54
優を見失ってしまった支音はすることもなく、裏山の入り口で立ち尽くしていた。
「当然だけど、信用されてないな……」
ぼんやりと道ゆく人を眺めていると、見知った顔があった。それは相手も同じだったようで、驚いた顔をして近づいてきた。彼女は中学の時の友人だ。正確に言うと、美玲の取り巻きの1人。優の復讐対象ということになる。
「支音ちゃん? どうしてここに?」
「え? えーっと、なんとなく?」
よく考えたら、今日は普通の平日、大抵の学生であれば学校で授業を受けている時間だ。まさか、幽霊の未練を解決するために探索しているなんて、口が裂けても言えない。
彼女も支音の返答に対して、特に追及することはなかった。しかし、妙なことを言い始めた。
「支音ちゃんは何をしてるの?」
「えっ!? さ、散歩かな?」
「そうじゃなくて、普通に学校に通えてるの?」
「ん? どう言うこと? 普通かはわからないけど、通ってるよ」
彼女の様子はどこかおかしい。思えば、声をかけられた後からまともに顔を合わせてこない。その視線はずっと地面に向けられている。
「そうなんだ。――鉄村優って覚えてる? いや、忘れてないよね」
唐突に出された名前にドキリとする。今現在一緒に行動してるなんて言えるような雰囲気ではない。そもそも、言ったところで信じてはくれないだろう。支音の返答を待たずに彼女は続ける。
「あの後、私、耐えられなくて動画のデータを警察に渡したんだ。あまりにも鉄村さんのご両親のことが怖くて……それが証拠になって、美玲さんとかは警察に……わたし達みたいな傍観者は特別な罰とかはなかったけど、あの日のことがずっと忘れられないんだ」
支音に聞いてほしいと言うよりは、独り言のようにただ口を動かしている。
少しの間、沈黙する。そして、ようやく支音の顔を見ながら言った。
「支音ちゃんもそうでしょ?」
返答に迷い、うやむやに答える。彼女の気持ち自体は理解できた。しかし、彼女は同調してほしい訳ではなく、同じ境遇の者としての言葉が欲しいと思っているとわかっていた。だからこそ答えられなかった。
「あのさ、言いづらいんだけど、あの日って何?」
彼女は目を見開いている。まるで何を言っているのかわからないと言った様子だ。
「ここの裏山で……」
説明はしたいけれど、口にはしたくない。そんな様子だ。
「裏山で何があったの?」
優の未練を聞いている支音にはある程度予想はついている。しかし、今優から話を聞いたなんて言ってもややこしいだけだし、真実かどうかを確かめるためにも敢えて聞く。
「え、もしかして、支音ちゃんはあの場にいなかったの?」
こくりと頷く。
「おそらくね」
彼女は慌てたように、スマホを操作して、何かを探し始めた。目的のものを見つけたようで、手を止める。
「支音ちゃんだけ、何故か呼ばれてない……」
ようやく、支音の記憶と合っている証言を得られた。




