美幸さん
「重要なこと?」
「とりあえず、隠し事はやめてくれ」
私は内心ギクリとしながらも、
「何それ。私、隠し事なんかしてへんよ」と、とぼけた。
叔父はニヤニヤ笑って、
「メグちゃんとは長い付き合いやからな。隠し事をされたり嘘を吐かれたりすると、すぐわかるんや。高校生のとき、中学生のときにも似たようなことがあったな」
「そんなこと、あったかなぁ」
「何や、とぼけるんかいな」
「だって、全然記憶にあらへんから」
叔父は納得をしていない顔つきだったが、
「まぁ、ええわ。今は【甘きバラよ、永遠なれ】に集中しよ」
「うん、そうだね。集中しよ」
叔父は短く息を吸い込んでから、
「じゃ、ズバリ訊くんやけど、夢うつつの状態で【甘きバラよ、永遠なれ】と言ったのは、一体誰なんや? 男なのか、女なのか? 年齢はいくつや? あと、メグちゃんとどういう関係なんや?」
やっぱり、叔父は鋭い。マシンガンのように問いただされてしまった。
「わかった。一つひとつ答えていく。【甘きバラよ、永遠なれ】と言ったのは、女の人やよ。正確な年齢は知らんけど、たぶんアラフォーやと思う。叔父様と同じぐらいやないかなぁ。あと、訊かれていたのは、何だっけ?」
「メグちゃんと、どういう関係なのか」
「ああ、そうだった。只の知り合いというか、関係は同僚になるのかな。同じハンバーガーショップで働いていたの。美幸さんは店長さんで、私はアルバイトやったけど」
叔父は腕組みをして、
「……なるほどな。嘘は言ってへん」と、半信半疑の顔つき。
私はおどけた調子で、
「あれ、ひょっとして男性やと思った? 私の彼氏やないか、とか」
「いや、そんなことはないけどな」と言って、コーヒーを飲み干した。
私はお代わりを注いであげながら、
「どうなん、美幸さんが叔父様と同世代というのは、重要な手掛かりになりそう?」
「それは美幸さんが、どういうタイプなんかによる。アラフォー女性だよな。もし結婚しているなら、一番の関心事は子供のこと、家庭を守ることやろう」
私は首を横に振って、
「ううん、美幸さんは独身やった。バツイチでもなかった」
「そうか。メグちゃんは美幸さんと仲がよかったんやね。どういう女性やったのか、できるだけ多くの情報が欲しい」
「うん、わかった」
私はできるだけ多くの情報を提供するように心がけた。
美幸さんは、いつも元気で朗らかな明るい女性だった。さっぱりとした性格で、頭の回転も速く、仕事をテキパキこなしていた。面倒見もよくて、私たち学生バイトは相談にのってもらったものである。
「美幸さんの趣味は何やったのかな?」
「一番熱中していたのは、テレビドラマやね。ネット配信のドラマが話題になることが多かったと思う」
なにげなく言ったんだけど、これが思わぬ突破口になった。




