表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
瀬戸内海でもっとも大きな島  作者: 坂本光陽
僕たちの生首事件

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

40/55

明かされる真実②


 あんなに驚いた人の表情を見たことはない。千堂先生は大きく目を見開いて、口をパクパクさせていた。まるで、酸欠をおこした金魚のようだった。驚いたのは僕も同じだが、なぜかウルマは平然としている。どうやら、あらかじめ知っていたらしい。


 水原さんの笑顔は変わらない。

「動機はカネですか? いけませんね。私も先生と同じ公務員ですから、薄給の辛さは充分に承知しています。だからと言って、犯罪は御法度(ごはっと)です。教え子の体操着を売りさばくなんて、教職者としてはあるまじき行為でしょう」

「ちがう、私はそんなことは決して……」


「おや、先生、否定なさいますか? 生徒の前で糾弾されるのは本意ではないと?」

「先生、悪あがきは見苦しいですよ」と、ウルマが冷ややかな口調で追い打ちをかける。「僕はとっくに気づいていました。僕を見る時の()め回すような目つき、本当に気持ち悪くて虫唾(むしず)が走る想いでした」


「黙れ、ウルマ! 先生に向かって、何だ、その口の利き方は!」

 先生がいきなり切れた。顔を真っ赤にして、ウルマにつかみかかろうとする。


 そんなことは絶対に許さない。僕は反射的に二人の間に割り込み、ウルマを守る(たて)になった。殴られることは覚悟したけれど、水原さんが先生に体当たりをして、あっという間に床に組み伏せてくれた。先生の(こぶし)が僕の口元に当たったが、ウルマは無傷で済んだ。


 そもそも、ウルマを守るのは昔から、僕の役割である。一番大事な友達であり、ずっと一緒に過ごしてきたのだから、そうすることは当然のことだった。

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()


「シロ、血が出てる」ウルマが僕の口元にハンカチを当ててくれた。

「これぐらい平気や」本当は痛かったけれど、僕はやせ我慢をする。


 正直に言うと、表情と態度を豹変(ひょうへん)させた先生が、とても怖かった。冷静になって考えると、かなり体格が劣るのに、我ながらよく立ち向かったものだ。そう考えただけで怖ろしくなって、涙があふれてくる。僕はウルマに背を向けて、素早く手の甲で目元をぬぐった。


 後になって、ウルマから教えられた。ウルマは僕の知らないところで、水原さんと面識があったのだ。体操着を盗まれた際に相談にのってもらい、今回の仕掛けも事前に会って打ち合わせ済みだったらしい。なるほど、水原さんは大人だし、刑事さんでもある。客観的に見ても、子供の僕なんかより、よほど頼りになるだろう。


 そう考えると、僕の心の底で、ざわめくものがあった。むかついていたのかもしれない。ピーマンを無理やり口に押し込まれたような不快さだった。ちなみに、それが嫉妬というものだと気づくのは、ずっとずっと後のことである。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ