【文書 0387】上申書(第20稿)
提出者 :早坂 瑞穂 医学博士/カドミウム軍医
提出先 :安全保障会議 医事委員会
提出日 :再編3年5月25日
件名 :感染体に関する交戦規定の部分改訂を求める件
(本職による20回目の同種上申)
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【1. 本上申の位置づけ】
本職は再編2年11月以来、計19回にわたり、感染体に関する交戦規定の医学的根拠を再検討する建議を提出してきた。
いずれも、明示的な却下、または「審議せず」の処理がなされている。
本書は、本職による20回目の同種上申である。
類似の内容を繰り返すことは、組織運営上、効率を低下させるとのご指摘を受けることを承知している。
しかし、本職は提出を続ける。
理由は以下に述べる。
【2. 本上申の動機】
本月17日、第三班が旧Y総合病院にて、感染体1体と接敵した。
通信記録(CD-V-0517-A)の内容を、本職は事後に確認した。
当該感染体は、18分間にわたり、論理的に一貫した言語で対話を継続していた。
これは「擬態行動」ではない。
擬態は、外形的な反復であって、論理的応答ではない。
本職の病理学的所見(3-X-088)と、本通信記録は、相互に補強する
証拠である。組織的に否定し続けることは、もはや科学的に不可能で
ある。
加えて、現場担当者(第三班 班長)は、本接敵の翌日、本職の診察を
受けた際、**通常とは異なる心理状態**を示した。
これは、現場担当者が**当該感染体との対話を、人間との対話として
受け止めた**ことを意味する。
擬態行動と対話したのであれば、隊員の心理にこのような影響は
生じない。
【3. 本上申の建議】
本職は以下を求める:
(i) 「擬態行動」分類の、医学的根拠に基づく再検討。
(ii) 言語応答を確認した感染体に対する、生体捕獲規定の整備。
(iii) 現場担当者の判断権限の限定的拡大。
【4. 本上申の限界】
本職は、本上申が再び却下されることを予測している。
それでも提出するのは、記録を残すためである。
将来、本問題が公式に再検討されるとき、19回の上申が「審議されなかった」という事実が、検証されうる形で残っていなければならない。
本職は、組織の判断に異議を申し立てるものではない。
ただ、記録の完全性を求めるものである。
提出者署名:早坂 瑞穂
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【決裁】
受理日 :再編3年5月26日
判定 : [ 審議せず ]
処理理由:「同種上申の反復は、組織運営の効率を低下させる」
決裁者 :医事委員会 副委員長 ─────(署名不鮮明)
【附記】
本職は、上申提出者の所属長に対し、当該提出者の心理的負荷の評価を依頼する。継続的な反復上申は、本人の判断力に影響を与えている可能性がある。
附記決裁:医事委員会 副委員長
【整理者注】 本上申書は、本資料群中、「却下されることを予測して提出された 上申書」の最初の例である。
早坂瑞穂は、本上申が却下されることを、提出時点で確信していた。 それでも提出し続けた。
彼女が再編3年7月1日の制限通達まで、計27回の同種上申を行い、 その全てが却下された事実は、本資料群を通じて確認できる。
各上申書は、却下されたが、残っている。
残っていること自体が、上申書の最も重要な機能であった。




