ネバーエンディング
淡路島からバスと電車を乗り継いで大阪に帰るまで、今回の企画について想いを巡らせた。思いつくままにノートに書きつける。アイデアは次から次へとスラスラ出てきた。新鮮な海の幸を食したせいで、頭が冴えているのだろうか。
浦山のオーダーに基づいて、野球漫画の原作にも取り組んだ。架空球団のニックネームは、ファルコンズやシャークスではない。もちろん、×ぃかわズでもない。海賊を意味するパイレーツにした。瀬戸内海で活動していた日本最大の海賊・村上海賊(村上水軍)からの発想だ。
〈淡路島パイレーツ〉はセントラルリーグの弱小球団である。イメージ的には水島新司の『野球狂の詩』に登場する東京メッツに近い。(同リーグで4組のカードを組むためには、もう一つの架空球団が必要になる。例えば、沖縄の球団を検討中)
高卒ピッチャーが入団するところから、物語は始まる。新人離れしたルーキーは強靭なメンタルを武器にのし上がり、開幕一軍入りを果たす。相棒のキャッチャーを筆頭に、チームメイトの先輩たちを巻き込んで、弱小球団の快進撃を推し進めていく。
開幕戦の対戦相手は、どこがいいだろう。阪神タイガースとの関西ダービーか、それとも東京の読売ジャイアンツか。(淡路島の球団と沖縄の球団の試合ならアイランドダービーになる)
他にも、女子硬式野球チームの投手が初めてNPBに進出する展開を思いついた。つまりは、令和版の水原勇気だ。これはこれで面白い作品になりそうである。思いついて形にするまでは楽しい。ここまでくれば、いつでも原作を書き上げることができる。
同時進行で、漫画家の選定もすすめた。野球漫画の執筆経験がある方、原作付きの作品の多い方、フレッシュな感性の若手の方。馴染みの漫画家や編集者にも声をかけて、候補者をリストアップする。できることなら、野球漫画に情熱をもっている方が望ましい。
テレビドラマや映画などと違って、漫画のよいところは、少人数でおこなえるところにある。最低限、俺と漫画家の二人だけでいいし、小回りの利くことは大いなるメリットだ。うまくいかなかったとしても、何度でもやり直せばいい。
繰り返しになるが、野球漫画に要求されるレベルは高い。競争相手にはヒット作が多いし、編集部を納得させることは相当に難しい。最初から厳しい戦いなのはわかっている。不毛な戦いをいつまでも続けるわけにはいかない。ある程度の挑戦を続けても見込みがなさそうだったら、いさぎよく撤退を決める。
元々、うまくいく方が圧倒的に少なくて、極端な話、「センミツ」といって、千本のうち三本しかうまくまとまらない厳しい世界なのだから。
とりあえず、予防線を張っておく。浦山の企画からは外れるが、自分一人でも取り組める創作活動を考慮に入れておく。例えば小説なら、いくらでも発表の機会がある。ネット上には、「小説家になろう」をはじめ小説投稿サイトが数多くあるからだ。
無料で公開ができるのは大きなメリットである。だが、デメリットもある。野球小説のニーズは決して高くはない。書籍化された野球小説を調べたことがあるのだが、ベストセラーは皆無だった。プロ野球にしろ高校野球にしろ、野球は観戦するものであり、漫画は別にして読むものではないのだろう。
ひるがえって、野球小説を売るためには、単なるスポーツ物では難しい。読者のニーズを考えると、キャッチィな要素を加えることが不可欠になる。
こうなってくると、野球だけにこだわらない、別の切り口も浮かんでくる。発想の起点が島おこしなら、いっそのこと、淡路島を舞台にしたオムニバス小説にすればどうだろう。
島で暮らす人、島に帰ってきた人、島に初めて来た人。さまざまな人々が登場する、さまざまな物語。恋愛物、青春物、ミステリー……。その中にまぎれた野球物ならば、とっつきやすいのではないだろうか。
もっとも淡路島オムニバス小説のアイデアは、あくまで予防線である。野球漫画が頓挫した場合の受け皿である。思いつくままに書き綴ってきたが、どのような結果になるかは、実際に提案してみなければわからない。時間と労力をかける必要があるので、容易には判断がつかないかもしれない。
さて、ここまで読んできたあなたは、どのように感じただろうか? いろいろな可能性が考えられるし、企画提案の道のりは果てしなく続く。うまくいったと思ったら、次の瞬間には裏切られることも決して珍しくない。それが当たり前の世界なのだ。
奇跡を起こすには、何度も繰り返し挑戦するしかない。トライ&エラー。果てしなく続くトライ&エラーだ。結果が出なくても、それなりに楽しんでいるし、還暦を迎えても続けている。俺は数十年のキャリアの中で、何度か奇跡を起こしたことが大きい。
この小説の続きは、とりあえず保留にしておこう。いろいろな展開がありうるし、どの道のりを選ぶとしても、紆余曲折をたどることになる。必然的に長くなり、楽しんでもらうことが難しくなると予想される。
ただし、この結末は何らかの形で明らかするつもりだ。少し時間がかかるかもしれないが、その機会がおとずれるまで待っていてもらいたい。




