「あとがき」という名のショートショート
『メンタル』を読んでいただいた方には、『メンタル』が『野球王国の夢はるか』から派生していることがおわかりになったと思う。言い方をかえれば、『野球王国の夢はるか』の主人公が、大学同期の浦山から依頼を受けて書き上げたのが『メンタル』にあたる。
正確に期すならば、浦山の依頼は短編小説ではなかった。淡路島を本拠地にしたプロ野球チームが登場する漫画原作を書き上げて、コミック誌に掲載させること。結論から言うと、これは思っていた以上に難題だった。
僕は早々に漫画原作を書き上げ、馴染みの漫画家にネームに仕上げてもらった。その後、複数の編集部に持ち込んだのだが、けんもほろろの結果に終わった。どこの編集部からも、ボツをくらったのだ。その理由の大半は『野球王国の夢はるか』に書いた通りである。野球漫画のハードルが高くなっていることが大きい。
また、漫画が売れにくい時代に入ったことも理由として挙げられる。編集部は現在、売れる作品を求めるようになっている。かつてより、その傾向は強くなっており、大ヒットが見込める作品しか掲載を認めないのだ。そこそこの作品にはニーズがなく、ページを割く余裕がない、という言い方もできる。
いささか自虐的な言い方になるが、キャリアがあってもヒット作品と無縁の漫画家・漫画原作者には用なしなのだろう。
そのため、『メンタル』は短編小説という形になった。ただし、野球小説にベストセラーがないことを考慮すれば、浦山の望むような島おこしにはならない。そのためには野球以外に、キャッチィな要素を加えることが不可欠だろう。
その結果、生み出されたのは淡路島を舞台にしたオムニバス小説だったのだ。島で暮らす人、島に帰ってきた人、島に初めて来た人。さまざまな人々が登場する、さまざまな物語。恋愛物、青春物、ミステリー。淡路島のオムニバス小説のアイデアは、あくまで予防線だったのだが、結局、この形に落ち着いたわけである。
その代わり、淡路島ならではのモチーフをできるだけ盛り込むことにした。ガイドブックに載っていた〈恋人の聖地・シンボルモニュメント〉や〈淡路島サンセットライン〉、リゾートホテルなどをラブストーリーに取り入れられないかと思ったのだが、結局断念した。
ちなみに、〈淡路島サンセットライン〉とは県道31号線の愛称であり、島の西海岸を走っているため、美しい夕焼けを楽しむことができる。日暮れ時になると、広大な空と海が幻想的な色に染まるのだ。
僕がラブストーリーを苦手にしているせいだろうか。ラブストーリーを書こうとすると、どうしても『フルーツショップの手提げ袋』や『あっちゃんに首ったけ』のようになってしまう。同じ理由から、ファンタジーを書こうとすると、『どすこいエルフ』のようになってしまう。
(ホラーとして淡路島の実話怪談も検討したのだが、若者が心霊スポットを訪れるなどの不安要素がぬぐえない。島おこしになりえず、むしろ逆効果になりそうなので断念した)
ミステリーの『甘きバラよ、永遠なれ』と『僕たちの生首事件』は比較的はまったと思うが、もう少し、淡路島と密接に関わっていた方がベターだったかもしれない。例えば、淡路島の国生み神話をモチーフにした殺人事件とか、鳴門の渦潮をいかした超絶トリックといった具合である。機会があるなら、この方向にも挑戦してみたい。
本作では淡路島を舞台にした短編を7本並べた。登場人物はそれぞれに設定しているし、小説のジャンルもバラバラである。どこから読んでもらっても構わない。タイトルが気に入った順番で充分だ。どうぞ、お好きなように楽しんでもらいたい。




