表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
瀬戸内海でもっとも大きな島  作者: 坂本光陽
野球王国の夢はるか

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

13/56

居酒屋会談②


 かつて、関西にはプロ野球チームが多かった。阪神タイガースとオリックスバファローズの二球団は健在だが、時代をさかのぼると南海ホークス、阪急ブレーブス、近鉄バファローズという三球団もあったのだ。


 南海は福岡県に移ってダイエーホークスになり、今はソフトバンクホークスになっている。阪急ブレーブスはオリックスブレーブス、そしてオリックスブルーウェイブになり、のちに近鉄バファローズを吸収合併して、オリックスバファローズになった。しかし、淡路島のプロ野球チームがあったことは聞いたことがない。


「嘘やろ?」俺は言った。「淡路島を拠点にしたチームなんて初耳やで」

 もったいぶらずに、浦山は種明かしをしてくれた。

「ただし、セ・リーグ、パ・リーグのNPBやないで。独立リーグって知っているやろ。あれも一応プロ野球やからな」


 なるほど、選手の年俸は天と地ほどの差があるが、プロにはちがいない。独立リーグ出身のNPB選手は増えている。贔屓(ひいき)の阪神タイガースにも、石井大智(だいち)や湯浅京己(あつき)をはじめ大勢いる。そういえば、藤川球児監督もメジャーリーグから阪神に復帰する前の一時期、四国の独立リーグに所属していた。(蛇足になるが、わが阪神には淡路島出身の選手がいる。近本光司と村上頌樹(しょうき)という中心選手である)


「今はなくなってもうたが、関西独立リーグに神戸サンズちゅうチームがあった」浦山は説明を続ける。「マック鈴木って覚えてないか。メジャーリーグやNPBで活躍したピッチャーやけど、晩年はサンズで選手兼任監督をやっとった」

「ああ、その話は聞いた覚えがある」

 

 マック鈴木といっても生粋(きっすい)の日本人である。兵庫県神戸市出身で、本名は鈴木誠という。蛇足(だそく)になるが、彼の奥さんは、お笑いコンビ・クワバタオハラの小原正子さんである。


「その神戸サンズの拠点が淡路島いうわけか」俺が言うと、

「ここは洲本市やけど、サンズが練習に使っていた洲本市民球場はすぐ近くやで」と、浦山は言った。「けど、十数年前に活動休止になってもうた。サンズの他にも、淡路島ウォリアーズちゅうチームもあったんやが、いろいろあって今は休眠中や」


 独立リーグに関しては詳しくない。というより、知らないことばかりだ。しかし、淡路島出身の浦山にしてみれば、サンズとウォリアーズは「おらがチーム」だったのだろう。選手たちに親しみを感じて応援していたにちがいない。


「だとすると、浦山、そういうことなんか」

「ああん? 何が、そういうことやねん」

「まさかとは思うけど、淡路島に新球団をつくろうと思てんのか?」

 浦山はニヤリと笑った。

「おまえ、正気か。プロ野球の球団やぞ。一体いくらかかると思っとんねん」


 NPBではなく独立リーグだったとしても、おそらく一千万や二千万ではすまない。少なくとも億単位、もしかすると十億以上なのではないか。浦山にそんな貯えがあるとは思えない。まさか、淡路島でスポンサーを集めるつもりなのか?


 そんなことを考えていると、店主が声をかけてきた。

「そろそろごはんを食べたくありませんか? 新鮮なサワラがあるので、生サワラ丼なんかいかがですか?」


 サワラは足が早い。傷みやすいので流通しにくいのだ。俺は生サワラ丼を初めて口にした。独特な食感と合わせて豊かな風味を堪能した。


「めちゃくちゃ旨いな。おまえ、こんなもんを毎日くってんのか?」

「毎日やないけどな。新鮮な海の幸は、めちゃくちゃ身体にええで」

「心身ともにリフレッシュ。脳みそまで作りかえてくれたりしてな」

「その読みは的中や。島にきてから、俺の頭は冴えまくってんねん」


 その冴えまくった頭で閃いたのが、プロ野球の新球団結成か? 野球で島おこしか?


「話を戻すんやが、本気で新球団結成を考えてんのか? 仮に独立リーグとしても、素人が手を出すのは無謀すぎるやろ」

「そういう考え方もあるかもな」


「あるかもな、やないわ。無謀の極みやないか。どうやって億単位のカネを用意すんねん」

「それは無理やろうな」浦山は笑いながら、「億単位といわず、数百万、いや数十万でも難しいやろな」


「数十万? おまえ、一体なんの話をしてんねん。新球団結成の話やぞ」

「ああ、そうや。新球団の話や。あいにく打出(うちで)小槌(こづち)はもってへん。カネで勝負しようとは(はな)から考えてへんのや。カネをかけんでも、画期的なアイデアさえあれば、どうにかできるもんやで」


 カネをかけずに新球団? 野球で島おこし? 俺を淡路島に呼び寄せたことと合わせると、浦山の話が何となく見えてきた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ