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深淵の覇主  作者: aaaa


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11/21

第10章 夜狩り

朝、通知が来た。


```

[ 自動計上:維持費 ]

[ 影狼 × 1:-1 PT ]

[ アラクニア × 1:-1 PT ]

[ サンダーウルフ × 1:-1 PT ]

[ 残PT:5 ]

```


5PT。


3体体制になって最初の朝だった。

昨日まで2PT/日だったものが、3PT/日に変わった。

この差が積み重なる——5日で15PT。10日で30PT。


狩りを再開する。

今夜から。


---


日中は設備の配置案を考えることにした。


ガチャで手に入った設備の一覧を頭の中で並べる。


因果の罠——使い所はある。

だが一度限りの消耗品だ。

使う相手と場所は慎重に選ぶ必要がある。


連鎖爆炎魔法陣——

3連鎖まで対応できるが、

配置の設計次第で威力が跳ね上がる。

通路に仕込むか、入口の間に置くか——

複数の設置点を経路に沿って組んでやれば、

単発の爆発より確実に削れる。


感電床、撒き菱、滑走床——

組み合わせれば速度を殺せる。

前室の手前に並べるのが素直だが、

あまり詰め込みすぎると逆に見え透いてしまう。


凪は今は決定しなかった。

2F解放後の構造が見えてからのほうが、

設置場所の最適解も変わる。


---


ふと、気づいた。


外の状況を何も把握していない。


感知の首飾りで周辺250mは読める。

核の感知でダンジョン周辺の動きもわかる。

だが——ダスクホールで今何が起きているかを

凪は一切知らない。


Cランクの捜索隊が消えてから、

ギルドが黙っているとは考えにくかった。

次の手を打っているはずだ——

どのランクの冒険者が、いつ動くのかを

把握しておく必要がある。


通路で天井待機しているコアバットを呼び出した。


暗闇の中から羽音とともに降りてきた。

手のひら大の黒い体。

目が赤く光っている——通常のグロットバットより

一回り大きく、動きに無駄がない。


「行けるか」


コアバットは翼を一度広げた。

肯定と受け取った。


核のメニューから「視界共有」を起動した。


```

[ コアバット:視界共有 — 接続開始 ]

[ リアルタイム映像を核経由で転送 ]

[ 接続中は通路の警戒ポストが一時空席になる ]

```


コアバットをダンジョン入口から解放した。


---


接続した視界は、最初はほぼ真っ暗だった。


コアバットが岩壁の亀裂を抜けると、

昼の光が広がった。

鳥の目線で——いや、もっと低い、

蝙蝠の高度で山肌が流れていく。


視界は広い。

人間の目とは色合いが違う——

輪郭が強調され、遠くまで細部が潰れない。

偵察範囲拡大の効果だ。


コアバットは本能的に日陰を選んで飛んだ。

岩影、樹冠の下、崖の陰——

目立たない経路を自律的に選択している。


ダスクホールへの街道は、

ダンジョンから徒歩で丸1日の距離だ。

コアバットの飛行速度なら

2〜3時間で到達できる計算になる。


凪は視界を切らずに待った。


---


山道が現れた。


人が踏み固めた土の道。

街道の本線ではなく、山に向かう脇道だ——

ダンジョン方向へ延びる枝道。


コアバットが道の上空を低く通った。


4人組が歩いていた。


先頭の男が重厚な胸甲を着けている。

腰に幅広の剣——Dランクが持つ鉄製のものとは

別格の品だとわかった。


2番目は後ろ向きに振り返りながら歩いていた。

何かを確認している——地図か、あるいは

後方の山の形を見ているか。


3番目は女性。

鎧の上から外套を羽織り、

腰に1本、背中に1本の双剣を提げている。


4番目は少し間を空けて歩いていた。

杖——魔法使いか呪術師の類。


4名。

重装前衛、斥候系、双剣使い、後衛術者。

バランスが取れた編成だ。


コアバットが上空を通過する間、

4人のうち誰も空を見なかった。

昼間に飛ぶ蝙蝠を気にする者はいない——

それで十分だ。


---


視界を一時停止した。


この距離でこの装備——

Bランクと見て間違いない。

ギルドが出した捜索依頼を受けた連中だろう。


距離を逆算した。

ダンジョンから街道まで、直線で約18km。

現在地点から残り8〜9km——

今日中に山の麓まで来る。

明朝には、このダンジョンの感知範囲に入る。


コアバットに帰還を指示した。


```

[ コアバット:帰還指示を送信 ]

```


---


凪は視界共有を切った。


4人。Bランク相当。

Cランク3名を始末してから

10日と経っていない——

ギルドの動きは想定より早かった。


あるいは遅すぎたかもしれない。

10日でBランクが動くなら、

最初から備えておくべきだった。


反省しても今は意味がない。

情報が入った——それで十分だ。


整理する。


来るのは明日の昼か午後。

4人組で、編成に死角は少ない。

魔法使いが後衛にいる以上、

通路での一方的な処理は難しくなる。


設備の設置が急務になった。


連鎖爆炎魔法陣——

入口の間か、通路に先行設置する。

遠距離火力を潰してから前衛に当てる順序が正しい。


撒き菱と滑走床の組み合わせで

通路の速度を殺す。


因果の罠は今回は温存する。

使う相手を絞る価値がある。


凪は核のメニューを開いた。


```

[ 設置:連鎖爆炎魔法陣(通路・入口側)]

[ コスト:-10 PT ]

[ 設置:撒き菱(通路・中央)]

[ コスト:-3 PT ]

[ 設置:滑走床(前室手前・通路出口)]

[ コスト:-3 PT ]

[ 残PT:-11 → ※PT不足 ]

```


止まった。


残PT 5。

3つ合わせて16PT——話にならない。


1つだけ選ぶ。


連鎖爆炎魔法陣を優先した。


```

[ 設置:連鎖爆炎魔法陣(通路・入口の間側)]

[ コスト:-10 PT ]

[ 残PT:-5 → ※PT不足(現在PT:5、コスト:10)]

```


また止まった。


5PT足りない。


今夜稼げれば解決する——

設置は明日の朝にするしかない。


4人組が到着するのは明日の昼か午後。

今夜狩りを済ませて、

明朝に設置すれば、まだ間に合う。


時間は十分だ。

ただし、狩りに出て稼ぎが出なければ話にならない。


---


昼を過ぎると、

外の気配が感知の首飾り越しに流れ込んでくる。


装備前は核の感知範囲が

ダンジョン周辺200mほどだった。

今は250mまで届いている——

以前なら素通りで終わっていた山肌の動きが、

輪郭として読み取れるようになった。


午後になって、斜面の中腹に鹿の群れが映った。

4頭、ゆっくりと草を食んでいる。


夜まで動かないだろう——

群れが日没前に移動するようなら追う。

動かなければ今夜の狩り場として使える。


17時、日が傾き始めた頃、

群れは稜線の向こうへ消えた。


追う。


---


凪はダンジョンを出た。


速度の靴の感触を確かめながら斜面を登る。


一歩目から違いがわかった。

踏み込みが軽い——AGI+12という数字が

実際の動作に反映されていた。

走るというより、地面を蹴り出す感覚が

以前より明確だ。


岩場を通るときも躓きにくい。

足裏が路面の凹凸を細かく読み取っている。


感知の首飾りが稜線の向こうに反応した。

3頭——群れが散っている。


距離を測った。

約220m先。


以前なら感知圏外だった位置だ。


---


月明かりを背にして

稜線を越え、斜面を下った。


鹿は岩の影に固まっていた。

速度の靴の接地コントロールを活かして

足音を消したまま詰め寄った。


5m——先頭の鹿が振り向いた。


目が合った瞬間に踏み込んだ。

岩壁へ追い込んで1頭。

散走した残りを即座に追い、

速度差で2頭目を斜面の窪みに詰めた。


```

[ 討伐確認:鹿 × 2 ]

[ PT報酬:+4 PT ]

[ 残PT:9 ]

```


以前なら1頭仕留めた時点で群れを逃していた。

速度の差が出た。


---


2頭を回収して南の尾根へ移動した。


首飾りの感知が広いおかげで

移動中も周辺の気配を拾える——

歩きながら次の狩り場を決められる。


約30分で次の反応を捉えた。


低木の茂みの奥。

二足で動く気配——

いくつかの塊がまとまっている。


近づいて確認した。


ゴブリンだった。


4体。岩陰に火を起こして

何かを炙って食っていた。

この山域にもゴブリンが出るのか——

初めて確認する情報だった。


凪は立ち止まった。


考えた。

危険か——そうでもない。

火を持っているが武器は粗末な石斧が1本、

あとは素手に近い。

4体まとめてなら手間だが、

速度の差が出れば各個撃破できる。


PTが出るかどうかは不明だが——

試す価値はある。


---


火の光を避けて

茂みを迂回した。


背後から1体目。

気づかれる前に仕留めた。


2体目が振り向いた瞬間、

速度の靴で間合いを詰めた。

6秒。


残り2体は逃げた——

が、感知に映っている。

追いやすい方向へ先回りして

まとめて処理した。


```

[ 討伐確認:ゴブリン × 4 ]

[ PT報酬:+8 PT ]

[ 残PT:17 ]

```


8PT。


4体で2PT/体——

鹿や山猪と変わらない単価だが、

4体まとめれば密度が高い。


魔物を外で狩れるなら、

稼ぎの選択肢が増える。


---


日付が近くなった頃、

斜面の下方にもう一つ反応があった。


山猪——1頭。単独。


仕留めるまで10秒かかった。

牙が一度来たが、

半歩退いて空振りさせた。


```

[ 討伐確認:山猪 × 1 ]

[ PT報酬:+2 PT ]

[ 残PT:19 ]

```


---


今夜の収支を頭の中で整理した。


鹿×2、ゴブリン×4、山猪×1——

合計 +14PT。


維持費 3PT を引いても

11PTのプラスだ。

明朝に連鎖爆炎魔法陣(-10PT)を設置しても

残PT 9になる計算だ——

問題ない。


ゴブリンがこの山域にいることがわかった。

定期的に出るなら、

稼ぎの安定した供給源になる。


---


夜明けの少し前にダンジョンへ戻った。


入口の間を通りながら

罠の位置を確認した。

暗闘罠が2つ、落とし穴が2つ——

配置は変わっていない。


通路でボーンスカウトが

直剣を提げたまま壁際に立っていた。


凪が通ると、低く頭を下げた。


「そのままでいい」


前室に入ると、

影狼がわずかに尾を動かした。

アラクニアは天井で静止。

サンダーウルフは床で目を開けたまま待機していた。


三体とも定位置にいる。


---


DM区画に戻った。


収支を整理した。


```

[ 本日のPT収支 ]

[ 維持費(影狼・アラクニア・サンダーウルフ)-3 PT ]

[ 外部討伐(鹿×2・ゴブリン×4・山猪×1)  +14 PT ]

[ 本日差分:+11 PT ]

[ 現在残PT:19 ]

```


19PT。


明朝に連鎖爆炎魔法陣を設置すれば

-10PTで残り9PT——

今日1日で9PT純増になる。


予想より稼げた。

ゴブリンが出たのが大きい。


---


連鎖爆炎魔法陣の設置位置を確認した。


通路の入口側——

後衛術者が通路に入った瞬間に

火線が走るよう起動距離を3mに設定する。


前衛が炎で足を止めた隙に

影狼とボーンスカウトが詰める。

前室のサンダーウルフが雷撃で追い打ちをかける。


4人全員が通路に並べば理想だが、

間隔を空けて進んでくる可能性もある。

最悪、後衛に連鎖が届かなくても

前衛2枚を削れれば前室で処理できる。


---


凪は寝台に横になった。


天井の石を見た。


Bランク4名。

Cランク捜索隊とは練度が違う可能性がある——

想定が外れる場面も出るだろう。


だが今のダンジョンでできることをやる。

それだけだ。


明朝、設置する。

昼前には来る。


目を閉じた。


---


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

【ダンジョン構造(変更点)】


変更なし


【経路】

 入口(山の斜面・岩壁の亀裂)

  ↓ 通路(5m) ※コアバット天井待機 / ボーンスカウト壁際待機

 入口の間(10m×10m)

  ↓ 通路(5m)

 前室(10m×10m)

  ↓(分岐①)

 ダンジョンマスターの間(10m×10m)

  ↓(隠し扉)

 DM生活区画(3m×4m)

  ↓(分岐② 通路5m)

 空き部屋(10m×10m) ※現在未設置


【配置詳細】

◇入口の間:暗闘罠×1 / 落とし穴×2(中央ライン)/ 毒霧散布罠×1 / ダークスライム×1(予備・再配置済み)

◇通路(入口の間⇔前室):コアバット×1(天井待機)/ ボーンスカウト×1(壁際・粗鉄の直剣〔粗製〕装備)

◇前室:影狼×1(ステルス)/ アラクニア×1(天井)/ サンダーウルフ×1(床・待機)

◇ダンジョンマスターの間:ダンジョン核

◇DM生活区画:排泄処理スロット / 洗面台(温水)/ 石製寝台(寝具セット)

◇空き部屋:未設置(空) ※ゴースト・ガーディアン配置候補


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

【戦力配置(変更点)】


変更なし


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

【PT収支】


 第10章開始時PT              8 PT

 維持費(影狼・アラクニア・サンダーウルフ × 1日)-3 PT

 外部討伐(鹿×2・ゴブリン×4・山猪×1) +14 PT

 ──────────────────────────

 第10章終了時PT:19 PT


※外部討伐単価:鹿 +2PT、山猪 +2PT、ゴブリン +2PT/体

※ゴブリンがこの山域に生息することを初確認(定期的な稼ぎ源として期待)


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

【コアバット偵察情報】


- ダスクホールからの街道上にBランク相当4人組を確認

- 編成:重装前衛 / 斥候系 / 双剣使い / 後衛術者

- 現在地:ダンジョンから残り8〜9km地点

- 到着予測:翌日の昼〜午後(明日)

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