明かされる真実②
あんなに驚いた人の表情を見たことはない。千堂先生は大きく目を見開いて、口をパクパクさせていた。まるで、酸欠をおこした金魚のようだった。驚いたのは僕も同じだが、なぜかウルマは平然としている。どうやら、あらかじめ知っていたらしい。
水原さんの笑顔は変わらない。
「動機はカネですか? いけませんね。私も先生と同じ公務員ですから、薄給の辛さは充分に承知しています。だからと言って、犯罪は御法度です。教え子の体操着を売りさばくなんて、教職者としてはあるまじき行為でしょう」
「ちがう、私はそんなことは決して……」
「おや、先生、否定なさいますか? 生徒の前で糾弾されるのは本意ではないと?」
「先生、悪あがきは見苦しいですよ」と、ウルマが冷ややかな口調で追い打ちをかける。「僕はとっくに気づいていました。僕を見る時の舐め回すような目つき、本当に気持ち悪くて虫唾が走る想いでした」
「黙れ、ウルマ! 先生に向かって、何だ、その口の利き方は!」
先生がいきなり切れた。顔を真っ赤にして、ウルマにつかみかかろうとする。
そんなことは絶対に許さない。僕は反射的に二人の間に割り込み、ウルマを守る盾になった。殴られることは覚悟したけれど、水原さんが先生に体当たりをして、あっという間に床に組み伏せてくれた。先生の拳が僕の口元に当たったが、ウルマは無傷で済んだ。
そもそも、ウルマを守るのは昔から、僕の役割である。一番大事な友達であり、ずっと一緒に過ごしてきたのだから、そうすることは当然のことだった。
自分のことを「僕」というし、スカートを履くことがないので、つい忘れてしまいがちだけど、ウルマナナミは女の子なのだから。
「シロ、血が出てる」ウルマが僕の口元にハンカチを当ててくれた。
「これぐらい平気や」本当は痛かったけれど、僕はやせ我慢をする。
正直に言うと、表情と態度を豹変させた先生が、とても怖かった。冷静になって考えると、かなり体格が劣るのに、我ながらよく立ち向かったものだ。そう考えただけで怖ろしくなって、涙があふれてくる。僕はウルマに背を向けて、素早く手の甲で目元をぬぐった。
後になって、ウルマから教えられた。ウルマは僕の知らないところで、水原さんと面識があったのだ。体操着を盗まれた際に相談にのってもらい、今回の仕掛けも事前に会って打ち合わせ済みだったらしい。なるほど、水原さんは大人だし、刑事さんでもある。客観的に見ても、子供の僕なんかより、よほど頼りになるだろう。
そう考えると、僕の心の底で、ざわめくものがあった。むかついていたのかもしれない。ピーマンを無理やり口に押し込まれたような不快さだった。ちなみに、それが嫉妬というものだと気づくのは、ずっとずっと後のことである。




