反省会
パイレーツのフランチャイズ球場なので、ヒーローインタビューは二人だった。お立ち台にたったのは、初勝利の若林と逆転3ランの越谷さんである。
「八回には無死満塁の大ピンチ、九回にはタイガースの強力なクリーンアップを迎えましたが、怖くありませんでしたか?」
アナウンサーから訊ねられたルーキーは、
「僕は新人ではありますが、一応プロなので平気です。そもそも怖がっていたら勝負になりません」とキッパリ言い切った。
少し間をおいて、スタンドがドッと沸いた。お立ち台の隣にいた越谷さんが、アナウンサーそっちのけで訊いた。
「八回裏の大逆転のきっかけを作ったのも若林だし、タイガースはおまえ一人に負けたようなモンだよな」
若林が「あえて否定はしません」と答えたので、スタンドは再びドッと沸いた。パイレーツファンは大喜びをして歓声と拍手を送る。この瞬間、若林はパイレーツファンの心を鷲掴みにしたのだと思う。
若林は片手を上げて応えながら、ダグアウトに戻ってきた。
「どこまで強いんだよ、おまえのメンタルは」俺が声をかけると、
「別に。僕は普段通りですよ」と、すまし顔で答えた。
「ひとっ風呂あびて汗を流したら付き合ってくれ。反省会やからな」
今日は勝利を収めたが、浮かれてばかりはいられない。タイガースは若林対策を練ってくるはずだ。特殊なストレートは初見ではなくなった。とりわけ、クリーンアップは今日のように抑えるわけにはいかないだろう。
パイレーツが明日、明後日に勝つためにも、タイガース打線の対策は欠かせない。若林はストレートとカーブしか投げなかったが、実はチェンジアップを練習中である。この新球が加われば、新たな組み立て方が考えられる。
今日の勝利は、ほんのスタートラインだ。本当の戦いはこれから始まる。そのために、俺とおまえはどうあるべきか? どうあれねばならないか? 当然、飛躍的に成長して、パイレーツの主力にならねばならない。
俺は勝ちに飢えている。パイレーツが常勝球団に生まれ変わるためなら、何だってやってやる。話したいことは山ほどあるんだ。詳しくは〈勝利の美酒〉を味わいながら、とことん話してやろう。覚悟しておけ。
もっとも、おまえにしたら、ウーロン茶かオレンジジュースを飲みながら、酔っぱらいに付き合うのは迷惑な話だろうがな。




