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らぶろあ ー君とはじめる愛(love)の伝承(lore)ー  作者: Yz
第一章 せっかりょうらん(上)
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第23話:君にまた会いたい

挿絵(By みてみん)

「――こ、こうちゃん?」


挿絵(By みてみん)


 俺は雪華に近づいて、抱きしめた。


「……よかった。無事で、本当によかった」


 その存在を確認するかのように、両腕にいっそう力が入った。


「う……うん。でも……痛いよ」


 どうしていいかわからない。そうと戸惑いながらも、雪華はそれに答えてくれた。

 それからしばらく互いの存在を確かめた後、雪華は思い出したかのように、俺のことを警告しながら引き剥がしにかかった。


「そ――そうだ! 孝ちゃん、だめ! 危ないんだよ!」


 その顔は、目はほのかに赤らみ、涙はもうその目に留まるばかりだった。

 不安と。恐怖と。

 それでもなお、人のことを心配できる慈悲深き女神。

 コイツが一体何をしたって言うんだ。

 コイツがここまで追いつめられるほどの何かをしたって言うのか。


 いいように使われ、傷つけられ、挙句には――。


 俺は勝ち逃げしたように消え去ったヘビを思い返して、奥歯に力が入った。


「……いいんだ。もう終わったんだ」


 その感情を磨り潰しながら、俺は傷一つない右手で雪華の頭と頬を撫でる。


「そう……なの?」


「ああ。そうともさ。俺がやっつけてやったよ」


 本当は三人掛かりだし、逃げられてしまったけど、まあ、でも、俺も活躍したし全部嘘ってわけではないだろう。


「孝ちゃんが……?」


「あ、ああ。信じられないか?」


 さすがに、出来すぎかと思って、フォローを入れようか悩んだ。

 しかし、俺のそんな心配は一瞬で過ぎ去った。


「……ううん。信じる」


 雪華はニコっと笑った。



* * *



「――そうだったのか」


 俺は雪華から消えた夜以降の話を聞いていた。

 雪華は、自分の過去と向き合うためにヘビに会いに来たらしい。

 過去というのは、もちろん、まみみちゃんのことだった。


「強い子、だったんだね」


「……うん」


 雪華は薄々気づいていたらしい。

 だけど、閉ざしてしまっていた。その記憶を。その恐怖とともに。

 自分を庇って、命を落とした、もう一人のヒーローの存在を。


「孝ちゃんはね。まみみちゃんにちょっと似てるの」


「そうなんだ。どこら辺が?」


「普段ね。優しくて大人しいんだけど、いざって時には誰よりも頼りになるんだよ!」


「……それは買い被りすぎだ」


 優しくて大人しいのは同意だけど、最後の一点については過大評価もいいところだった。

 俺は、流されているだけだ。

 リミテッドにも言われたように、傍観者で蚊帳の外であり続けた存在だ。


「でも、ちゃんときてくれた」


 頬を膝に当てながら、雪華が微笑する。


「そんなもんかね」


 俺は照れくさそうに言った。


「うん。そんなもんだ」


 今度はいたずらそうな笑顔だった。


「――っと、それよりも」


 俺は恥ずかしさから話題を逸らす。


「アレ、どうにかならないのか?」


「アレって……うーん」


 俺と雪華は上を見上げた。

 周りは白い空間が広がっていたが、上は水面か蜃気楼のようにぼやけた空の有様が映し出されていた。

 いうまでもなく、顕現しているワールドイズマインのことだ。

 もう外の世界には食べるものがないのか、活動は停止しているようだった。


「アレって雪華が出したんだよな?」


「うーん……。そうみたいなんだけど、わたしもどうやったのかわからないんだよ」


 雪華は本当に何もわかっていないようだった。


「でも、その時『みんな消えちゃえ』って気持ちと『わたしなんかいなければよかったのに』って思ってた」



 ――ああ。地雷を踏んだ。



 恥ずかしさから変えた話題が、この先の未来をどうしようもないくらい、あらがいようもないくらいに想定させてしまう。


「そ、そうか! まあ、俺もそういう気持ちになるときあるよ」


「だから」


 ……言うな。


「もしかしたら」


 ……やめろ。言うな。それ以上。


「わたしがいなくなれば、いいのかも」



 ーーーー。



 ヘビは言っていた。

 人間のいない世界を作る。と。

 それはつまり、雪華の思った『みんな消えちゃえ』の方の世界なのだろう。

 なら、もう一つは『雪華がだけがいない』方の世界もあるということだ。


 人類を復活させるか、一人の少女をこの世から消すか。その二択だった。


 俺は急いで話題をまた変えようとする。


「ま、まあ! 俺はこのまま二人でいるのもそれはそ――えぅ」


 顔を横に向けると、すぐそこに雪華の顔があった。

 そして――。


 俺たちはしばらく、お互いの唇をあずけあった。


「――っぷ」


 唇が離れ、細い糸がわずかに伸びた。

 間接でもなく、歯でもなく。ちゃんとしたキスだった。


「へへへ」


 彼女はしてやったり。と、無邪気にはにかむ。



 ――ああ。失いたくねぇなあ。

 ああ――そうか。



「せ……柚月さん」


「うぇ!? な、なに孝ちゃんあらたまって」


「君が好きだ。俺と、付き合って欲しい」


 まだ出会って数日しか経っていないのに、俺はいつの間にか彼女の笑顔に惚れていた。

 雪華はちょっとびっくりした顔をしたが、照れくさそうに言ってきた


「チューしたぐらいで、勘違いしないでよねっ!」


 雪華はべーっと舌を出して、照れくさそうに笑っていた。

 今日、再会してから、何度彼女の違う笑顔を見ただろうか。


 どうやら俺は振られたらしい。

 でも、それもノーカウントだ。だって――そうだろ。


 俺は、泣いていた。

 振られたからじゃない。彼女がどういう意図でそんな返事をしたか、わかってしまったからだ。


「せ……」


「じゃあね。孝ちゃん。わたしのこと――忘れないで欲しい、な」


挿絵(By みてみん)


 彼女の周囲が強い光を発した。


「せっ、か――!!」


 俺は突然の眩しさで、目をつむってしまった。


挿絵(By みてみん)


 そして、再び瞼を開いたとき、雪華は目の前から消えてしまっていた。


「あ……あぁ――あああああああ!! ーーー!!! ―――!!!!」


 頭を掻きむしり、声にならない叫びを上げながら、頭上から見下してくるソレを睨みつけた。


「俺はこんなの認めねぇ!! 絶対に認めないからな!!」



 世界が揺らぐ。

 それと同時、俺の意識も揺らぎ、切れた糸のように、俺の意識もブツリと切れた。


 春休みの最終日。

 世界の終りの日であり世界のはじまりの日である今日、俺、真宮孝一は失恋した。



* * *



――バッ


「せ―――!! ……あ、あれ」


 気がつくと俺は、布団の中にいた。

 ……いや、気がつくとって……なんだ?

 普通に昨日寝床に着いただけだよな……。


 頭が混乱している。まだ寝ぼけているようだった。


「ふぁああ」


 俺は洗面台に向かい、歯を磨き、顔を洗って目を覚ます。


「おはようございます。如月さん」


「おう。おはよ真宮」


 如月さんはいつも俺より先に起きて仕事の準備をしている。

 昨日アレだけお店は忙しかったのに、本当にタフだ。


「おはよう。孝一殿」


 朝レンからもどった絢瀬さんと挨拶する。

 これも、いつも通りだ。



――ドタドタドタ


 階段を駆け下りてくる騒がしい足音が近づいてくる。

 どうやら、このお店のオーナーが起床したらしい。


――バタン!


「おはよー! さっちゃんにせっちゃん! あとマミヤくんも!」


 そんな風にドア開けたらそのうち壊れるぞ……。

 俺はそのコチラに向けてくる満点の笑顔を見ながら、少し呆れたように言った。


「ああ。おはよう



挿絵(By みてみん)


――まみみちゃん」




 * * * * * * *


 第一章 せっかりょうらん(上) 完


 * * * * * * *


■あとがき

これにて第一章、雪華のお話は一旦、完となります。


書き始めて二か月程度でしたが、なんとか続けることが出来ました。

最初の方はノベルゲーの書き方しか知らなかったため、小説とは言い難いものでしたが、筆者の成長としてそれも楽しんでいただけたら幸いです。


よろしければ、感想などを頂けましたらとても嬉しいです。

※TwitterのDMでも



ここまで読んでいただき、本当にありがとうございました。

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