表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界に巻き添え召還されました。魔女認定され隣国に追い出されました  作者: りな


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

24/29

エルンストの研究②

エルンストの魔力が戻ると、彼は早速机に向かい、紙を広げた。


「火球――」


呟きながら魔力を込める。紙の上の魔法陣が一瞬光を帯びたが、すぐに霧散して消えた。

「……やはり難しいな」


次に水球、防御と試す。しかし、成功するよりも失敗する方が多い。

紙は虚しく焦げたり、破れたりしていく。


「沙羅、この紙と魔法陣を描いたインクは特別製なんだ。普通の紙とペンでは、魔法が霧散するだけで残らない」

エルンストは額の汗を拭いながら、苦笑した。


「この魔法陣もな……ほんの少し線がずれただけで成り立たない。驚くほど繊細な作りだ」


エルンストは感心したように呟いた。

「……隣国はすごいな」


「……しかし、国に広められないな。特許は申請するとしても、技術の公開は不可能……」


そこでふと、エルンストは思い出した。

「そういえば、リュカの父が職を探していたな」



翌日、エルンストはリュカの父親を訪ねた。


「仕事をしてみないか?」


父親は驚いたように顔を上げた。


「この魔法陣に、防御の魔法を込めてみてくれ。出来なければ、頼むことはできない」


紙を手に取る。額に汗を滲ませ、慎重に魔力を注いだ。

しかし、陣は光を放つことなく霧散する。


「……すまん」


「いや、誰でも最初はそうだ。おそらく、コツを掴むには時間が必要だろう。朗報を待っている」


エルンストは失敗用に数枚の魔法陣を置き、静かに去った。



二週間後。


「……出来た」


リュカの父の手の中で、防御魔法を込められた紙が淡く輝いていた。


再び訪れたエルンストは、慎重にその紙を受け取り、指先で触れる。

わずかに伝わる魔力。


「まあまあ、だな。……では次は火球と風球だ。余分に魔法陣の紙を置いていく」


父親は大きく息を吐き、また挑戦を始めた。

何度も失敗し、紙を無駄にした。だが、苦労の末、火球と風球の魔法を込めることに成功する。

父親は出来た魔法陣をエルンストに渡す。


「見ただけで……わかるのか?」


「何度も失敗してきたからな。魔力の流れで判るんだ」


そう言って、エルンストは満足げに紙を回収して帰っていった。



数日後。


再び現れたエルンストは、小さな袋を机に置いた。

袋の口を開けば、中には金貨が入っていた。


「これは仕事の報酬だ」


リュカの父は言葉を失ったまま袋に触れる。

声は出なかったが、その震える手と背筋の伸びた姿から、溢れるほどの喜びが伝わってきた。




リュカの父は、エルンストから渡された魔法陣に魔法を込める仕事に邁進した。

もともと彼は防御魔法を得意としていた。火球や風球といった基本的な攻撃魔法も、扱うことができた。しかし、魔法を込めるのは、ある意味まったく違う……。


だが、失敗と成功を繰り返しながらも、紙に魔法を込める作業は次第に手に馴染み、やがて確かな技となっていった。


ある日、成果を確かめに来たエルンストに、父は問うた。


「……本当に、こんなものが役に立っているのか?」


エルンストは即座に頷いた。

「そうさ。この国の八割の人は魔法を使えない。だが、そういった人々にも“自分を守る手段”が必要だ。だから、これは売りに出した。もちろん、魔法陣が解析されないように、認識防止と、不正に扱われたら直ぐに紙が消える仕掛けを施してある」


「……なるほど」父は小さく息を吐いた。


エルンストは続けた。

「値段は高い。だが、それでも需要は多い。初回は試験販売も兼ねてだったけど、反応は上々だった。――また頼めるか?」


「俺でいいのなら」


「もちろんだ。沙羅がよく心配していた。“リュカの父親が仕事を探している、けど、なかなか無いって……”と。問題はない、君の術は確かな腕だよ」


その言葉に、父の肩が震えた。

しばらく唇を噛んでいたが、やがて抑えきれず、男泣きに泣いた。


「……俺は、役立てるんだな」


嗚咽混じりの声が狭い部屋に響く。


エルンストは黙ってその姿を見守った。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ