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幽霊学園  作者: 久遠 零


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 次の日、学校についた。玄関に入ってすぐに気づいた。ありえないことが起こっていることに。

 下駄箱が汚れていた。泥やらゴミやらが投げ込まれており上履きもとても使えるような状態ではなかった。


「なにこれ?」


 悲しみでは無い。純粋な疑問だった。

 仕方がなく、職員室でスリッパを借りる。借りる時に色々と言われたが私に責任があるわけでは無いので、適当に聞き流した。

 教室に入ると予想通りと言ったところか、私の机がゴミで汚されていたり、ペンで落書きをされていた。内容は私に対する罵詈雑言。


「誰がこんなことしてるの?」


 ゴミを片付けながら、周りを見渡す。するとくすくすと笑う美玲(みれい)の姿が目に入った。

 美玲は多くのクラスの女子に囲まれて立っている。グループの中には同じように嫌な笑みを浮かべている人と、下を向いている人がいた。支音(しおん)は後者だった。

 私はそこに向かって歩く。


「こんな、くだらないことはやめて」

「私はなにもやってないですよ。きゃー、怖い怖い。冤罪をふっかけられる所でした」


 あざけるように美玲は言う。周りに立っている子も似たようなことを次々と口にする。


「そう。それはごめん」


 適当に答え返事も聞かずに帰る。ペンで書かれてるのは消すのが面倒だったため、そのままにして授業を受けた。

 何故かこれを見た先生から何があったのか聞かれることはなかった。

 美玲は実際にやっていないのかもしれない。しかし、指示したのは間違いないだろう。私は美玲がそしてその周りにいる人が可哀想だと思った。誰かと群れないと生きていけない、少し気に入らないことがあれば非道な選択ができる。そんな人間で可哀想だと、そう思った。


 嫌がらせは簡単には終わらなかった。

 ある日のこと、私の下駄箱で誰かが何かをしている。すぐにわかった。おそらく、汚してるんだろう。私が近くまで来たところで、ようやく私の姿に気づいて、走り去っていく。彼女が支音だ。


「はあ、何してるんだろ」


 下駄箱を見ると案の定、ゴミが散乱していた。しかし、手際が悪いからかいつもよりも悲惨ではない。

 教室の机も私の荷物もその日だけは被害が少なかった。

 彼女は相当鈍臭い人間のようだ。そして、美玲たちは日ごとに担当を変えているとわかった。


 卒業も近くなってきた。飽きもせず私への嫌がらせは続いている。美玲がなんの遠慮もなく、私の側にきた。


「優さん。放課後、いえ、深夜に近くの裏山に来てくれません?」

「深夜に?」


 とんでもない提案が飛んできた。聞く価値もないものだと思った。


「そんな夜遅くは無理だね」

「どうしても、大切な話があるんです」


 その言葉は心の底から言っているようだった。だから、油断してしまった。


「深夜はさすがに無理だけど、9時くらいなら」


 美玲は顔を明るくして、にっこりと笑う。


「ありがとう。待ってますね」


 軽く頷く。美玲は今まで見たことがないくらい浮き足立ってグループの輪に戻って行った。


 すっかり暗くなった。寒かったため、服を重ね着して、体を温める。早く終われば良いなと思いながら、遅れないように目的地に向かった。

 具体的な場所を決めてないと思っていたが、心配はいらなかった。


「優さん。こちらです」


 暗がりでよく見えないが、おそらく美玲だ。周りに人はおらず1人で立っている。


「寒いから早く終わらせよう」

「ええ、そうですね。少しだけ歩きましょう」


 そう言って歩き出す方向は山奥に向かっている。


「あんまり、奥に行くと危険だよ」

「大丈夫ですよ」


 ガンガン歩いていく。ついて行かない訳にもいかず、私も歩く。慣れない山道、見えない視界で、息が上がる。


「着きました」


 足元ばかり気をつけていたため、美玲が止まったのに気づかずぶつかりそうになる。顔を上げるとたくさんの人がいた。何人かはスマホを構えていたため、顔が見える。おそらく、美玲グループが集まっている。


「ようやく着いた? 話はなんだったの?」


 この時思った。もしかして、今までの行いに対して謝りたいのかなって。


「話、話ですね」


 背中を向けていた美玲が突然振り返る。大きく手を振りかぶって、その手には銀色に光るものが握られていた。私は咄嗟に身を守ろうと、手で守るようにする。

 しかし、無駄だった。

 胸元を刺される。

 厚着をしていたため致命傷にはならなかったが、その場に倒れ込む。


「うぅぅ」


 倒れかかったところに無数に石が投げ込まれる。


「な、なんで!?」


 私は咄嗟に叫ぶ。


「なんで? そんなの自分が1番わかっているでしょう?」


 嘲笑うように美玲は言う。

 その後も何度も刺され、叩かれ、ついに私の意識は無くなった。

 この行い、絶対に許すことはできない。

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