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幽霊学園  作者: 久遠 零


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「やっぱり、その日は行ってなかったんだ……」


 自分が忘れている可能性も考えて、(ゆう)にも尋ねることができなかった。そもそも、話を聞く限り、優が覚えていないことも確かだった。


「うん、あの日について、まとめたのがあるんだけど、支音ちゃんの名前がない。ん? やっぱり?」

「いやいや、気にしないで、うん」


 手と頭を横に振り、話題を逸らす。


「あー、私以外はみんな行ってたの?」

「うん、夜遅くだったし、断ってた人もいたんだけど、美玲(みれい)さんがどうしてもって」


 どうしてもと言う言葉を使っているが、おそらく半ば脅しのようなことを言われたのだろう。


「なんで、支音ちゃんは来なかったの? いや、今となっては来ない方が正解だったけど」

「行かなかったって言うよりは、呼ばれなかった」


 2人で頭を悩ませている。


 突然、彼女は目を大きく開けて、おぼつかない足取りで後ろに下がっていく。


「え、え、え、え? なんで?」


 言葉も途切れ途切れとしていて、まともな精神状態ではないことは見て取れる。彼女は後ろに下がっている最中に足を引っ掛け尻もちをつく。しかし、それでも止まらず何から逃げるように下がり続ける。


「ごめんなさい。ごめんなさい」


 ついに泣き出してしまった。

 支音はあまりのことに動けずここまで、立ち尽くしていた。ようやく、自分の助けがないといけない状態だと察し、彼女に駆け寄る。宥めるようにしながら、原因究明につとめる。


「どうしたの? 何があった?」


 あくまで余計な刺激は与えないように最低限のことを聞く。


「おばけ、いや、幽霊がそこに」


 そう言って彼女はまっすぐに指を指す。その先を見ると、(ゆう)が立っていた。


「あ、」


 忘れていたとばかりに間抜けな声を出した。学校内と違って外では体も透けていないし、パッと見では幽霊だとはとてもわからない。しかし、優が死んだと知っている人間は別だ。

 彼女は真っ青な顔をして、呼吸が荒い。一刻も早く場を収めるため、ある方法を思いつく。

 彼女の顔の前で、ねこだましをするように手のひらを打ち鳴らす。怯んだ隙にすかさず視界を塞ぐ。そして、優に目配せをしながら、こう叫んだ。


「大丈夫! なんもないよ! 悪い想像をしちゃってるだけ。一度視界を外したから、見えなくなる!」


 もう一度、優を見る。意図を理解したようで、静かに頷いた。そして、茂みへと姿を隠してくれた。それを確認した支音は彼女から手を離す。

 彼女は周囲を確認するようにキョロキョロと見渡す。本当に見えなくなったとわかり、ようやく呼吸が戻ってきた。ゆっくりと落ち着きを取り戻し、立ち上がる。


「ごめん。ありがとう」


 支音は気にしないでと言うように首を横に振る。


「今日は帰るね……また、ね」


 それだけ言って、おぼつかない足取りで帰っていった。ひとまず冷静にはなれたようだが、服についた土埃に気づいてないこともあり、完全に元通りにはならなかったようだ。それでも、ひとまず、帰らせることが出来たことに安堵して、優の方に向かおうとする。

 後ろを振り返ると、優が既に立っていた。


「終わった?」

「うん。ありがとう。協力してくれて」


 本来なら、彼女の優の復讐対象の1人だ。勝手なことをしてしまったと、今になって罪悪感が込み上げてくる。


「ご、ごめんね?」


 恐る恐る口にしたが、優はキョトンとした顔をしていた。


「何が?」

「勝手に帰しちゃったから……」


 優は腰に手を当てて、深く長いため息をつく。


「あんな風に怯えられても、私の溜飲はなくならない。むしろ不快だった」


 ひとまず、怒ってはいないことを確認でき、支音は安堵した。


「上はどうだった?」

「特に何も無かった」


 何かあったとしても、それ以上は話したくないような雰囲気を感じとり、追及はしない。


「そしたら、次は――」


 と言って、先程彼女から知った情報を伝える。その情報が正しいものなのかを確認しに行くことになった。

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