第11章 設置
夜明け直後に目が覚めた。
寝台から起き上がると、
核の通知が壁に浮かんでいた。
```
[ 自動計上:維持費 ]
[ 影狼 × 1:-1 PT ]
[ アラクニア × 1:-1 PT ]
[ サンダーウルフ × 1:-1 PT ]
[ 残PT:16 ]
```
16PT。
連鎖爆炎魔法陣のコストは10PT——
差し引き6PTが手元に残る。
今日の昼か午後に4人組が来る。
設置を後回しにする理由はない。
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DM区画を出た。
前室を通ると、
影狼が顔を上げた。
アラクニアは天井から1本の糸を伸ばしたまま静止。
サンダーウルフは目だけを動かした。
「今日、来る」
告げた。
意味を理解しているかはわからないが、
核を通じて「警戒状態」に切り替える命令を
3体に送った。
影狼の毛がわずかに逆立った。
それだけで十分だ。
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通路へ出た。
コアバットが天井の岩の凹みに張り付いていた。
ボーンスカウトは壁際に立ったまま。
昨夜と変わらない定位置だ。
「そのまま待機」
通路の中央を進み、
入口の間との境目で立ち止まった。
ここに設置する。
通路の入口側——
後衛が通路に踏み込んだ瞬間に爆発が走るよう、
起動点を奥側に3点並べる。
前衛が炎に足を止めた隙に
ボーンスカウトと影狼が詰める。
前室からサンダーウルフが雷撃で追い打ちをかける。
4人全員が通路に入れば理想だが、
術者が通路手前で足を止めるケースもある。
その場合は前衛3枚を削ることを優先する。
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核のメニューを開いた。
設置インターフェースが展開した。
床の設置点を3箇所指定する——
間隔1m、直線配置。
起動半径を2mに設定。
連鎖距離を最大の3m間隔に調整した。
問題ない。
```
[ 設置:連鎖爆炎魔法陣(通路・入口の間側)]
[ 配置:3点連鎖(間隔1m・起動半径2m)]
[ 消費:-10 PT ]
[ 残PT:6 ]
```
床に光が走った。
目には見えない——
核の感知を通せば薄く赤い線が浮かんで見えるが、
実際の床面には何も変わっていない。
手を出して感知に触れると、
3点の起動点が稜線のように並んでいた。
設置完了。
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ボーンスカウトを呼んだ。
「ここを踏むな。通る必要があるなら壁側を一歩ずらせ」
直剣を提げた骸骨が、
起動点の位置を確認するように足元を見た。
核のコマンドで座標データを送った。
ボーンスカウトの目の光が一瞬強くなった——
受信完了の反応だ。
コアバットにも同じ座標を共有した。
空中から降りてくる経路に制限はないが、
念のため起動点の上空は通らないよう設定した。
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設置作業が終わったのは、
日が完全に上がってからだった。
残PT 6。
これ以上の追加設置はない——
今ある配置で戦う。
入口の間の暗闘罠が2つ、
落とし穴が2つ、
毒霧散布罠が1つ、
ダークスライムが1体。
通路に連鎖爆炎魔法陣。
コアバット、ボーンスカウト、
前室に影狼、アラクニア、サンダーウルフ。
足りないものはある。
だがあるものを使う。
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DM区画に戻り、
保管中の装備品を確認した。
Cランク捜索隊から回収したものが残っている——
鉄製ショートソード2本、軽革鎧3着、
木芯鉄板の円盾、短剣、投げナイフ。
それとガチャで出た腐蝕の短剣。
手足があるのはボーンスカウトだけだ。
影狼もアラクニアもサンダーウルフも、
鎧を着せる体の形をしていない。
選択肢は単純だった。
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ボーンスカウトを前室まで呼んだ。
「装備を換える」
核のコマンドで待機を解除した。
骸骨が通路から前室へ移動してきた。
腰の粗鉄の直剣を外させた。
代わりに鉄製ショートソードを渡した——
Cランクが実際に使っていた品だ。
重心、長さ、刃の厚み、どこを取っても格上だ。
```
[ 装備変更:ボーンスカウト ]
[ 主武装:粗鉄の直剣〔粗製〕→ 鉄製ショートソード〔標準〕]
[ ATK:+7(8 → 15)]
```
次に軽革鎧を持ってきた。
ボーンスカウトの胴に当てると、
人間用のサイズに対して骸骨の体は細い。
だが核の形成機能で骨格に直接固定できる——
革鎧は多少緩くても、胸部と背面を覆えればいい。
```
[ 装備変更:ボーンスカウト ]
[ 防具:軽革鎧〔標準〕装備 ]
[ DEF:+8 ]
```
最後に木芯鉄板の円盾を左腕に固定した。
```
[ 装備変更:ボーンスカウト ]
[ 盾:木芯鉄板の円盾〔粗製〕装備 ]
[ DEF:+6 ]
```
Bランクが相手なら、これでも一撃は受けられる。
2撃目は保証できないが——
1撃分稼げれば、そこで連携が成立する。
「戻れ。定位置につけ」
ボーンスカウトは一度頭を下げて通路へ戻った。
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次は自分の番だった。
棚の上の綿の外套を取った。
転移してきた日から着続けているスウェットの上に羽織る——
薄い布地だが、何もないよりはましだ。
```
[ 装備:綿の外套☆ ]
[ 効果:軽微な物理衝撃を軽減 ]
```
腐蝕の短剣を手に取った。
ATK+9。命中するたびにDEFを2ずつ削る——
相手が鎧を着ていれば着ているほど、
重ねるほど効果が増す。
重装前衛に刺さる設計だ。
前線には出ない。
だが腰に下げておく。
使わなくて済めばそれでいい。
草露薬を2本、外套のポケットに入れた。
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核の感知を広げた。
ダンジョン周辺250mに変化はない。
まだ来ていない。
昼か午後——
あと5〜8時間はある計算だ。
感知の首飾りがわずかに振動した。
山肌の遠い動きを拾っている——
動物の類で、侵入者ではない。
凪は壁に背をもたせかけて
目を閉じた。
来るまで待つだけだ。
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昼前になった頃、
首飾りの感知が変わった。
250mの境界に、
人型の反応が4つ入った。
```
[ 侵入者感知:反応あり ]
[ 侵入体数:4 ]
[ 推定種別:人型(武装)]
[ 脅威度判定:高(推定Bランク帯)]
```
想定通り。
昼到着だ。
凪は立ち上がり、
前室に向かった。
「来た」
影狼が低く身を伏せた。
アラクニアが糸を巻いて戦闘姿勢に入った。
サンダーウルフが足の爪を床に立てた——
静電気が微かに散った。
「ダンジョン内からは動かすな。
命令するまで待機」
3体は動かない。
核の感知を入口方向に絞った。
4人は既に山道を登りきっていた。
先頭の重装が岩壁の亀裂を認識した——
立ち止まり、後ろに何か伝えている。
会話は拾えない。
距離が遠い。
少しずつ縮まっていく。
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先頭が亀裂に手をかけた。
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【ダンジョン構造(変更点)】
変更なし
【経路】
入口(山の斜面・岩壁の亀裂)
↓ 通路(5m) ※コアバット天井待機 / ボーンスカウト壁際待機
入口の間(10m×10m)
↓ 通路(5m) ※連鎖爆炎魔法陣(3点連鎖・入口の間側)
前室(10m×10m)
↓(分岐①)
ダンジョンマスターの間(10m×10m)
↓(隠し扉)
DM生活区画(3m×4m)
↓(分岐② 通路5m)
空き部屋(10m×10m) ※現在未設置
【配置詳細】
◇入口の間:暗闘罠×2 / 落とし穴×2(中央ライン)/ 毒霧散布罠×1 / ダークスライム×1
◇通路(入口の間⇔前室):コアバット×1(天井待機)/ ボーンスカウト×1(壁際)/ 連鎖爆炎魔法陣(3点連鎖)
◇前室:影狼×1(ステルス)/ アラクニア×1(天井)/ サンダーウルフ×1(床・待機)
◇ダンジョンマスターの間:ダンジョン核
◇DM生活区画:排泄処理スロット / 洗面台(温水)/ 石製寝台(寝具セット)
◇空き部屋:未設置(空)
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【戦力配置(変更点)】
ボーンスカウト 装備強化(第11章)
主武装:粗鉄の直剣〔粗製〕ATK+8 → 鉄製ショートソード〔標準〕ATK+12
盾:木芯鉄板の円盾〔粗製〕追加(DEF+6)
防具:軽革鎧〔標準〕追加(DEF+8)
凪 装備追加(第11章)
外套:綿の外套☆装備(軽微な物理衝撃を軽減)
武器:腐蝕の短剣☆☆携帯(ATK+9・DEF累積-2、緊急用)
回復:草露薬×2 ポーチ収納
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【PT収支】
第11章開始時PT 19 PT
維持費(影狼・アラクニア・サンダーウルフ × 1日)-3 PT
連鎖爆炎魔法陣設置 -10 PT
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第11章終了時PT:6 PT
※装備の付け替え・戦利品流用はPT消費なし
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