第21章 帰還
翌朝、宿の部屋で身支度を終えた。
荷物はベッドの上に置いたままにした。
「帰宅前地点へ戻る」が機能するなら、
戻ったときにここに荷物がある状態になるはずだ。
試す価値があった。
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椅子に腰を下ろし、目を閉じた。
核との接続を確立した。
意識の奥に、ダンジョンの感覚が広がる。
床、壁、空間、そこにいる生き物の熱。
全部が指先にある感覚だ。
「ダンジョン即時帰宅」を発動した。
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一瞬、何かに引き戻されるような感覚があった。
次の瞬間、石の床の感触があった。
目を開けた。
薄暗い。
洗面台が視界の端に映る。
石製の寝台、隠し扉。
生活区画だった。
宿の椅子に座っていた状態から、
ダンジョンの最奥部へ。
一呼吸にも満たない時間で。
有用だと判断していたが、
実際に使ってみると、その速さは想定を超えていた。
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感知を広げた。
1Fのモンスターたちが静かに過ごしている。
影狼は横になっている。
アラクニアは糸を再生させている。
サンダーウルフは眠っている。
ゴースト・ガーディアンは部屋の中央に立ったまま動かない。
コアバットは奥の部屋で療養中だ。
狩猟隊は外で活動中だ。
マインドフレイヤーは廃屋近くで待機している。
正常な状態だ。
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隠し扉を開けて核の間へ出た。
次に、大部屋への扉を抜けた。
広かった。
50m×50m。天井20m。
感知では把握していた。
だが、実際に立ってみると規模の感覚が違う。
壁は粗削りの岩。
床は均された岩盤だが、完全に平坦ではない。
空洞そのものだ。
この空間に、構造を作る必要がある。
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床の上に座った。
設計を考えた。
広い空間を使うには、視線の管理が要る。
開けすぎた空間は、弓や魔法を使う後衛に有利だ。
逆に、遮蔽物を増やせば近接戦になる。
近接はモンスターが有利だ。
中央に通路を一本作る。
幅3m。入口から核の間への直線。
両脇は壁で閉じる。
ただし、左右それぞれに迂回路を設ける。
L字を描くように折り、その折れ曲がった先に罠を置く。
迷い込んだ者を消耗させ、
メイン通路を進んだ者を守護が迎える。
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守護に置くのは、アンデッド・ウォーロードだ。
ウォーロードは指揮型だ。
不死系の部隊を束ねて動かせる。
骸骨剣士を左右の迂回路に展開し、
ウォーロード自身は中央後方から全体を制御する。
どの経路を選んでも損耗させ、
最後にウォーロードが仕留める構成だ。
シャドウ・ドラゴンは将来、
100m×100mの空間が確保できた段階で使う。
今の大部屋では空間が足りない。
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必要なPTを試算した。
骸骨剣士3体で45PT。
ウォーロード本体が60PT。
通路建設が30〜50PT程度。
合計130〜155PT。
今夜の狩猟隊収益が入れば、190PT前後になる。
着手できる。
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通路の具体的な長さを計算しようとしたとき、
感知が反応した。
入口だ。
三名。
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感知を絞った。
成人男性が二名、女性が一名。
全員、武装している。
前衛らしき男二名は鎧を着込んでいる。
後衛の女性は長衣。
腰に詠唱補助の符が下がっている。
後衛は魔法使い系だ。
動きに迷いがない。
最初の部屋へ向かう足取りが速い。
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罠が動いた。
最初の部屋に入った瞬間、
暗闘罠が視界を閉じた。
感知に映る三名の動きが止まった。
前衛の一名が手を上げて、停止を合図した。
即応している。
訓練された動きだ。
十秒ほどで、視界が戻ったようだ。
動き出した。
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次の罠は落とし穴だ。
前衛の一名が床を踏んだ。
沈んだ。
落下は3m。
前衛が縁を掴もうとしたが、間に合わなかった。
後衛が何かを叫んでいる。
穴に落ちた前衛が、壁を蹴って登ってきた。
肩を押さえている。
強さはある。
だが、消耗が始まった。
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毒霧罠が動いた。
部屋全体に霞が広がった。
三名の動きが落ちた。
後衛が口を覆っている。
それでも前進を止めなかった。
Cランクだ。
この程度で立ち止まる相手ではない。
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三名が最初の部屋を抜けた。
通路に入った瞬間。
連鎖爆炎魔法陣が起動した。
光と熱が感知を塗り替えた。
三名が吹き飛んだ。
前衛の一名は壁に叩きつけられた。
もう一名の前衛は床に転がった。
後衛は吹き飛ばされた勢いで通路の外まで押し戻された。
三名とも生きている。
だが、前衛の一名は立つのに時間がかかった。
もう一名も立てたが、足が揺れている。
後衛はその場で呼吸を整えている。
これで全員、消耗した。
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命令を送った。
「待て。入ってきたら動け」
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後衛が前衛二名に何かを言った。
前衛が頷いた。
三名が再び前進した。
次の部屋の扉が開いた。
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ゴースト・ガーディアンが動いた。
守護の圧を前面に展開しながら、
最も手前の前衛へ向かった。
前衛がそれを受けようとした。
剣を構えた。
ガーディアンの圧が前衛の剣ごと腕を押し込んだ。
爆炎を受けた直後の体では、
踏ん張りが利かなかった。
前衛が後退した。
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影狼が横から動いた。
中傷を抱えているが、速度は落ちていない。
前衛の側面へ向かった。
後衛が魔法を放った。
影狼が弾かれた。
壁に叩きつけられた。
それでも立ち上がった。
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もう一名の前衛が、後衛を守る位置についた。
後衛が攻撃魔法の詠唱に入った。
サンダーウルフが雷を放った。
後衛の近くを走った。
命中ではない。
だが、近くを雷が走れば集中は途切れる。
詠唱が崩れた。
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アラクニアが糸を張った。
前衛の足に巻きついた。
一秒、動きが固まった。
ゴースト・ガーディアンが距離を詰めた。
圧を集中させた。
前衛が受けようとした。
間に合わなかった。
崩れ落ちた。
```
[ 討伐確認:侵入者 × 1 ]
[ 獲得PT:+5 PT ]
[ 残PT:155 PT ]
```
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残り二名。
もう一名の前衛が叫んだ。
ゴースト・ガーディアンへ斬りかかった。
剣がガーディアンの胴を割るように通り抜けた。
実体がある部分を捉えて、ガーディアンが一歩退いた。
前衛は押し続けながら後退させようとしている。
後衛を守りながら引き上げると判断した。
合理的だ。
だが、引き返す先には爆炎魔法陣の通過が待っている。
今の消耗具合で再度あれを通れるかどうかは、見ていればわかる。
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影狼が前衛の足元に走り込んだ。
中傷の体で低く這う動きだ。
前衛が踏もうとした。
影狼が避けた。
サンダーウルフが前衛の側面から雷を放った。
前衛が弾かれた。
床に転がった。
起き上がろうとした。
ガーディアンが上から圧を落とした。
動かなくなった。
```
[ 討伐確認:侵入者 × 1 ]
[ 獲得PT:+5 PT ]
[ 残PT:160 PT ]
```
---
後衛が後退していた。
感知に映る反応が通路を戻っていく。
最初の部屋を抜けた。
追えるモンスターがいない。
ガーディアンは疲労が上乗りされた。
影狼の傷が悪化した。
アラクニアとサンダーウルフも消耗が増えている。
追撃に出せる戦力はない。
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後衛の反応が入口を抜けた。
感知の外に消えた。
一名が生き残った。
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損耗を確認した。
ゴースト・ガーディアン:疲労が増した。
影狼:脇腹の傷が悪化した。中傷から重傷に近い。
アラクニア:現状維持。糸の再生が遅れる。
サンダーウルフ:疲弊が増した。
今回は1Fで止めた。
だが、2Fに何もない状態で、
後衛が引き返さず奥へ進んでいれば、
核の間まで一直線だった。
今回は引いてくれた。
次は引かない可能性がある。
---
問題は生存者が出たことだ。
後衛はギルドに戻る。
報告の内容は見当がつく。
仲間二名が内部で死亡。
自身は重傷で撤退。
罠と複数のモンスターを確認した。
これで討伐依頼が立つ。
あるいは、大規模な探索隊が編成される。
次に来るものは、規模が上がる。
そして、時間はあまりない。
---
```
[ 自動計上:維持費 ]
[ 影狼 × 1 :-1 PT ]
[ アラクニア × 1 :-1 PT ]
[ サンダーウルフ × 1 :-1 PT ]
[ ゴースト・ガーディアン × 1:-3 PT ]
[ 残PT:154 PT ]
```
夜、狩猟隊の報告が来た。
```
[ 外部討伐確認:野生獣 × 19 ]
[ 外部討伐確認:魔物 × 8 ]
[ 獲得PT:+41 PT ]
[ 残PT:195 PT ]
```
---
数字を確認した。
195PT。
今夜から2Fの建設と配置に入れる。
通路を張る。
アンデッド・ウォーロードを配置する。
骸骨剣士を左右に展開する。
次が来るより前に、形にする。
■ あとがき — 第21章 ダンジョンレポート
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【ダンジョン構造(変更点)】
変更なし(建設・拡張なし)
【経路】
<メインルート>
1F
入口
↓ 通路(5m)
1F-1(10m×10m)
↓ 通路(5m)/通路内:連鎖爆炎魔法陣
1F-2(10m×10m)→ 1F-5(10m×10m・空室)
↓ 通路(5m)
1F-3(10m×10m)
↓
1F-4(10m×10m)
↓ 通路(15m・2F接続)
2F
2F-1(50m×50m)
↓
2F-2(10m×10m)← ダンジョン核
↓ 隠し扉
DM生活区画(3m×4m)
【配置詳細】
◇1F-1:暗闘罠×2 / 落とし穴×2 / 毒霧散布罠×1
◇通路(1F-1⇔1F-2):連鎖爆炎魔法陣
◇1F-2:影狼×1(脇腹裂傷・重傷に近い中傷)/ アラクニア×1(糸再生遅延・軽傷)
サンダーウルフ×1(疲弊増・休息中)/ ゴースト・ガーディアン×1(疲労増)
◇1F-3:コアバット×1(右翼重傷・療養中・非戦闘)
◇1F-4:未設置(空)
◇1F-5:空室
◇2F-1:未設置(空)
◇2F-2:ダンジョン核
◇DM生活区画(2F-2 隣・隠し扉裏):各設備あり
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【戦力配置(変更点)】
影狼 :脇腹裂傷(中傷)→ 重傷に近い中傷
ゴースト・ガーディアン:軽疲労 → 疲労増
サンダーウルフ :疲弊(休息中)→ 疲弊増
アラクニア :軽傷・糸再生中 → 糸再生遅延(状態悪化)
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【PT収支】
章開始時PT :150 PT
Cランク×1 殺害 :+5 PT
Cランク×1 殺害 :+5 PT
維持費(1日分) :-6 PT
狩猟隊収益 :+41 PT
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章終了時PT:195 PT
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【重要イベント】
■ 「ダンジョン即時帰宅」初使用
宿の椅子 → DM生活区画へ即時転送
「帰宅前地点へ戻る」の動作は未確認(荷物を宿に置いたまま転送)
■ 2F設計作業(中断)
アンデッド・ウォーロードを主軸とする方針を決定
骸骨剣士3体を左右迂回路に展開、ウォーロードが中央後方で指揮する設計
具体的な通路建設は次章以降
■ Cランク3名組が侵入
前衛×2名・後衛(魔法使い系)×1名
罠 → 連鎖爆炎魔法陣 → 1F-2でのモンスター戦
前衛2名を討伐、後衛1名が撤退
■ 討伐数:11 → 13
■ 生存者の撤退
後衛(魔法使い系・女性)がギルドへ報告する見込み
→ 討伐依頼立件 or 大規模探索隊編成が予想される
→ 次の侵入は規模・強度ともに上がる
■ 2Fの設計・配置は「今夜から実行」で章を締め
アンデッド・ウォーロード + 骸骨剣士×3 + 通路建設が次章の主軸




