表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界に巻き添え召還されました。魔女認定され隣国に追い出されました  作者: りな


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

21/29

エルンスト、沙羅の魔方陣を知る

事件から一週間が過ぎた。

沙羅はまだ肩に包帯を巻いていたが、エルンストのことが気がかりで仕方なく、ガルディスを伴って彼の家を訪れた。


「エルンスト、入るぞ」

玄関を開けると、机に向かって本を読んでいたエルンストが顔を上げた。


「もう大丈夫なのか」

沙羅はきゅっと唇を結び、答える。

「傷はまだ痛むけど……じっとしていられなくて」


エルンストの眼差しが一瞬柔らかくなる。だがすぐに真剣な色に戻った。


ガルディスが腕を組み、問いかける。

「で、何があったんだ? 沙羅が宿で倒れたって話は聞いたが、詳しくは知らされてねぇ」


エルンストは沙羅に視線をやった。

「言っていいかどうかは、沙羅に確認してからだ。ガルディス、少し席を外してくれ」


「……分かった」

ガルディスは渋々ながら外に出た。


部屋に二人きりになり、エルンストが声を落とす。

「沙羅、触れると魔力値を動かせる話を、ガルディスにして良いか? でないと、薬のことが説明できない。ガルディスは信頼できるだろう」


沙羅は迷った末、ゆっくりと頷いた。


「……分かった」


「ガルディス、入れ」


ガルディスが再び入ってきて椅子に腰を下ろす。エルンストは淡々と語り出した。

「沙羅が魔力を数字として見えるのは知っているな。……加えて、対象に触れると、その数字を動かせることが分かった」


ガルディスが目を剥いた。

「……動かせる? つまり、増減させられるってことか?」

「そうだ。私は沙羅に魔力値を上げてもらい、魔法を使えるようになった。その力で薬を作った」


エルンストは手元の小瓶を示す。

「だが、そのことを探る輩に、沙羅は襲われた」


しばし沈黙が落ちた。

やがてガルディスが低く呟く。

「……待て。薬ってのは……ハイポーションとか、育毛剤とか……あれか?」

「そうだ」


ガルディスは額を押さえ、深くため息をついた。

「……分かった。だが、黙ってやるのに条件がある」


「何だ」

「ハイポーションと……美肌液を分けてくれ」


「……何で美肌液なんだ」

「女たちが欲しがってうるさいんだよ……。俺だって肩身が狭いんだ」


エルンストは苦笑ともため息ともつかない顔をして、やがて頷いた。

「少しならな」


こうして取引は成立した。


その後、エルンストはガルディスを一足先に帰らせた。沙羅は送るから、もう帰って良い、と。


小瓶を懐にしまいながら帰路についたガルディスは、ひとり考え込む。

(……こんな力、知られたらどうなる? あの子が狙われたのも当然だ。危険すぎる……)


ほくほく顔の裏で、冷たい予感がじわじわと胸に広がっていた。




ガルディスが去り、部屋の扉が閉まると、静寂が落ちた。

沙羅は真剣な眼差しでエルンストを見上げる。


「……数値がすごく下がってます。本当は立っているのも辛いのでは?すぐに上げます!」


彼女は迷わずエルンストの手を握り、集中する。淡い光のように、エルンストの魔力値が上がっていく。


「ふう……」エルンストは息を整え、沙羅に視線を向ける。

「…沙羅、本当は触れなくても上げられるのでは?」


沙羅は固まった。驚きに目を見開き、やがてゆっくりと顔を上げる。


「……」


「あの男は死んでいない。安心しろ。……それより、私は知りたい。沙羅にとって、その力の使い方はどれほど負担になるのか。……試してくれないか」


沙羅は少し迷った末、手を離し、両手を胸の前でぎゅっと握りしめた。そして深呼吸をして、エルンストを見つめる。


次の瞬間、触れていないにもかかわらず、エルンストの魔力値がぐんぐん上昇していった。


「……! 確かに上がっている」

エルンストは驚きと同時に、冷静に確認する。

「大丈夫か? いつもと違うか?」


沙羅は眉をひそめながら答える。

「少し……引っかかるような感じがするけど……大丈夫」


数値がかなり上昇したところで、沙羅は息をつき、力を止めた。


エルンストは沙羅を真っ直ぐに見つめる。

「体調は変わりないか?」

「平気、です」


「……その力は、明らかに異常だ」


「……沙羅、……君は異世界から召還された聖女ではないのか? 黒い目、黒い髪……この辺りでは珍しい。隣国から追い出されたのではないのか。始めの頃、常識を知らなかった理由も、それなら説明がつく」


「……答えられなければ、首を振るだけでいい」


沙羅は、無言で頷いた。


エルンストは静かに息を吐き、さらに問いを重ねる。

「それなら……言葉の問題だ。沙羅はなぜ、この国の言葉が話せる? そんな魔道具は存在しない。仮に隣国で作られたとしても、簡単に渡すとは思えない」


沙羅は迷った。……禁術。


「…絶対に、誰にも、話さないで下さい」


「私の頭の中に、魔術で魔方陣が描いてあるそうです。意志疎通を可能にする……」


エルンストは絶句した。

「……それは……凄く重要な問題だ」


深く思考に沈み込み、やがて彼は低く呟いた。

「少し……考えさせてくれないか」



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ