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支音はいつもより思考がまとまらない頭を必死に捻って考える。目の焦点が合わず、ぼやけた地面を見つめる。
「私の答えは決まった」
その言葉は結奈のものだった。支音はまだ答えを見つけられず、内心焦る。結奈は止まることなく、堂々と話し続ける。
「答えは決まった。でも、そっちは決まってないみたいだね。私の答えを参考にされたら、たまったものじゃないから。そっちから、先に答えて」
結奈と優の視線が同時に集まる。精一杯の勇気を振り絞り、立ち上がる。そして、結奈に負けないくらいの去勢を見せてみる。
「わ、私の答えは!」
一息深呼吸をする。
「理不尽なことが起きないようにすることじゃないかな? 同じ経験をする人がもう出ない。そんな環境にすることじゃないか、なぁ?」
言葉を発し続けるたび、初めに見せた去勢が崩れ落ちていく。肩を落とし、俯く。結奈は勝ち誇ったように笑った。優は何一つ言葉を発さなかった。
「違うね。私の答えは、復讐。法的な裁きを受けたからなんだ。馬鹿な人たちの馬鹿な行動によって、自分が死んで家族も苦しんだ。せめて、この目で罰が下されてるところを見るまで、復讐を終えたとは言えない」
最後まで堂々としていた。自分が間違っているとは微塵も思っていない。
「さぁ、優さん。答えを」
優は2人の顔を1回ずつ見る。そして、口を開いた。
「2人ともはずれ」
正解者はいなかった。この事実に負けなかったことを喜べばいいのか、当てられなかったことを悔めばいいのか、とにかく、ただ固まった。しかし、相手はそうでは無かった。
「幽霊が自ら未練を気づけることはない。私のが合ってる。今はピンと来ないかも知れないけど、やってみればわかるよ。これが自分の未練だったんだって」
結奈は呆れたように、説明をした。それを聞いても優ははっきりと首を横に振った。
「私はわかった——」
優の言葉を遮るように、結奈が前にでる。
「だから!」
「私の未練は、支音を最期まで監視すること!」
その言葉に負けない声量で言い放った。結奈は一歩後ずさった。
「何それ、勝手すぎるでしょ」
優は支音の元に歩き、優しく手を取った。真っ直ぐに目を見つめる。
「だから、友達になろう」
見つめられた目を直視できず、すぐに逸らす。
「私はまだ、支音のことを許してない。だから、この一年が終わるまで、支音が変わったことを見せて。これが私の未練」
「そんなわけない! そんなわけ……」
結奈は子供のように足を地面に叩きつけて、必死に頭を振る。
「結奈さん。あなたは本当にいい支援者だと思う。でも、どんなに勉強しても、どんなに考え続けても、できないことはきっとあるんだよ。事実、支音はできないことがいっぱいだし、そのくせ努力もしてないけど、でも……そんな支音だからこそ、できることがある。それがこれだっただけ」
子供を諭すような優しい声と表情で語りかける。
「勝手にすればいい。私はまだ、支音のことを認めない」
「結奈ちゃん!」
つい、名前を呼ぶ。しかし、その言葉が聞こえなかったように一切振り返らず校舎に戻って行く。その背中を見て、追いかけることはしなかった。
「で、私に対する返事は?」
「えっと、道を踏み外さないように監視してくれると嬉しいです」
優はその言葉に鼻で笑った。
「え? え? え?」
「いやいや、大丈夫。ごめん支音。そして、よろしく」




