表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
瀬戸内海でもっとも大きな島  作者: 坂本光陽
僕たちの生首事件

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

36/37

生首の正体②


 給食を食べ終えての昼休み、僕たちは窓際の席で日光浴をしていた。

「ウルマ、教えてくれへんか。なんで、そんなに防犯ビデオを見たがるんや?」

「先生が言うように、興味本位で見てみたいんやない」ウルマは答える。「もちろん、〈夜の校長〉事件の謎をとくためや。決まっとるやないか。いいかシロ、僕は生首写真と生首の持ち主の関連性を考えてとる」


「生首の持ち主? 関連性?」一体なにを言いだすのか。

「シロ、あの生首は誰なのか、君にわかるか?」

「ええっ、ウルマは誰なのか、知ってるのか?」

「質問に質問で返すな」と、笑顔で頷いた。「おいおい、あの生首に見覚えがないのか?」


「教えてくれ。誰なんや、やっぱり死神か?」

「はあっ、死神やて? バカなことを言うな」

「……じゃ、教えてくれ。あれは誰なんや?」

「シロもよく知っている。あれは中堀さんや」


「中堀さんってクレーマーの? そんな、嘘やろ?」

 写真の生首はとても小さかったし、怖かったから熱心に見てはいない。覚えているのは白目をむいていたことぐらいだ。それにしても、中堀さんだって? にわかには信じられないけど、生首写真を手元においてじっくり観察きたウルマが言うのだから、きっとその通りなのだろう。


 でも、そんなことがありうるのか?

「ウルマ、中堀さんはいつ死んだんや?」


「何いうとんねん。アパートの前で出くわしたばかりやないか。生首の正体が中堀さんやからって、彼が死んだわけやない。僕はこう考えとるんや。何者かが中堀さんを盗み撮りして、その写真を加工して生首写真を偽造した」


「ああ、そういうことか。なるほど、ようやく理解できた」

「それはよかった。シロはマジ頭の回転がにぶすぎるよな」

「でも誰一人、あの生首が中堀さんやなんて思わんかった」

「生首のインパクトが強すぎたせいやろう。僕のように心を落ち着かせて、じっくりと虫眼鏡で観察せんとわかるものじゃない」


 この口振りだと、まさかとは思うけど、ウルマは真相に辿り着いているのか?

「教えてくれ、ウルマ。犯人は一体、誰なんや?」

「犯人やて? シロ、妙なことを言うんやな。はっきり言うて、〈夜の校長〉事件に犯人はおらん。いくつかの出来事が〈夜の校長〉を中心に複雑にからみあっていて、奇妙な具合に見えとるだけや」


「……そうなんか?」

「いや、厳密に言うと、生首写真を加工した人物は存在するな。そやけど、その人物が〈夜の校長〉事件を引き起こしたわけやない」


「ようわからんなぁ。どういうことなんや?」

「事件の構成要素(エレメント)が混在している、ということや。多くの生徒が目撃した生首、校庭にばらまかれた生首写真、その写真を加工した人物、その作成動機。これらすべてが、かろうじてつながっているだけや。〈夜の校長〉というファンタジーによってな」


「……ようわからん。複雑な事件なんやな」

「いや、複雑やない。めちゃくちゃ単純や」

 そのとき、僕は遅ればせながら閃いた。

「わかった。ついさっき、偽造写真の生首は中堀さんだと言うたな」

「ああ、言うたな」


「とすると、生首写真を加工したのは中堀さんやない、何でかいうと自分でそんなことをするはずやないから、ということか?」

 ウルマは笑いながら、

「シロのくせに、ようわかったな。なかなかいい。その調子で推理してみぃや」


 明らかにバカにされている。それでも僕は精一杯、頭を使って考えてみる。

「……あと、剣道教室の連中に目撃された生首やけど、あれはどうなるんや? 生首写真の件と同じで中堀さんやない、ということやな。ということは……。うーん、おいウルマ、やっぱり複雑じゃないか」


「複雑に見えるもんが、本当に複雑やとは限らん。そう見えるんは、シロの思い込みのせいや。一つ一つは単純な出来事にすぎん。ほら、コロンブスの卵やな。僕の説明を聞けば、シロだって『なんや、そういうことか』と思うはずや」

 前にも同じセリフを言われた気がする。僕にはさっぱり見当がつかない。


「とりあえず、この事件のキーマンを追及してみようやないか。ただ、彼をおびきだすんは僕には難しい。そこでシロ、君の出番や」

「誰やねん、そのキーマンって」


 たっぷり間をとってから、ウルマは笑顔で言った。

「千堂先生や」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ