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瀬戸内海でもっとも大きな島  作者: 坂本光陽
甘き薔薇よ、永遠なれ

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22/56

決め台詞


 私は少し考えてから、

「わからない。近づいてる? どのあたりが?」


「【甘きバラよ、永遠なれ】いうのは、主人公の決め台詞やと思うんや。例えば、『金田一少年の事件簿』の「じっちゃんの名にかけて」、『家なき子』の「同情するなら金をくれ」、『半沢直樹』の「倍返しだ」、『相棒』の「細かいことが気になるのが、僕の悪い癖」。おっと、これは主人公の口癖やった」

「右京さん?」


 叔父はリズミカルにキーを叩きながら、

「『時をかける少女』の主人公は、芳山和子。どういう決め台詞やったか、メグちゃんにわかるか?」

「……わかんない。アニメ版にはなかったと思う」


「アニメ版の主人公は、芳山和子の姪っ子やからな。作中の博物館で働いていた女性が、芳山和子や。ま、どちらにしても、決め台詞はなかったけど」

「この期に及んで引っかけぇ?」私は叔父を叩くふりをする。


「【甘きバラよ、永遠なれ】というのは、あるテレビドラマの決め台詞や。ただ、厳密に言うと、少しだけ違ってる。そのドラマの決め台詞は、【甘き花よ、永遠なれ】。【バラ】が【花】に変わっとるんや。ほら、このドラマやで」


 叔父が示したモニターには、ドラマのホームページが映し出されていた。主演の美少女が決めポーズをとっていて、セーラー服を着ているということは女子高校生なのだろう。タイトルは『タイムリーパー・翔子』。

「これって、いつ頃のドラマ?」


「1999年やから、27年前の作品やな。主人公の名前は、時任翔子。初めてのドラマ出演で主役を射止めて、役名がそのまま芸名にしたみたいや」

「ふうん、どっちも初めて聞いたな」


「タイトルのタイムリーパーは時間跳躍者。主人公は超能力を使って、過去や未来にジャンプする。『翔子』は『時かけ』の影響を強く受けとるのは、誰の目にも明らかや」

 叔父の説明は続く。

「『時かけ』における時間跳躍のきっかけは、ラベンダーの香りやった。『翔子』におけるそれは、赤い花びらを口に含むんや。そして、厳かに呟く。それが」

「【甘き花よ、永遠なれ】」


「赤い花は、たぶんバラの花びらやったと思う。でも、なぜか【甘きバラよ】ではなく、【甘き花よ】。この点の解明は必要やな。美幸さんの言った【甘きバラよ、永遠なれ】と【甘き花よ、永遠なれ】が無関係やったとは思えん。このドラマを足掛かりに掘っていけば、何か出てくるはずや」

「私も、そう思う。『タイムリーパー・翔子』を観てみるよ」


 こうして、この日の叔父との話し合いは終わり、後日、互いのリサーチ結果を持ち寄ることになった。




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