答え合わせ
淡路島出身の俳優で最も有名なのは、渡哲也と渡瀬恒彦の兄弟だろう。他にはベテランの笹野高史、女性では大地真央、キムラ緑子、宮地真緒がいる。司会者のイメージが強いが、上沼恵美子、山口崇もいる。
美幸さんは残念ながら、俳優として認められることができなかった。
叔父には言わなかったが、美幸さんには甥がいる。由紀夫といって、美幸さんが店長を務めていたハンバーガーショップで、私たちは出会った。同い年だし、同じ時期にバイトを始めので、すぐに仲良くなった。もっとも親しいバイト仲間だといっていいだろう。
私たちは今、馴染みのカフェで話し合っていた。用件は、もちろん【甘きバラよ、永遠なれ】についてである。あらかじめ、叔父の推理は伝えてあったので、今回は答え合わせのような意味合いをもつ。
「美幸さんとは小さい頃から毎年、盆正月に会っていたんやで」と、由紀夫は言った。「けど、あの人、自分のことは全然話さへんからな。メグミから話を聞かされて驚いたで。女優を目指していたなんて初耳やったしな」
蛇足だけど、由紀夫のことを叔父に話さなかったのは、ただのバイト仲間だからだ。もし叔父の家に連れて行っていたら、間違いなく揶揄われたと思う。まだ彼氏彼女の関係にはなっていないし、叔父のせいで、由紀夫と気まずくなるのは避けたかった。
「親父に確認してみたけど、やっぱり『タイムリーパー・翔子』の件は知らんかった。ただ、美幸さんがテレビドラマのエキストラをしたり、劇団に入っていたりしたことはあったらしいで」
ちなみに、由紀夫の「親父」というのは、美幸さんの兄にあたる。
「若いんだから、やりたいことがあったら、どんどんチャレンジしぃや。これ、美幸さんの口癖やった。子供の頃から何度も聞かされたもんや」
「それって、若い頃に挫折を味わったからかな」
「いや、これは、美幸さんの元からの性格やろ」
「うん、そうだね。その方が、美幸さんらしい」
「美幸さんの荷物を詰めた段ボール箱をあけてみたら、こんなもんが出てきた」
目の前に差し出されたのは、一本の古びたビデオテープだった。市販のVHSテープであり、ラベルが貼られておらず、中味はわからない。ただ、録画ができないように爪が折られていた。
「ケースとテープの隙間に、この写真が挟まっていた」
写真の中では、セーラー服を着た美幸さんが、ナイフとフォークを手にしてポーズをとっていた。テーブルの皿の上には、赤い花びら。背景には大きな時計があり、花が咲き、蝶が飛び交っている。
おそらく、パイロット版のスチール写真なのだろう。
由紀夫はビデオテープの中身を見るために、専門店に持ち込んでDVDへのダビングw済ませていた。由紀夫のアパートで一緒に見たのだが、それは案の定、『タイムリーパー・翔子』のパイロット版だった。
美幸さんはバラの花びらを口に含み、厳かに呟いていた。
【甘きバラよ、永遠なれ】。
彼女の魂が彼女の望む時空に飛べたことを、私は切に願う。




