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瀬戸内海でもっとも大きな島  作者: 坂本光陽
メンタル

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海峡ダービー


 我が淡路島パイレーツは兵庫県・淡路島を本拠地にもつセントラルリーグで最も新しい球団だ。地元島民から愛されているチームだが、長年Bクラスに低迷しており、最下位が指定席という屈辱を味わっている。


 対する阪神タイガースは伝統と人気を併せ持ち、ここ数年は圧倒的な戦力を誇っている強豪球団だ。パイレーツの選手全員の年俸を合わせても、タイガースのトップスター選手3人分の年俸に敵わない、という笑い話もある。


 12連敗のパイレーツに対し、タイガースは10勝2敗の開幕ダッシュを果たしている。海峡ダービー3連戦の3タテは堅いというのが、大方の見立てだろう。しかし、その予想を第1戦で打ち砕いたのが、他ならぬ若林だった。


 若林は開幕を二軍で迎えた。パイレーツでは、高卒ルーキーの一年目は身体作りと相場が決まっているらしい。おかげで、貴重な戦力を無駄にするところだった。幸いなことに、若林は二軍監督に直談判をして登板を勝ちとった。ここまで4試合25イニングを投げて自責点ゼロ。華々しい成績を上げることで、首脳陣にアピールしたわけである。


 パイレーツは開幕12連敗であり、14球団で唯一白星をあげていない。打撃陣の30イングス無得点もだらしないが、投手陣の不調はそれ以上である。チーム防御率は7点台だし、誰が投げても試合をつくることができない。もはや、投手陣は崩壊寸前なのだ。


 いや、崩壊していると言った方がいい。若林を開幕から一軍においておけば、少なくとも2試合はまともな対戦になったはずなのに。まぁ、過ぎたことは言うまい。大事なのは今日からの対戦である。


 パイレーツの先発は志賀さんだ。開幕投手をつとめたベテランだが、2試合連続で中盤にKOされている。味方のエラーに足を引っ張られたとはいえ、5点台の防御率なのだから情けない。「若林に投げさせろ」と進言したいところだが、首脳陣批判になりかねないので自重する。


 タイガースの先発は、(あずま)さんである。昨年、投手部門のタイトルを独り占めにした絶対的なエースだ。長身から繰り出すストレートは最速158キロ、抜群の切れとコントロールとは他の追随を許さない。開幕以来、2試合連続完封勝利と、完璧なスタートを切っている。しかも、推定年俸は4億5000万円。俺たちとは桁が違い過ぎる。


 試合前のミーティングでは、監督の声が響き渡った。

「これ以上の負けは許されへん。今日は総力戦でいくで。投手陣は全力投球でいけるところまでいってくれ。野手陣は死にものぐるいで球に食らいつけ」


 こめかみに浮かび上がった血管がぶち切れそうな大声だった。高齢の監督は高血圧という噂である。万が一、卒倒した場合には抱きとめられるよう、巨漢の打撃コーチが背後に控えていた。

「13連敗は何が何でも阻止するんや」


 それは俺も同感である。同じプロである以上、これ以上の負けは許されない。ファンの間では高校野球の強豪チームと戦っても負けると噂されているのだ。これほどの屈辱はない。思わず、頭をかきむしりたくなるほどである。


 しかし、ベテランの先輩たちはそうではないらしい。負け犬根性が染みついているのか、東さんの登板がわかった時点で諦めきった表情になっている。率直に言って、試合前から敗戦ムードが漂っていたのだ。



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