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瀬戸内海でもっとも大きな島  作者: 坂本光陽
僕たちの生首事件

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32/35

目撃者たち①


 僕が給食を食べ終わるのを待っていたように、ウルマが僕の席にやってきて、何の前置きもなく一気にまくし立てた。


「今朝の騒ぎの原因は一言でいうと、集団パニックやな。集団ヒステリーって言い換えてもええ。アメリカのラジオ番組『宇宙戦争』を発端とした火星人襲来パニック、名古屋の豊川信用金庫であった取り付け騒ぎなんかがそうや。恐怖や不安というヤツは簡単に伝染する。大人だって他人の言葉に影響を受けるんや。ましてや、小学生は影響を受けやすい年頃やからね」

 ウルマだって小学生のくせに、コメンテイターのような口振りで言う。


「まぁ、冷静に考えれば、ごくありふれた、ただの悪戯やけどな」

「僕にはそうは思えへん。思い出しただけでも気分が悪くなるわ」

「情けないな。シロってマジ臆病者やな」

「いいや、ちがう。これが普通の反応や」


 僕はウルマの耳元に口を寄せて、

「おまえが信じられへん。あんな気持ちの悪い写真をどうする気や?」

「どうもせぇへん。極めて個人的な探求心や。回収された写真は厳重に保管されて、二度と僕たちの目に触れることはないやろ。だから、貴重なサンプルとして、手元においておきたかっただけや」


「やっぱり、信じられへん。写真を見た生徒は全員、忘れてしまいたいはずやのに」

「シロに理解してもらおうとは思えへん。ただ、これだけは言わせてもらおか。シロは〈夜の校長〉の正体を知りたくないんか?」


「〈夜の校長〉の正体? どういうこっちゃ?」

「文字通りの意味やで。この際、とことん調べてみようと思うとる。シロも一緒にやらへんか?」

「うーん」僕は少し迷った。確かに好奇心はあるけど、同時に怖い気持ちもある。

「やっぱり、シロには無理かぁ」と、ウルマが肩をすくめた。「怖いのなら仕方ない」


 これにはカチンときたので、僕は反射的に言っていた。

「ああ、わかった。何を調べればいいんや?」

 つまり、まんまとウルマの術中にはまったわけである。


 僕たちの調査は一週間に及んだ。その結果、判明したことは、今回の生首事件には、あらかじめ伏線があったということである。この1ヵ月のうちに、〈夜の校長〉目撃談がいくつもあったのだ。


 最初の目撃者は3年の女子だった。夕方に忘れ物をとりに小学校に戻った時、校門近くの大きな桜の木があるのだが、その枝の上に、〈夜の校長〉がいたらしい。不気味な灰色の顔が、ニヤニヤと不気味に笑っていた。悲鳴を上げて逃げかえったという。


 4年女子は、体育館の中で目撃した。体操クラブを終えて帰ろうとした時、誰かの視線を感じたという。振り向くと、〈夜の校長〉が窓から覗き込んでいたらしい。不気味な灰色の顔をして、やはりニヤニヤと笑っていた。


 次の目撃者は複数だった。体育館では毎週水曜日に剣道教室が開かれている。練習が終わった後、6年の男子3人が校庭で〈夜の校長〉を目撃した。生首は暗い教室の中に青白く浮かんでいたらしい。ふわふわと移動して、すぐに消えてしまったという。


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