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あれから数日後、支音はとある人物の前で膝をついて座っている。
「どうして、忘れるの?」
支音は答えず、ただ俯く。視線の先は目の前に立っている人の足元だ。
「聞いてる?」
「ごめんなさい」
「今すぐ、早急に、何とかして。律さんの姿を見て心が動かされないわけないでしょ」
それは諭すような言い方だった。
「はい」
支音はようやく顔を上げる。
「それで、飯野さんは、何かしたいこととかあるの?」
雛は手を上げて、首を横に振る。そして、支音を指差す。
「それを探すのが支援者、支音の役割でしょ」
「それは、そうなんだけど、なんの手がかりもないのは……」
目を横に逸らしながら、話していると、その逸らした方向に雛が動いてきた。
「逃がさないから」
「はい」
雛は上を向いて少し黙る。支音が口をモニョモニョと動かしていると、雛は支音の顔を見て、話し出す。
「律さんの未練は体育祭をやり切ることだったの?」
「うん。そうだね」
「そしたら、他の人は? ほら、カレンと苺花とルームメイトだった……遥は?」
遥はこの学園に入って2番目に未練を解決して、初めて成仏するところを見た友達だ。今でも彼女の姿は覚えている。
「遥ちゃんは、幼馴染に想いを伝えられなかったことが未練かな?」
「そんな感じに誰の未練と当てはまるか、調べてみるのは?」
「そうだね。やってみようか」
支音は1人ずつ解決していった未練を話していく。雛はそれを聞いてもどこか響いていないようだった。
「そもそも、飯野さんはどうしてそんなに早くに未練を見つけたいの?」
「それ、は……」
雛は体を抱くように腕を組む。
「それは?」
「早くしないといけないから……」
雛はさらにぎゅっと組んで腕を握る。支音は雛の手に触れて、優しく言う。
「ゆっくりだとしても、必ず解決するよ」
「遅かったら意味がない。早いのがうちの……」
「うちの?」
「……んん」
雛はさらに強く握り締める。
「飯野さん。一旦考えるのやめよう。深呼吸しよう」
その言葉でようやく力を緩めて、腕を解く。そして、雛は肩を落とした。
「ごめん。想像よりも自分のこと覚えてなかった」
「飯野さんは悪くないよ。幽霊になると自分の未練に関することは思い出せないんだし」
それでも雛は変わらない。
「でも、そっか。飯野さんのどうして早くに見つけたいのかが分かれば、未練もわかるかも!」
雛はゆっくりと顔をあげる。
「そうしたら、飯野さん。今度の休みに自分の家に行ってみない?」
「わかった」
雛はしっかりと頷いた。
支音と雛は外出の許可を貰いに、職員室に向かった。と、その時に結奈が手前から歩いてくる。
「何してるの?」
結奈は黙ったまますれ違わず、声をかけてくる。
「えっと……」
言い淀む支音に代わって雛が口を開く。
「支音と外出の許可を貰いに行くの」
「ふーん」
結奈は雛を品定めするように上から下まで見る。
「それ、私も付いていっていい?」
「うちは特に構わない」
「本人がいいって言ってるなら、支音も文句ないよね?」
支音は力無く頷く。結奈は支音の耳元にそっと囁く。
「彼女の未練を解決できた方が、できなかった方に一つお願いするのがルールね」
「え! それはこの前——」
「じゃ、一緒に職員室に行こうか」
結奈を先頭に3人は職員室へと向かった。




