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瀬戸内海でもっとも大きな島  作者: 坂本光陽
僕たちの生首事件

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生首の正体➀


 校庭パニック事件のせいで、〈夜の校長〉の噂は生徒のあいだで広がっていた。子供たちが怪談話にひかれるのは、昔も今も変わらない。そうした状況を危惧したのだろう。校長先生が朝礼のあいさつの中で全校生徒に訴えた。


「怪談というのは、あくまで架空のお話です。本当にあったことではなく、誰かが怖がらせようと作ったお話にすぎません。どうか、落ち着いて考えてみてください。誰かの作ったお話なら、少しも怖がることがありません。怪談は本当に怖いものではない。そのことをわかってくださいね」


 学校側は明らかに、〈夜の校長〉事件の幕引きをしたがっていたと思う。でも、怪談というものは子供たちの大好物である。僕たちにとって、簡単に忘れられるものではない。


〈夜の校長〉の噂は相変わらず、学校中に飛び交っていた。3年の男子が生首に追いかけられただの、4年の女子が生首に噛みつかれただの、2年の男子が片手を食べられただの、少し考えれば嘘だとわかるはずなのに、その手のバカげた噂が広まっていた。


 この状況では、風邪で数日休んだだけで、「〈夜の校長〉を見たせいだ」と噂され、「まもなく死ぬにちがいない」と言われてしまうだろう。


 ウルマは何をしているかというと、彼は彼なりに〈夜の校長〉を調べていた。生徒たちの噂の調査は一段落して、それ以外の情報や足掛かりをさがしているようだ。


 しかし、小学生のすることなのだから、刑事ドラマのように物事はスムースに進まない。ウルマは次第に苛立ってきた。何と千堂先生に直談判をする、と言い出したのだ。


「勉学のために、ぜひ防犯カメラの映像を見てみたいんです。長々と見る必要はありません。校庭パニックが起こった日の早朝からパニックが起こるまで。それだけで構いません。ほんの数時間分ですし、早送りでチェックすれば30分で終わります」ウルマは職員室で一気にまくしたてた。「お願いですから、見せてください」


「そんなものを生徒に見せられるわけがないだろう」千堂先生は即座に切り捨てた。「校長先生の話を聞いていなかったのか? 怪談と現実を混同するんじゃない」


 しかし、ウルマは少しも動じない。

「あれ、妙なことを言いますね。僕は噂など信じていません。信じているのは現実だけですよ。ただ、例の生首写真をばらまいた犯人を知りたいだけです」


 その後もウルマは執拗に訴えた。粘り強く訴えた。どんなに怒られても引き下がらない。長い付き合いなので、ウルマの性格は承知している。こだわりが強く、簡単にはあきらめない。とにかく、とことん執念深いのだ。


「あれは警備上のものだから、部外者には見せられない。それ以前に生徒には見せられない。見せてもいいのは、警察の人間ぐらいだ。もうくだらないことに興味をもつな。いいか、この話は終わりだ」千堂先生はぴしゃりと言って、それ以上の追及を決して許さなかった。


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