第20章 2F
朝、窓の外が白み始める前に起き上がった。
昨夜の数字を確認した。
最奥の部屋の南壁から斜め下に15m掘り下げれば、
2Fへ接続できる。
コストは15PT。
その先に大部屋を作る。
50m×50m、コスト150PT。
合計165PT。
手持ちは300PT。
差し引いて135が残る。
今夜、実行できる。
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問題は構造だ。
空間を作るだけでは意味がない。
何を置き、侵入者をどう動かすか。
それが決まって初めて、建設の順序が組める。
昨夜絞った候補がある。
2Fの核として据えるなら、
アンデッド・ウォーロードかシャドウ・ドラゴンが最適だ。
どちらも50m×50m以上の空間が必要で、
単体の戦闘力に加えて周囲への指揮機能を持つ。
2Fに大部屋を先に作れば、配置制限が解ける。
どちらを使うかは、通路設計が固まってから判断できる。
今は構造を作ることが先だ。
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ギルドへ向かった。
依頼を受けるつもりは半分だった。
もう半分は、情報だ。
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ロビーに入った。
朝の時間帯は冒険者が多い。
依頼板の前に数人が並び、
奥のテーブルでは地図を広げているグループがいる。
掲示欄の端に目が止まった。
白地に赤い縁取りの紙。
「危険区域指定 — ラグナル山中・東南東方面」
「当該区域内の未確認ダンジョンへの、
単独・小規模侵入を禁止する」
「Cランク以上のパーティを、
三名以上でギルドに登録した場合のみ侵入を許可する」
「詳細はカウンターまで」
日付は三日前だった。
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その場を離れ、テーブルの列に沿って歩いた。
柱の近くで立ち止まった。
二人が話していた。
地図は出ていない。
声を落としているが、距離があれば届く程度だ。
「Bランクの捜索も戻らなかった。
それで本部が動いた」
「討伐依頼は立ってないんだろ?」
「まだだ。
本部が判断を保留している間は、
自由探索扱いになる。
危険指定の条件さえ満たせば入れる」
「Cランク、三人以上か」
「俺たちは通る。
あと一人だ」
「討伐はさすがに無理だろ。
Bランクが戻らなかったんだぞ」
「討伐じゃなくていい。
未踏ダンジョンは構造を報告するだけで
ギルドから情報提供の報酬が出る。
層数、部屋の数、モンスターの種類。
見て帰るだけでいい」
「手前だけ確認して戻れば十分ってことか」
「そうだ。
深追いしなければCランクでも通れる。
おいしい話だろ」
「……誰に声をかける?」
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聞くべきものは聞こえた。
依頼板へ移った。
昨日と同じ薬草採取の紙があった。
受けた。
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採取は昨日の道順で終えた。
マインドフレイヤーが先行し、
群生地を記憶していた。
三十分かからなかった。
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ギルドへ戻り、窓口に向かった。
受領を確認して、銀貨二枚が手に渡った。
軽く頭を下げて、窓口を離れた。
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宿に戻る道で、整理した。
危険区域指定は三日前に出た。
討伐依頼はまだない。
次に来るのは、自由探索として動く
Cランク三人以上のパーティだ。
規模は、これまでより大きくなる。
配置済みのモンスターは負傷中が多い。
連鎖爆炎魔法陣があるが、
Cランクが複数で来た場合、
1Fで全員を仕留める保証はない。
2Fが必要だ。
逃げ込んだ者を仕留める場所として。
あるいは、そこまで引き込んで終わらせる場所として。
急ぐ理由があった。
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夕刻、一階の食堂で飯を食った。
黒パンとシチュー。
安くて量がある。
それ以上でも以下でもない。
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部屋に戻り、核と接続した。
ダンジョンの構造を頭に展開した。
入口から続く二つの部屋。
その奥で道が分かれる。
一方は行き止まりの枝道で、核と生活区画がある。
もう一方は奥の二部屋を経て、
今夜作る2Fへの通路まで続く。
問題があった。
核の位置だ。
侵入者が入口から進めば、
分岐で枝道に入るだけで核に辿り着ける。
奥の部屋二つを経由して2Fへ向かうより、はるかに前に、だ。
これは不味い。
ゲームで言えば、ボスを中盤に置いた状態だ。
核は最奥でなければならない。
2Fを作り、その最奥に核専用の部屋を設ける。
核はそこへ移す。
---
まず通路を指定した。
最奥の部屋の南壁から、斜め下へ15m。
```
[ 建設開始:通路(2F接続) ]
[ 1F-4 南壁 → 2F(深度15m) ]
[ 消費PT:-15 PT ]
[ 残PT:285 PT ]
```
完了が来た。
次に2Fの大部屋を指定した。
通路の先、2Fの最初の空間として。
50m×50m。
```
[ 建設開始:2F-1 ]
[ 2F-1 — 50m × 50m ]
[ 消費PT:-150 PT ]
[ 残PT:135 PT ]
```
完了通知が来た。
```
[ 建設完了:2F-1 ]
[ 2F-1 — 50m × 50m / 天井20m ]
```
直後。
```
[ 配置制限解除 ]
[ アンデッド・ウォーロード — 配置可能 ]
[ シャドウ・ドラゴン — 配置可能 ]
```
続けて通知が来た。
```
[ 称号解除:初級ダンジョンマスター ]
[ 複数階層のダンジョンを保有 ]
```
```
[ ダンジョン帰宅 — 解放 ]
[ 核との接続を利用し、ダンジョン内部へ即時転送できる ]
[ 転送後は出発前の地点への帰還も可能 ]
```
初めての通知だった。
管理の話ではなく、
移動そのものに関わる機能だ。
距離の問題はすでに解決している、と思っていた。
命令は遠くからでも通る。建設も動かせる。
それで十分だと判断していた。
だがこれは別の話だ。
核との接続を経由して、
物理的にダンジョンへ移動できる。
そして出発地点に戻ることもできる。
ダスクホールにいながら、
必要になれば即座にダンジョンへ入れる。
確認してまた戻ることもできる。
有用だ。
使いどころを決めておく必要があった。
---
続けて、大部屋の奥に小部屋を建設した。
核を置くための部屋だ。
```
[ 建設開始:2F-2 ]
[ 2F-2 — 10m × 10m ]
[ 消費PT:-20 PT ]
[ 残PT:115 PT ]
```
完了通知が来た。
核の移動を命じた。
```
[ 核移動 ]
[ 移動先:2F-2 ]
[ 旧核室(1F-5):空室に転換 ]
```
続けてDM生活区画の移動を命じた。
小部屋の隣、隠し扉の先へ。
感知が変わった。
核の位置が、1Fから2Fの最奥へ移っている。
分岐の先は、ただの空き部屋になった。
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構造を確認した。
入口から最初の部屋へ、
次の部屋を経て奥へ進み、
2Fへ降りる通路の手前から下層へ。
大部屋を抜けた先に核の置かれた小部屋がある。
その奥に生活区画。
これが正しい順序だ。
---
次に、配置の問題を考えた。
今の手持ちは115PT。
維持費と狩猟隊が動けば、今夜のうちに増える。
ただし、配置を急ぐ必要はない。
問題は何を置くかだ。
大部屋の守護として据えるなら、
アンデッド・ウォーロードかシャドウ・ドラゴンだ。
ウォーロードは指揮型だ。
周囲の不死系モンスターへの命令権限を持ち、
部隊として動かせる。
手持ちには骸骨剣士とネクロマンサーがいる。
組み合わせれば、
侵入者を多方向から圧迫する波状攻撃が組める。
シャドウ・ドラゴンは単体火力型だ。
天井20mの大部屋ならば飛び回れる。
接近前に削り、接触で仕留める。
指揮機能も一定数持つが、
ウォーロードには及ばない。
どちらが有効かは、
大部屋の周囲にどう通路を張るかによる。
侵入者を分散させて個別撃破する設計なら、
ウォーロードが活きる。
大部屋に直接流れ込む形にするなら、
ドラゴンのほうが威圧として機能する。
通路設計が決まるまで、配置は保留でいい。
---
```
[ 自動計上:維持費 ]
[ 影狼 × 1 :-1 PT ]
[ アラクニア × 1 :-1 PT ]
[ サンダーウルフ × 1 :-1 PT ]
[ ゴースト・ガーディアン × 1:-3 PT ]
[ 残PT:109 PT ]
```
続いて狩猟隊の報告が来た。
```
[ 外部討伐確認:野生獣 × 19 ]
[ 外部討伐確認:魔物 × 8 ]
[ 獲得PT:+41 ]
[ 残PT:150 PT ]
```
---
目を閉じた。
次にやることは決まっている。
2Fの通路設計を組む。
流れを決めたら、配置の選定に入る。
Cランクのパーティが来るより前に、
形にする。
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【ダンジョン構造(変更点)】
■ 2F接続通路 建設
1F-4 南壁 → 2F(深度15m・斜め下)
コスト:-15 PT
■ 2F-1 建設
50m×50m / 天井20m
コスト:-150 PT
→ 配置制限解除:アンデッド・ウォーロード / シャドウ・ドラゴン
→ 称号解除:初級ダンジョンマスター
付与スキル:ダンジョン即時帰宅 / 帰宅前地点へ戻る
■ 2F-2 建設
10m×10m / 2F-1 最奥に接続
コスト:-20 PT
■ 核の移動
1F-5 → 2F-2
PT消費:なし
→ 1F-5:空室に転換
■ DM生活区画の移動
旧位置(1F-5 隣)→ 2F-2 隣(隠し扉の裏)
PT消費:なし(自由移動設定)
【経路】
<メインルート>
1F
入口
↓ 通路(5m)
1F-1(10m×10m)
↓ 通路(5m)/通路内:連鎖爆炎魔法陣
1F-2(10m×10m)-> 1F-5(10m×10m・空室)
↓ 通路(5m)
1F-3(10m×10m)
↓
1F-4(10m×10m)
↓ 通路(15m・2F接続)
2F
2F-1(50m×50m)
↓
2F-2(10m×10m)← ダンジョン核
↓ 隠し扉
DM生活区画(3m×4m)
【配置詳細】
◇1F-1:暗闘罠×2 / 落とし穴×2 / 毒霧散布罠×1
◇通路(1F-1⇔1F-2):連鎖爆炎魔法陣
◇1F-2:影狼×1(脇腹裂傷・中傷)/ アラクニア×1(糸再生中・軽傷)
サンダーウルフ×1(疲弊・休息中)/ ゴースト・ガーディアン×1(守護・軽疲労)
◇1F-3:コアバット×1(療養中)
◇1F-4:未設置(空)
◇1F-5:空室
◇2F-1:未設置(空)
◇2F-2:ダンジョン核
◇DM生活区画(2F-2 隣・隠し扉裏):排泄処理スロット / 洗面台(温水)/ 石製寝台(寝具セット有)
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【戦力配置(変更点)】
変更なし(既存配置を維持)
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【PT収支】
章開始時PT :300 PT
2F接続通路(15m):-15 PT
2F-1建設 :-150 PT
2F-2建設 :-20 PT
維持費(1日分) :-6 PT
狩猟隊収益 :+41 PT
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章終了時PT:150 PT




