明かされる真実➀
千堂先生はウルマに「くれぐれも勝手に動くんじゃないぞ」と釘を刺した。いつものウルマなら、先生の言葉なんか無視して、自由気ままに動き回っていたはずだ。なのに、そうした気配を少しも見せない。ウルマが危ないことを始めたら、僕は断固阻止するつもりだったけど、見事に肩透かしをくらった形だ。
ウルマは一体、何を考えているのだろう? まさか、このまま放置しておくつもりなのか。いや、そんな成り行き任せはウルマらしくない。どうにも我慢できなくなったので、昼休みにつかまえて、問いただすことにした。
「〈夜の校長〉事件のことやけど、このままでええんか?」
「シロ、何が言いたいねん。それって、どういう意味や?」
「ええと、つまり、ウルマの謎解きだけで事件は終わったんか? これで刑事ドラマみたいに、すべて解決なんか?」
ウルマは鼻で笑って、
「冗談を言ってもらっちゃ困るな。まだ何ひとつ終わってへん。僕の計画通り、仕掛けは済ませた。あとは罠にかかるのを待っているだけや」
もっとも、どんな罠を仕掛けたのか? 誰に対して罠をかけたのか? そうしたことに関しては、まったく教えてはもらえなかった。
だけど3日後、事態は急変する。6時間目に入ってすぐ、パトカーのサイレンが聞こえてきたのだ。普段ならサイレンの音は大きくなった後に小さくなっていくものだが、今日にかぎっては大きくなっていく一方だ。
僕は窓際の席なので、パトカーが南門の向こうに現れるのがよく見えた。覆面パトカーらしい車とともに停止した。南門は最も小さな門であり、中堀さんの暮らすアパートの近くになる。二台のパトカーから降りた警察官は、3人ずつ二手に分かれた。一方はアパートの中に入っていき、残りは中庭側に待機しているようだ。
ということは、警察の狙いは中堀さんの逮捕だろうか? アパートは校舎から離れているので、現場のやりとりは聞こえない。ただ、しばらくして、中堀さんを取り囲むように連行していった。刑事ドラマのような捕り物騒ぎはなかったし、手錠をかけたようにも見えなかったので、逮捕ではなく任意同行だったかもしれない。
これがウルマの待っていたことなのか? 中堀さんが罠にはまったということなのか? 僕はいてもたってもいられなくなった。すぐにでもウルマに問いただしたいところだが、授業中ではそれも果たせない。じりじりしながら、放課後まで待つしかなかった。
僕たちが授業を受けている間に、いろいろなことが急速に進んだらしい。6時間目の終わりを告げるチャイムが鳴るや否や、ウルマと僕は千堂先生から呼ばれた。警察の方が訪ねてきて、僕たちに訊きたいことがある、というのだ。
僕たちは学校の応接室で、僕は刑事さんと対面した。
「こんにちは、僕は洲本中央警察署生活安全課の水原といいます。これからいくつかの質問をするので、ゆっくりでいいから答えてほしい」
銀縁眼鏡をかけて頭の良さそうな男の人だった。刑事さんには怖そうなイメージがあるけれど、普通の会社員のように見える。
僕とウルマはソファに並んで腰をかけ、向かい側のソファに水原さんと千堂先生が座った。もう一人、若い女性の刑事さんもいた。この方は水原さんの後方に立って、僕たちに視線を向けていた。
水原さんは笑顔を浮かべながら、
「千堂先生から聞かせてもらったんだけど、近くのアパートに住む中堀さんが体操着泥棒だという推理は君たちが考えたものなんだね」
「僕たちというより、ウルマの推理です」僕は言った。「僕は手伝っただけですから」
「なるほど、そうなんだね。確認のために訊くけど、中堀さんが盗んだ場面を見たのは君たちではなく、別の生徒たちなんだね?」
「はい、その場面に関しては僕たちは見ていません」と、ウルマは応える。
「刑事さん、目撃者が小学生の場合も、重要な証拠になるんでしょうか?」と、千堂先生が訊いた。「複数の生徒が見ているというので、信憑性は高いと思うのですが」
「そうですね。中堀が夜の校内にいたことは、校内で窃盗を行った疑いの裏付けになります。ただ、それだけでは弱いですね。何といっても、状況証拠より物的証拠の方が重要です」
「刑事さん、僕も体操着を盗まれた被害者の一人です」と、ウルマは言った。「中堀を厳しく取り調べてください。僕には確信があります。盗んだ体操着が中堀のアパートにあるはずですよ」
「うん、実は、もう見つかったんだ。段ボールに五箱もあったよ。中堀は窃盗の常習者でね。警備の薄い学校を中心に盗み回っていたんだ。間違いなく罪を償わせるから安心してほしい。もちろん、君の体操着が見つかったら、キチンと返すからね」
ウルマは顔をしかめて、
「いえ、結構です。そんな体操着、僕は二度と着たくありませんから」
水原さんは、しまったという顔つきになり、
「うん、そうだろうね。嫌な思いをさせちゃったかな。ごめん、ごめん」
その時、僕が覚えているのは、女性の刑事さんから睨まれて、水原さんが苦笑を浮かべたことだけだ。それ以外に何が起こっていたのか、僕はまったく気付いていなかった。だから、あの時には本当に驚いた。
水原さんが千堂先生に向き直り、
「ところで、先生はどうして、中堀と手を組むことになったんですか?」と、笑顔のまま訊ねたのだ。




