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倒れた律を大急ぎで保健室まで運び込むことができた。保健室には先生がおらず、ひとまずベッドに横たわらせる。
「律大丈夫か?」
真太郎は必死に肩を叩いている。
「待った、待った」
支音がそれを慌てて止める。
「多分、落ち着かせてた方がいいと思う」
「そ、そっか」
真太郎は必死に自分の体が動くのを止めようと抗っている。そこにカレンと苺花が担任を連れて戻ってきた。
「先生を連れてきたよ」
担任は律の呼吸などを確認して、冷静に対処をしている。一通り確認して、こちらを向く。
「ま、大丈夫だ。大事には至ってない。しばらく寝れば起きるだろう」
「そうか良かった!」
真太郎は律が眠るベッドにどかりと座り込む。
「何をしてるんだ?」
「え? 律が起きるまで待とうかと」
先生は無言で真太郎を立たせる。
「え?」
そのまま、真太郎、カレン、苺花、支音の4人は保健室を追い出されてしまった。
「こんなうるさいのが居たら、眠れないだろ。お前たちは帰れ」
「それも、そうだね。支音、帰ろっか」
カレンは支音に呼びかけるが、支音は保健室の方を向いている。苺花も支音の様子に気づいて、声をかける。
「支音さん?」
「ごめん。みんなは先に帰っててくれるかな?」
「わかった。また明日ね」
3人と別れを告げて、支音は保健室に戻る。
ゆっくりと扉を開けると、担任が支音の存在に気づいてこちらを見ていた。
「上天支音、1人か?」
「は、はい」
「ならいい」
お互いに話すこともなく、沈黙が続いていると、律が起き上がった。
「大丈夫か?」
「はい、大丈夫です」
先生は一通り律の体調を確認する。
「うん、そしたら、先生は職員室に戻るから、何かあったら呼びに来い」
そうして、その場には律と支音が残される。
「ごめん」
「なんで、律くんが謝るの?」
「頑張らなきゃって、張り切りすぎちゃった……」
まだ、頭が痛むのか時折り頭を触りながら、律は話す。
「みんなにも謝らないとね」
律はそう悲しそうに笑った。
「……謝る必要なんてないよ。一生懸命な律くんのことを誰も責めたりしない」
「ははは、ありがとう」
「今までもこうやってきたの?」
「ん?」
律は首を傾げる。
「ええっと、なんか委員長みたいにみんなの前に立ってたのかなって、今日の体育も律くんのおかげでスムーズだったからさ」
「なるほど。んー」
支音の問いに律は黙って記憶を掘り出そうとしている。
「わかんないかな」
「わかんない?」
「うん、何も思い出せない」
「体育祭とか、文化祭とか、日々の授業とか、部活動とか?」
支音はのめり込むように、律に近寄る。律は気まずそうに苦笑いをする。
「うん。僕って何してたんだろうね?」
「学校に行ってなかったのかな? ……もしかして、いじめ?」
支音はぼそりと言ったが、その言葉に律は首を振る。
「学校に嫌な気持ちはないし、それ以外だと思うよ」
「そっかー」
支音は両腕を組んで、必死に頭をひねる。
「なんか、保健室って落ち着くよね。安心する」
「ずっと頑張ってたもんね。今日ぐらいはゆっくり休んでもいいと思うよ」
「そうかもね。僕はこの体育祭を全力でやり切りたいんだ」
「私がお願いしちゃったから?」
申し訳なさそうな支音に、律は慌てて否定する。
「そうじゃなくて、僕がそう思ったんだ」
「ここでやれる最初で最後の体育祭だもんね」
律は力強く頷く。支音も笑顔で頷きに応える。その時、一つのことを思いつく。
「もしかして、律くんって病気で学校に通えなかったとか?」




