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異世界に巻き添え召還されました。魔女認定され隣国に追い出されました  作者: りな


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12/29

黒い目、黒い髪の魔女

名前はトメ。

貧しい農家の小作人の十番目の子であった。

一番目は一郎、二番目は次郎……私はトメ、終わりだ。その年は酷い不作で、私はどこかに売られるだろう、と思っていた。


甕から水を飲もうとしていた瞬間、トメは見知らぬ光に包まれ、異世界に聖女として召喚された。

周囲を取り巻くのは、見たこともない姿の人々。


「成功だ」

「言葉は通じるのか」

「随分みすぼらしいな」


混乱するトメは女に連れられ、体を洗われ、奇妙だが清潔な衣服を着せられた。目の前に差し出された食べ物を、飢えに負けてむさぼる。


そこにローブを纏った男が現れた。


「話せるか」

「……はい」

「見たところ栄養と休息が必要そうだ。ここは君のいた所から遠い。だが傷つけはせぬ。ゆっくり休むが良い」


わけがわからなかった。その夜から一週間、トメは熱にうなされ眠り続けた。



やがて回復したが、トメは何の力も見せなかった。世話をする女たちは陰でささやいた。


「失敗なのでは」

「前の聖女はすぐに魔法陣を描いたわ」

「この子は話すことすらしない」


ローブの男に問われても、トメは答えられなかった。


「君は何ができるのか?」

「……わかりません」

「前の聖女は転移、空間収納、遠隔会話、空中遊歩、意志疎通魔法ができ、魔術を魔法陣にして我らにもたらした。どうだ?」

「……わかりません」

失望の色が広がる。



しかしある日、世話係の女が食器で手を深く切った。血が止まらず、顔が青ざめていく。

トメは必死に傷口を押さえ、「血が止まって」と願った。


すると血が止まり、皮膚は閉じ、傷は消えた。


「治癒の魔法か」

「いや、まだ決めつけるな」


それからトメは病人や怪我人のもとへ連れて行かれた。最近の傷や病なら癒やせるが、長い病や古い傷は治らなかった。


それでも貴族も町人も、次々とトメを求めた。




ある日、火傷を負った老婆が運び込まれる。顔全体を覆う酷い傷。

トメが治癒を行うと、火傷は消えただけでなく、皺が薄れていた。


「……若返っている?」


王妃の耳に届く。

「私の顔に大きなシミがある。顔全体にその魔法を使え」


トメはためらいながらも魔法を施す。王妃の顔は若返り、歓喜が広がった。だがトメは酷く疲れ果てた。


数日後、王妃は言った。

「次は身体全てを若返らせろ。断れば殺す」


トメは従い、王妃を若返らせた。代償に二週間昏睡した。


ローブの男達は、王妃により隔離された。トメの能力は時間に作用するとわかってきたが、何も出来なかった。


以後、トメは病や怪我を癒やすことよりも、貴族たちの「若返り」の道具として酷使された。

彼女はやせ衰え、起きられる時間より眠り続ける時間の方が長くなった。


ある夜、喉の渇きに目覚め、水を飲もうとした窓に自分の姿を見た。

老婆になっていた。


魔力を命から削り続けた結果だった。


廊下に出れば、人々は悲鳴を上げて逃げた。

「化け物だ!」


心が死んだ。




やがて王妃が茶会でトメを呼ぶ。

「もう少し、若くして」


トメは断った。


「ならば痛めつけろ」

兵士に命じ、鞭打たれるトメ。


その瞳に、憎悪が宿った。


「王妃……それならば、もっと若くして差し上げましょう」


魔力が溢れる。王妃は若返り、女から少女へ、幼女へ、赤子へ――そして消えた。トメは命を削って魔力にした。


阿鼻叫喚。


「あなたも、以前若返りを望みましたね」


次々と貴族たちは幼子へと縮み、消え去った。

兵士はヨボヨボの老人に変えられ、戦う力を失った。


「……もう、終わり」


そう呟いた瞬間、矢が胸を射抜いた。次々と降り注ぎ、トメは倒れた。


王城にいた王族も貴族も兵も、多くが死んだ。


事件を知った民は暴動を起こし、王族を滅ぼし、新たな王を立てた。


やがて語られる。

黒い目、黒い髪の少女――

王を滅ぼした「黒の魔女」の伝説として。




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