すぐに天子の名前が出てきた緋影に対し、少し不満を感じる陽子。しかし、それを口にはしなかった。だが、その不満は表情にはしっかりと現れていた。
一方、緋影に声をかけられた天子は嬉しそうに一歩前へ出ると、ペコリと頭を下げた。
「あ……はい……今朝は……その……す、すみませんでした」
「いや、オレの方こそすみません……でした」
朝の件について、日本人よろしく、ぺこぺことお互いに謝罪し合う。しかし、申し訳なさそうに謝罪してくる天子に対し、緋影は非常に気まずそうな様子を見せていた。
彼が天子に気まずさを感じている理由は、今朝の出来事にあった。
自慢の人形のりんねちゃんを気に入ってもらえたことが嬉しかった緋影は、天子と少し仲良くなれるかもしれないと淡い期待を抱いた。しかし、りんねちゃんを返してもらい、では、学校に向かおうかとお互い歩き出した矢先のことだった。
聖女様である天子は、かなりの距離を取って、はるか後方からひっそりとついてきたのである。その距離感に、緋影はものすごい気まずさを覚えたのだ。
「ひか……かたさんに……その……め、迷惑をかけてしまいましたので……あらためて謝罪をと思いまして……」
「いや……あれは、こちらも悪かったから……そんなに謝らなくても……」
「い、いえ……そ、そういうわけにもいきません……なので、その……ひ、ひか……かたさんの幼馴染である七川さんにお願いして、仲介役になってもらったんです……」
そう天子に言われ、歩は腰に手を当て、「仲介人……だ…よ」とドヤ顔を決める。
緋影は、なるほどと得心がいったような無表情を浮かべ、彼女たちが自分を訪ねてきた理由を理解したのだった。
そんな二人の会話をじーっとヤンデレ人形の如く聞いていたりんねちゃんは、とりあえず、物凄い形相(無表情)で天子に威嚇だけしていた。賢いりんねちゃんは、同じ失敗はしないのである。
(……律儀な人なんだな……天ノ川さんって……しかし、ひかかたじゃなくてひとかたなんだけど……まぁ、人形と書いてひとかたと読むのは難しいか……)
緋影は、あらためて謝罪に来た天子を見て、先ほどまで感じていた気まずさが薄れ、どこか微笑ましく思った。
しかし、『ん?』と、ふとある疑問が浮かぶ。
(あれ……そういえば、オレ……天ノ川さんに自己紹介したっけ?)
よくよく思い返してみると、りんねちゃんの紹介はしたものの、自分の名前は名乗っていなかったことに今さら気がつく緋影。
腕を組み、無表情のまま黙って考え込む緋影に、微妙な空気が流れ、美少女三人組はなんとなく気まずくなるのだった。
(まぁ、記憶にないだけで名前……名乗ったんだろうな……たぶん)
結局こういう結論に至る緋影なのであった。
「じゃあ……用事は終わりか……なら、オレはこれで……」
さすがは緋影。せっかく美少女たちがわざわざ自分を訪ねてきてくれたというのに、あっさりと会話を打ち切ろうとしている。
その姿に、先ほどまで不満そうだったりんねちゃんも、『さすがは私の旦那(旦那ではない)』と言わんばかりの無表情を浮かべていた。
これでは、会話が終わってしまうと焦る天子と歩。一方で、早々に終わりそうな気配に、ほんの少し嬉しそうな陽子なのであった。
ここは、緋影の幼馴染である自分がなんとかしなければという使命感に駆られる歩が前に出る。
「緋影…く…ん…そう…いえ…ば…幼稚園…の…頃…何の…本…読んで…た…の? 天ノ川さ…ん…に聞か…れて……答えれ…なかったん…だ…よ」
歩のスキル『ノンデリ』が発動し、天子と陽子はヒヤヒヤし始めた。このノンデリ何を言うかわかったものではないぞと焦りの表情が天子と陽子から見てとれた。
一方の緋影はというと、特に気にした様子もなく。
「幼稚園の頃の? なんで?」
ただ単純に、突然その話題が出たことに疑問を感じているようであった。
「緋影…く…んの…過去の…話し…聞きた…いっ…て…ようちゃ…んと…天ノ川さ…んが…言うから…話したん…だ…よ」
(ウチは興味ねぇ~って言ったよな!?)
(それ言ってしまうのですか!?)
歩のノンデリ発言で心に大ダメージを負う天子。そして風評被害を被る陽子なのであった。そんな、二人の心情に気がつくはずがない超鈍感な幼馴染コンビなのである。
緋影の過去の話しというのは、りんねちゃんも興味があるようだ。いつの間にかじーっと興味津々といった無表情で緋影の方を向いていた。
「そうなのか……幼稚園の頃はオカルトや心理学、民謡学の本をよく読んでいたな」
「だって…天ノ川さ…ん…教えて…もらって…よかった…ね」
抑揚のない声で、あっけらかんと答える緋影と、善意マックスのドヤ顔の歩に、呆気にとられる天子なのである。
一方でりんねちゃんは、オカルトならここにいると胸を張ってドヤ顔(無表情)でアピールしていた。
「しかし、なんで天ノ川さん……そんなことが知りたかったんだ?」
緋影の単純な疑問の一言に、緋影と仲良くなりたいという下心がある天子の顔が一気に赤くなり、オロオロとテンパり始める。
そんな天子の様子を見て、緋影の幼馴染である自分がサポートしてあげないとという謎の使命感に駆られたノンデリの歩。まったくしょうがないとばかりに代弁してあげねばと口を開く。
「それ…は…天ノ川さ…んが…緋影…く…ん…と…んんんんんんん~!!!」
「ちょっと口を閉じようか……あゆ!!」
そんな歩のノンデリなおくちを、背後から塞ぎにかかった陽子。なにするのと暴れる歩を手慣れた手つきに完全に封じ込める。その様子を見た天子は、感心したように目を丸くしつつも、変なことを口にされずに済んだことで安堵し、ほっと胸を撫で下ろしていた。
「お、オカルトがお好きだったのですか?」
それはそれとして、無表情のまま首を傾げる緋影に、何か勘ぐられても困る天子は、誤魔化すように質問を投げかけた。
しかし、その問いに対して緋影は腕を組み、相変わらずの無表情のまま天子から視線を逸らした。そんな彼の真っ赤な瞳の奥に、一瞬の戸惑いを感じ取った天子なのであった。
「……そういう訳じゃないんだけど……」
そう誤魔化すように言うと、心配そうにこちらを見つめてくる天子の姿が目に入った緋影。
「まぁ、今ではオカルトは迷信だと思ってるけどな」
緋影の誤魔化すような発言の今という言葉に引っかかりを感じた天子なのであった。
(いやいやいや、眼の前にオカルト居るだろッ!! いや、お前の存在がもうオカルトだろッ!!!!)
堂々としている緋影に内心でツッコム陽子は今も歩を完全に封じ込めていた。
机の上に鎮座している呪いの人形りんねちゃんも、『私、私、私。』と緋影に対して、視線で呪いの人形は存在していると猛アピールしていた。
まだ心配そうな表情を見せる天子に気まずさを感じた緋影は、早々に会話を打ち切ろうと考えた。
緋影としては、オカルトに興味を持ったきっかけの話は「話したくない」というよりも、「あまり人に聞かせるような話ではない」と思っていたからである。
「えっと……用事ってそれだけか?」
再び教室内に気まずい瞬間が流れた。机の上に鎮座するりんねちゃんも、『帰れ、帰れ』という感じの無表情を美少女三人組に向かって浮かべていた。
いつもなら呪いのひとつくらいお見舞いしてあげるりんねちゃんなのだが、天子を警戒しておとなしくしているのであった。
じゃあ、帰るかとなる陽子の封じ込めから自力で抜け出す歩は、このままでは会話が終わってしまうと勇気を出して緋影の前に出る。
「緋影く…ん…よ、よければ…お昼…一緒に…食べ…な…い?」
「……昼ならもう食べたけど」
歩が勇気を出した結果、幼馴染同士の会話は即終了した。物凄く『気まずいよ』といった顔を陽子に向ける歩なのである。
これには、りんねちゃんも、『よく言ってやった』と上機嫌そうな無表情であった。陽子もまた、なら帰ろうという表情を浮かべていた。
そして、緋影はというと言った後に気がついた。これは何も食べてないふりをするのが正解だったのではないかと。
まさか、自分が昼食に誘われるとは思っていなかった緋影は早々に後悔していた。
ちょっと、否、かなり、しょんぼりしてしまう聖女様こと天子とショックを受ける幼馴染の歩を見て、良心が痛み超絶気まずくなるコミュ症の緋影なのであった。
これではいけないとなる歩なのである。緋影の幼馴染であり、彼と仲良しな自分がなんとかしないといけない。そう考えた歩は勇気をだす。
「ほ……放課後……ふぁ、ファミ…レス…行か…な…い?」
突如として出てきたファミレスという単語を聞いて、すぐに反応したのが、呪いの人形りんねちゃんであった。ファミレスとは、あのファミレスのことなのだろうかと疑問顔(無表情)を浮かべていた。
「ファミレスに? なんで?」
脊髄反射でそう答えてしまった緋影は、再び「しまった」と心の中で後悔する。
そもそも、緋影は自分が誰かに何かを誘われるとはまったく想定していないため、反射的に疑問を口にした後で、「あれ、これ……自分が誘われてるのか?」とようやく状況を理解したようであった。
案の定、気まずい沈黙が流れる。
しかし、呪いの人形りんねちゃんだけは、ファミレスに非常に興味を示していた。
最近、この呪いの人形はどんどん俗世に染まりつつあり、さまざまなコンテンツで登場するファミレスなる場所が気になっていたのだ。
とくにドリンクバーというものに強い関心を抱いているりんねちゃんは、ぜひ一度、実物を見てみたいと思っていた。
「……よ、ようちゃ…んが…期間…限定の…商品の…おまけを…集めて…いて……よ…ようちゃ…んの…ため…にも…お願い…だ…よ」
そう突如として話の話題に自分の名前が上がり『ウチ!?』って顔を歩に向ける陽子なのである。
「……そうなのか?」
「え!? あ……いや……」
緋影の無表情が陽子に向けられ、抑揚のない声で問われると、しどろもどろになる陽子なのであった。ヤンキーにすらひるまない陽子が緋影の真っ赤な瞳にはビビってしまう。とてもシャバい陽子なのである。
「ま、まぁ……そ、そうなんだけど……さ」
「……そうか」
何かを考え始める緋影を見て、陽子がしまったとなる。
(待て、待て、待て!! この流れって……ウチが奢るってことになるんじゃね!? なんで、ウチが奢らねぇーといけねぇーんだよッ!!)
自分が欲しいもののためにファミレスに行くとなると、それは当然、陽子がお金を出さなければならないのではないのかという考えに至った陽子。この流れは非常にマズイとなる。主に金銭的な意味で。
「ひか…かたさんも……ぜひ、一緒に行きませんか?」
(おい……天ノ川!! お前聖女様だろ!? お前もウチに奢らせる気かッ!?)
これは便乗せねばといった感じで前のめりに緋影を誘う天子に物凄い形相を向けて心のなかでツッコム陽子なのである。
「予定はないから……いいけど」
(行く流れになっちまったじゃねぇーかッ!!)
緋影の返事に、歩と天子は手を上げて喜び合う。一方、陽子は絶対にいきたくないといった表情を浮かべていた。
そして、りんねちゃんは『そのファミレスにはドリンクバーはあるのだろうか』と、ワクワクした無表情を浮かべていた。
「あ……だ、大丈夫…だ…よ……ようちゃ…んの奢り…だか…ら」
(あゆー!! てめぇ!! やっぱり、ウチに奢らせる気なんじゃねぇーかッ!?)
ドヤ顔でそう言い放った歩のことを恐ろしい形相で睨む陽子なのである。しかし、これには気まずさを感じる緋影と天子なのであった。
「だ、大丈夫ですよ……自分の分は自分で出しましから……おまけはもちろん轟さんに差し上げますね」
さすが聖女となる陽子。
「まぁ、オレも自分の分は自分で出すぞ……さすがにほぼ初対面の相手に奢られるのは申し訳ない」
ヒトカタお前って意外と常識人だったんだなとなる陽子。
「そっ…か……じゃ…あ、わた…しは…ようちゃ…んに奢って…もら…う…ね」
「おごんねぇーよ!! なんで、ウチがあゆに奢ってやんねぇーといけねぇーんだよ!!!!」
陽子の当たり前の発言に対して、青天の霹靂とばかりに衝撃を受けたといった表情を浮かべる歩なのである。
(お金…ない…よ ようちゃ…ん)
(知るか……ウチには関係ねぇー!!)
(お願…い…ようちゃ…ん……今度はわた…しが…奢る…か…ら)
うるうると歩にそうお願いされ、甘々を通り越して超甘々な陽子はというと渋い顔をする。悩むに悩んだ結果。
(………………こ、今回だけだかんな!!)
(あり…が…と…ようちゃ…ん…大好…き)
結局、あまあまな陽子は、満面な笑顔でひっそりとお礼を歩に言われて、顔を真赤にして照れるのであった。
そんな二人のやり取りを微笑ましく見ていた天子なのであった。
机の上に鎮座しているりんねちゃんもファミレスなる場所に興味があったため、こいつらと行くのは嫌だけど、ファミレスなら行ってもいいとなっていた。まぁ、りんねちゃんは人形なのでファミレスに行っても料理は食べられないのだが、ドリンクバーが見られれば満足なりんねちゃんなのであった。
こうして、緋影は放課後に三組の美少女三人組と一緒にファミレスへと行くことになったのであった。




