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らぶろあ ー君とはじめる愛(love)の伝承(lore)ー  作者: Yz
第一章 せっかりょうらん(上)
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第22話:再会

挿絵(By みてみん)

 一閃。

 白鞘の長く美しい刀身が空を駆けた。


 入る。

 誰から見ても、明々白々と言ってもいいほどに、疑いようもないほどに、それは確定された未来だった。


 ……しかし。


「「「なっ……!?」」」


 刀身は、確かにヘビの体の胴体を真っ二つに通した。

 それなのに、触れるのは空気のみで、ついには物体と呼べるものを斬ることはなかった。


 ヘビがニヤリと笑う。

 そして間髪入れずに、音速のムチを横一線に薙ぎ払い、俺達との間合いを引き剝がしにかかった。


 俺は如月さんを抱きかかえたまま、バックステップで距離をとる。

 しかし、反対側に居た絢瀬さんはそのままその場に取り残されてしまった。


 ヘビが絢瀬さんの方に向き直る。


「絢瀬……さん――!!」


 俺は右腕の痛みに目を歪ませながら、着地と同時、絢瀬さんに視点を合わせる。

 ヘビは再び右腕を高く振り上げている。


 絢瀬さんは『無念』とぽつりと漏らすと、静かに目を閉じた。


 しかし――。

 振り上げられた右腕は、いつまで待っても、振り下ろされることはなかった。



「……まったく。リミテッドのボクが時間切れを宣言されるとは、ね」



 ヘビの右腕はもうこの世界から消失していた。

 いや、右手だけじゃない。胴体部分も足も、腕も、顔に至るまで消えかかっていた。


「まあいいや。もうすぐ終わるんだ。すべてが。何もかも」


「待てや――クソ野郎が……ぁあ」


 如月さんが軋む体をおして立ち上がろうとする。

 痛い痛い。俺に力入ってるからソレ……。


「まあ、少しは楽しめたよ。じゃあね、おチビちゃん」


 ヘビは如月さんをあざ笑いながら、次の瞬間、目の前から消失した。


「柚月さんの意識から消えたのか……」


「……クソが」


 如月さんと、絢瀬さんは苦虫を噛んだ顔をしていた。


――ズキン


「ふっ―――ぅ!!」


 危険分子が去ったことで、解かれた緊張感により、思い出したかのように無い右腕が痛み出した。

 いや、今度は痛いと同時に痒い。掻きたい。掻きむしりたい……っ!!


 俺はまた全身に力を込めて、また痛みのピークが過ぎるのをひたすら耐えるしかなかった。


「……いてぇよ。孝一」


 当然、ある方の左腕で抱いている如月さんにも、指先から力がこもってしまう。


「すみません、でも、いま、ちょっと動けなくて……」


「……ちっ」


 それから如月さんは何も言わず。俺のピークが過ぎるまで待ってくれていた。



* * *



「――おら。もういいだろ」


 そう言ってアタシは孝一から離れた。


「お前はそろそろ雪華のところに向かえ。アイツも言っていたけど、どうやら本当にもう時間がないらしい」


 最初はもっと広かった校庭も、もう半分以上は崩れ落ちていた。


「……わかりました。お二人ともまた後で」


 孝一はそのまま振り返らずに、真っすぐ雪華のいる体育館に向かって行った。


「…………」


 アタシはその後を追うようにして、せつなの近くまで足を引きずりながら移動する。


「……ざまあねぇな」


 せつなを見下ろしながら言う。


「ふっ……まったくだ」


 そんな軽口を叩きながら、アタシは校庭に体をあずける。


「あー……しんど」


 ヘビを倒すことはできなかったし、最後は勝ち逃げされたようなもんだった。

 ……まあいい。いつかリベンジしてやるさ。アタシの抵抗は、まだ終わってないんだ。


 そん時は、今回みたいにアイツに助けられるなんて無様をする気もない。

 アタシは自分の左肩に手をあてた。


「紗姫」


「……あん?」


「惚れたな」


「ぶっ――はは! んなわけあるかよ」


 ったく……アホ抜かせよ。

 そんなことを思いながら、アタシとせつなは目を閉じた。


「――」


 落ちていく感覚がする。

 底があるのかもわからない。この奈落に、アタシたちは二人、落ちていった。



* * *



「うぉ……なんだこれ」

 

 俺は体育館の入り口まで来ていた。

 ドアはグニャグニャとしていて、ぷるぷるとして、およそドアと呼べるような状態ではなかった。


 意を決してドアを開くも、ドアは触れた部分が割れるかのように、漢数字の一を書いたようになっただけだった。

 そして、手にはドアだったものが絵の具のように付着していた。


「うぇええ気持ちわる……」


 俺は足でガシガシとドアをけりながらスペースを確保していく。

 おそらく、もうこのズボンは履けないだろう。


「――!」


 体育館の真ん中で、呆けながら天井を見つめる青髪の少女が目に入った。


「ゆ――雪華!」


「ひっ――! ……あ、れ……孝ちゃん?」


 体育館の中に踏み入れた瞬間、いままで見ていた光景から一変した。

 外はあんなにも暗く、色が失われていたのに、逆に体育館の中は白一色だった。


 バスケコートもゴールもない。壇上も演台もない。

 ただただ、ただただ、白いだけの何もない空間だけが広がっていた。



 俺はあるのかもわからない床を踏みしめながら、彼女のもとへと駆けた。

 いまにも消えそうな、彼女を目指して。

次回で第一章は完結の予定です。

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