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第2話:伝承のはじまり

挿絵(By みてみん)

「……とっても、美味しいです」


俺は公園のベンチに腰掛けて、施しを受けたスープを飲んでいる。

胃の底にじわっ…と、温かいが広がっていく感じがする。


挿絵(By みてみん)


『おう』


隣で猫とじゃれ合いながら、

赤髪のメイドさんが短く返事をする。


猫はバロンと言うらしい。


『……さて』


赤髪のメイドさんがコチラに視線を向ける。


『食い終わったなら行くぞ』


「え…行くって。何処に」


ハッとして、自分の置かれている状況を分析する。

もしかして、

不審者として警察に連れていかれるのか…?


「あの、警察だけは…」


威勢よく家を飛び出してきたのに、

上京して初日で、

親を呼び出して地元に連れ戻されるのは正直、格好が悪すぎる…。


『…ぁ?』


赤髪のメイドさんが眉をひそめる。


『なんだお前。訳ありか?』


「まあ…、ちょっと…。」


ふぅん…。と赤髪のメイドは俺のことをジロジロと見た後

ため息をついて、言い捨てた。


『…まあ、そういう事なら深くは聞かねえよ。』


「ど、どうも…。」


『ま…、何はともあれ』


そう言いながら、

赤髪のメイドさんは公園のベンチから立った。


『あたしはそろそろ戻らねぇといけないんだ。

もう一人、腹を空かせていまにも死にそうになってるやつがいるんでな』


「あ―――」


赤髪のメイド…、メイドだ。つまり飲食店。

このスープも、きっとお店の残り物かなんかだろう。


「ま―――待ってください!」


『……ぁ?』


赤髪のメイドさんは少しイラっとした感じで、

俺の方に首をかしげながら返事をした。


『あのなぁ。あたしはお前にこれ以上かまって―――』


赤髪のメイドさんはそれ以上言葉を続けなかった。

俺は深く、頭を下げていた。


「ありがとうございました…!とても美味しかったです…!!」


『…おう。口に合ったようで、よかったよ。そんじゃな』


「それで…、あの!!

良ければ俺をあなたのお店で雇ってもらえませんでしょうか…っ!!」


『…………………………はぁ?』


―――

――


数分の沈黙が続いた。

その間、俺は、目をつむり、頭を下げ続けていた。


「お願いします!! 俺! いま行くところなくて! 仕事もお金も無くて! なので―――お願いします!!」


『あのなぁ…お前そんないきなり…』


一生懸命、頭を下げ続けた。

たぶん、一生分、頭を下げた。


「力仕事でも何でもします…! おね―――」


俺が言い終わるまえに、赤髪のメイドさんが俺の言葉を制止した。


『っあぁもう! わーった! わかったようるせえなぁ!』


赤髪のメイドさんは深い溜息をついて、

頭を掻きながら、俺に言った。


『ったく急いでるって言ってんだろうが…。ここでうだうだ言ってても仕方ねぇ…」


赤髪のメイドさんは、

一呼吸おいてから、俺に言った。


『……ついてこい。案内してやる。うちの店、「喫茶 Loveらぶ Loreろあ」に』


「…! 喫茶、らぶろあ」


喫茶店…だったのか。

…ああ。だからメイドなのか…?


『言っとくが、店には連れて行ってやる。ただ、

お前を雇うかどうか決めるのはあたしじゃねえ。決めんのはオーナーだ』


「オーナーさん…。わかりました。」


俺は萎縮しながら、

赤髪のメイドさんの後をついて行った。


―――

――


ガチャリと音を立てての裏手のドアが開いた。


『―――ただいま。すまーん。雪華ぁー、いま戻ったー』


ここが「喫茶 Loveらぶ Loreろあ」か…。

年季の入った木造のお店だった。

俺は看板を一瞬だけ視界に入れて、店の中へと足を踏み入れた。


すると、ほどなくして、うめき声のようなものを発しながら、

ふらふらとした足取りで、黒い影が店の奥から近づいてくるのがわかった。


『さっちゃぁああん…。おそいよぉぉお…。なにしてたのぉおおお』


『…すまん。予定外の出来事があってな、遅くなった。』


…予定外。って

完全に俺のことだよな…。


『もうお腹空き過ぎて胃液が…うっぷ』


『あぁ、ごめんな。すぐ作るからもうちょい待っててくれ』


『うぇえええん。なるべくはやくしてねぇえええん……』


へいへい。

と赤髪のメイドはそそくさと、おそらくキッチンと思われる方向に向かっていった。


…赤髪の次は青髪の少女が現れた。

昨今の都会の若者は髪の毛を染めるのが流行りなのだろうか…。


「・・・・。」


『・・・・。』


青髪の少女と目が合った。

青髪の子は一瞬 えっ!? という明らかに困惑の顔をしたあと、

厨房へと消えた赤髪メイドさんの方を見て、また、俺の方を見てと

交互に見比べた後、考え込んでしまった。


『―――ぁあ、すまん雪華。言うの忘れてた』


『さっちゃん』


『…ぉん?』


『わたし、霊能力に目覚めたかも…。しかもいま、突然』


挿絵(By みてみん)


青髪の子は

困惑しながらも、自身に芽生えたであろう能力のことを

まっすぐに、俺のことを見据えながら、力強く言い放った。


……熟考した結果がそれでいいのか?


『……そうか』


『あのね。さっちゃんの後ろに、男の人の幽霊が見える。…しかも薄汚れた感じの。』


『そうか』


『たぶん…貧乏神かも。見るからに倖薄そうな感じだし…。薄汚れてるし…』


やめろやめろ。神を愚弄するな。

仮に、俺が万が一本当に神様だったらどうするつもりなんだ…?


「・・・・。」


え。

今の俺ってそんなにひどい恰好なの…?


「なんか…、すみません。」


俺が喋ったとたん、

青髪がビクッとして目を見開いた。


『ささ、ささささっちゃんっ!!』


『…おう。どした。』


『貧乏神様が! 喋ったよ!!』


『……そうか』


『悔恨の念を述べてるよ…。貧乏神でも自責の念に駆られることってあるんだね…。』


赤髪のメイドさんは頭を掻きながら、

青髪の子にため息交じりで答えた。


『…雪華。ファビュラスな能力に目覚めているとこ申し訳ないが、後ろのコイツはただの人間だ。』


その言葉を聞いて、

再び青髪の子は驚きと困惑の色を含んだ顔をしながら、固まってしまった。


「ど、どうも…。」

■あとがき

毎週日曜20時頃に更新予定です。

よろしければブックマークなどしていただけますと励みになります。

※「らぶろあ(Love Lore)」本編をRPGツクールMZで制作中です。

※イラストは「AI一部利用作品(Stable Diffusion)」となります。


■Twitter

毎日22時にキャラのイラストを投稿しています。

https://x.com/yz_lovelore

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