表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
らぶろあ ー君とはじめる愛(love)の伝承(lore)ー  作者: Yz
第一章 せっかりょうらん(上)
18/25

第16話:時間の制定者

挿絵(By みてみん)

――チュンチュン。


 朝だと言わんばかりに、お決まりのようなスズメの鳴き声がする。

 けど、俺はスズメの声ではなく、普通に目覚ましの音で目が覚めた。


 その日の朝は普通だった。

 いつも通りの時間に起きて、如月さんが用意してくれた朝食を食べながら、今日のモーニングの内容を相談して、店の看板に書く。

 それが、ここに来てからの俺のいつもの朝だ。


 今朝の朝食には、つぶつぶのコーンスープがついてきていた。

 俺はこのコーンスープってやつが大好きだ。

 ファミレスに行ったら必ず頼むといっても過言ではない。

 だから俺は、朝から気分がよかった。


 ただ、如月さんは柚月さんの心配をしていた。


 どうやら朝から見かけないらしい。

 それは、彼女、如月さんにとって、そして柚月さんにとって普通の朝ではなかったんだろう。

 でも、俺はこの時はまだ、そんな日もあるって、楽観的に考えていたんだ。


 だってそうだろう?

 俺だって、朝から出かけたい気になったり、ダイエットのために土手にジョギングしに行ったことだってある。

 ……まあ、続かなかったけど。


 だから……、そうだろ。

 思うだろ、普通。



* * *



 結局、柚月さんは夕方になっても姿を一度も見せなかった。



「――どうだ!? いたか!?」


 絢瀬さんのスマホ越しに、如月さんの切羽詰まった声が聞こえる。


「いや……ダメだ。思い当たる場所をしらみつぶしに探しているが……見つからん」


 俺と絢瀬さんは、柚月さんを探して街中を練り歩いていた。

 油終さんのところ、デパートのヒーローショーの特設ステージ、ファミレス、映画館。

 思いつく場所は、いまのところすべて回ったつもりだ。


 ……しかし、どこにもその姿を見つけることはできなかった。


 柚月さんはすでに朝昼とご飯を抜いていた。

 あの食いしん坊が、立て続けに食事を抜くなんて考えられなかった。

 この時になると、さすがの俺も異常を感じはじめていた。


「どこにいるんだ……、柚月さん」


 もしかして、誰かに連れ去られたりでもしたか……? 誘拐……なのか??


「――おい、聞いているか、孝一殿」


「あ、はい。すみません。次、どこ探しましょうか」


「いや、一度らぶろあに戻って、紗姫と話すことになった。なので戻ろう」


「わかりました……」



* * *


――カランカラン



「紗姫、戻ったぞ。……紗姫?」


 らぶろあに戻ると、如月さんが両手で頭を抱えながら酷く取り乱していた。


「雪華が……いねえ――ッ!!!」


「わかっている。落ち着くのだ、紗姫」


「落ち着け!? 落ち着けだと!? なんでっ! お前はそんな落ち着いていやがる……!!」


「…………」


「……あのな。せつな。お前たちが雪華を探しに行っている間、ずっと考えていたことがある」


「…………」


「あたしはこの感じを知っている。この心臓をぬるま湯に浸けられたような、いやぁな感じを」


「紗姫……」


「せつな。アレの状況はどうなってる」


 如月さんはカウンター席で両手で頭を抱えながら、淡々としゃべっている。


「それは……」


 突然、如月さんが絢瀬さんの胸元を掴んで力強く自分のもとに引き寄せた。


「お前……!! アイツが来ているのを知っていたな……!? 知っていてあたしに言わなかったな!?」


「……まだ聖央でも未確定の情報だった。言えば紗姫は動揺しただろう」


「言わなかった結果がこれだ!!」


「……確かに、私が招いたと言われても弁明の余地もない」


 二人が白熱しているが、俺はすがすがしいほどに、すっかり置いてきぼりを食らっていた。


「あの……、すみません。何のお話でしょうか……?」


「…………」


「紗姫。手を放してくれ。孝一殿には私から話そう」


「……チッ」


 如月さんはイライラしながら、カウンターの向こう側へと戻っていった。


「さて、どこから話したものだろうか」


「……真宮。お前、甘露樹から聞いてんだろ。二年前のこと」


 如月さんが食器を洗いながら、声をかけてくる。

 おそらく、何かしていないと気がすまないのだろう。


「あ、はい……一応。その、アレですよね? 体育館の天井が落ちてきて、負傷者が出た。って話ですよね?」


「ああ。そうだ。……まあ、落としたのはソコのバカだけどな」


 如月さんは怒りが収まらないのか、いつもより語気が強くなっていた。


「え」


「ああ。私が切り落とした。……いや、ちょっと待て。あの時は確か紗姫と協力して落とした気がするのだが……」


 そんな生産者の顔が見える。みたいに、はい。私が切り落としました。……ってそんな馬鹿な。

 人間やめてんのかこの人……?


「なんか、僕が聞いてる話と、なんかズレてますね……」


「うむ。まあ、あの件は聖央が介入して情報統制を敷いているからな。公になっている情報としては事故として扱われているのだ」


 そういえば、あまねちゃんもそんなようなことを言っていたな……。


「あの、あの日、お二人は本当は何があったのか、ご存じなんですか……?」


「ああ。……あの日、あそこには雪華とまみみ、いじめの主犯、男子生徒三名。そしてそれとは別の人物がいたのだ」


 いや、多い多い。新情報が。

 あまねちゃん。ちゃんとリサーチしてくれよ……。


「いや、え。まみみって、雛琶さんもいたんですか……?」


「……せつな。お前、自分から聖央の情報規制破ってんじゃねえか」


「う、うむ……。し、仕方ないだろう。私は……、その、考えるのは苦手なのだ……」


「自分で説明役をかってでたんだろうが……」


「雛琶さんも事故に巻き込まれたんですか……? そういえば、柚月さんは雛琶さんは実家にいるって言ってましたけど、無事だったんですかね……」


「雪華がそういったのか?」


「はい。実家にいるって、そこそこ遠いから、会いたいけど簡単に会えない。みたいなこと言ってました」


「……そうか。それでいい。雪華の中では、それが事実なんだ」


「どういうことですか……?」


「まみまみ……まみみはだな、すでに、死んでいるのだ。二年前に」




「――は?」




* * *




「あの日、二つの事件が並行していた。私と紗姫が追う事件。そして、雪華のいじめの事件」


「……あたしは、アイツを雪華から離すことしか頭に無かった。その所為で雪華の身に起こっていることにまで気が回っていなかった」


「アイツ…って、なんですか? そういえば、さっきせつなさんも別の人物がいたって言ってましたけど……」


「……うむ。奴こそがその二つの事件の黒幕であり、いまもなお、私達が追っている敵だ。……そして、おそらく、今回の件も奴の仕業だろう」


「あの、だから誰なんですか……? どんな奴なんですかソイツは」


「アイツは……いや、アイツらは、自分たちを時間の制定者と名乗っている。頭のイカれた野郎どもだ」

挿絵(By みてみん)


「時間の制定者……?」




「そうだ。――12人の宣刻者(リミテッド)。それが、我々の名だ」



俺たちは一斉に振り返る。

そこには、カランカランという鈴の音も出さず、喫茶店のドアに音もなく、もたれ掛かる、あの、季節感がズレている、不審者の姿があった。


■あとがき

[週2回(主に水曜と日曜)更新予定]

よろしければブックマークなどしていただけますと励みになります。


※「らぶろあ(Love Lore)」本編をRPGツクールMZで制作中です。

※イラストは「AI一部利用作品(Stable Diffusion)」となります。


■Twitter

毎日キャラのAIイラストを投稿しています。

https://x.com/yz_lovelore

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ