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――鉄村優の過去――
端的に言おう、私はいじめられていた。理由はわからない。気まぐれだったのか、明確な意図があったのか。いずれにしても、それを許すなんてことはできない。
始まりは、おそらくこんな会話だった。
「優さん」
いかにも高飛車な女が声をかけてきた。彼女の名前は金城美玲。彼女は指に髪を巻きつけながらこちらの返答を待っている。
「どうしたの?」
「今日の授業のことで話があります」
「話?」
今日の授業は1人1人が調べたものを発表するものだった。私の発表におかしなところはなかったか改めて記憶を辿る。
「えぇ、話です。優さんも自覚があるでしょう?」
「特にないと思うけれど……」
「はぁ?」
美玲は額に手を当てて、侮辱するような目でこちらを見る。
「しっかり言ってくれないとわからないよ」
「あーあ、わからないんですか」
私は美玲の態度に嫌気がさしてきて、その場から立ち去ろうとする。その時、美玲の口元が少し歪んだ。
「私のことはあんなにも丁寧に指摘したくせに、自分のこととなるとそんなにも雑な態度を取れるんですね」
そこまで言われてようやく思い出した。美玲の発表内容に少々誤りがあったため指摘したのだ。
「あー、そのこと?」
なんの気なしに答えた。その瞬間、美玲の顔は大きく歪んだ。しかし、それもすぐに戻った。気づいたのはおそらくたまたまだった。
「ええ、そのことです。今なら許してあげますよ」
まるで聖女のごとく、手を差し伸べてきた。その手を見つめて取りはしない。
「許す?」
「ええ、お互いに平穏に終わらせましょう」
「ええっと、何を許してもらうの?」
許してあげると言っていると言うことは、謝罪の言葉が欲しいのだろう。しかし、私は感謝されることはあっても、謝罪をすることはないと思っていた。
「逆に助けてあげたのにその態度はどうなの?」
美玲は足をバンと床に打ち鳴らした。
「助けてあげた? あんなのが? 大衆の前で私に恥をかかせようとしただけでは? それでいい気になったのでは? ただの思い上がりでしょ?」
「間違えたまま、続ける方が恥ずかしいでしょ」
「いいえ、優さん。あなたは私のことを貶めたいと思っていた。そうでは? だって、発表する前にもあなたは私の内容を知る機会がありました。では、なんで本番にみんなの前になるまで、言わなかったのですか?」
「それは、その時まで気づかなかった。ごめん」
事実だった。お互いに作成期間の間に内容を知るタイミングはあった。しかし、そのタイミングでは見つけることができなかった。そう言う意味では謝罪を求められても仕方がないと思い、素直に謝る。
「どこまで! 私を馬鹿にすれば気が済むのですか!?」
美玲は大声をだして、肩で息をしている。対して私は比較的冷静に対応をしている。
「馬鹿になんてしてないよ」
その言葉をはいた時、美玲の目が静かになった。
「あぁ、大丈夫です。覚えておいてください」
そう一方的に言って、その場から立ち去ってしまった。私は訳もわからず、その場に立ち尽くしていた。




