表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
瀬戸内海でもっとも大きな島  作者: 坂本光陽
僕たちの生首事件

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

30/35

校庭パニック


 僕たち小学生の日常は基本的に、平凡な日々の繰り返しだ。時々、運動会や遠足などのイベントがあったり、転校生や授業参観などの非日常があったりするけれど、ニュースになるような大事件は起こらない。


 せいぜい、運動会の声援が大きすぎて近所の人が文句を言ってきたり、登校途中の生徒がふざけているうちに転んで怪我をしたりする程度である。生徒の体操着が盗まれるという事件が起こっているが、本当に事件なのかどうかは微妙なところだ。


 さて、そろそろ、小学校でおこった大事件について語ろうと思う。本当はウルマの方が適役だけど、「いや、そんな雑事に僕は関わっていられない。暇人のシロがすべきだよ」と言われたからだ。


 仮に、〈夜の校長〉事件と呼ぼう。


 発端は6月中旬の月曜日のこと。ウルマと僕がいつものように登校すると、生徒たちが校庭で騒いでいた。彼らの足元には、数多くの紙切れが落ちている。どうやら、それはキャビネサイズの写真らしい。つまり、大量の写真が校庭にばらまかれていたのだ。


「やだぁ、何やのん、これ」「うえぇ、気持ちわる」と、生徒たちは顔をしかめている。


 ウルマの拾った写真を覗くと、それは確かに不気味な写真だった。写真の右半分は、小学校の校舎が占めている。左半分の真ん中あたりに、奇妙なものが写りこんでいた。そいつは校舎から少し離れた位置で、風船みたいに宙に浮かんでいた。最初はサッカーボールかと思ったけど、よく見ると、そうではないことがわかる。


「ウルマ、これって、まさか、あれか?」

「僕も今、シロと同じことを考えてたよ」


 それは確かに、生首のように見えた。男の生首が白目をむいて、怖ろしい表情を浮かべている。他の写真もすべて同じものが写っていたらしい。周りの生徒たちも僕たちと同じことを考えたはずだ。


 これは〈夜の校長〉にちがいない、と。それにしても、なぜ、こんな写真が校庭にばらまかれているのだろう。まったく見当もつかない。


「生首を見てもうた。どないしよう」「怖いなぁ。私、死ぬのは嫌や」と、下級生の女の子たちは今にも泣き出しそうだ。


 6年の男子が悪乗りして、

「やばい、やばい。俺たちは全員、〈夜の校長〉を見てもうたんや。皆、高熱が出て、苦しむことになる。一人残らず、死んじまうんやぁ」


 中学生並みに大柄な男子である。確か、五十嵐君といったはずだ。彼が大声でわめきちらすものだから、女の子たちが泣き出した。泣き声はたちまち連鎖していく。五十嵐君はヘラヘラと笑っているだけだ。同級生の女子たちに文句を言われても平然としている。


 その間にも、次々と生徒たちが登校してきて、写真の〈夜の校長〉を見てしまう。すっかり大騒ぎになってしまった。先生たちが駆けつけてきたけれど、下級生たちのパニックは容易には収まらない。そのうち、気分が悪くなって倒れる子まであらわれた。


 その時、最も冷静だったのは、おそらくウルマだったと思う。僕が話しかけても、ウルマは無言で生首写真をジッと見ていた。印象的なので、よく覚えている。ウルマの大きな瞳は好奇心にキラキラと輝いていたのだ。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ